アプガのプロレス化が止まらない!
DDTとの“工場コラボ興行”に突撃!!

 この日の試合会場(ライブ会場)は東京・昭和島の宮地鉄工所だった。「アップアップDDT(仮)~アイドルvsプロレス異種対バン戦Vol.2、工場ライブプロレス~」と銘打たれた大会は、当日まで出場選手も発表されないまま。多くのアイドルファンにとっては、工場でプロレスを行うこと自体が想像もつかなかったことだろう。しかも、そこにアプガがどう絡んでくるのか?

 まずはDDTの鶴見亜門GMと井上マイク・リングアナが登場し、「工場プロレス観戦講習会」なるものを開始。衣類や荷物が汚れたり、身体が水で濡れることも十分ありえる旨がアナウンスされる。ちなみに宮地鉄工所の業務内容は、「鉄材料及びに非鉄金属材料の熱間自由鍛造・金型鍛造工場」(公式HPより)。無機質な工場の景観と、ものものしい注意事項によって、観客の間に緊張感が走る。 第1試合はアプガのライブだ。フォークリフトに乗って颯爽と登場した7人は、7色のヘルメットを被ったまま『チョッパー☆チョッパー』を熱唱。これにはファンものっけから大興奮で、「オイ! オイ!」と大仁田厚ばりのコールを送る。

「私たちアップアップガールズ(仮)が立つ場所は、どんなときでも、どんな場所でも、誰が目の前にいても、すべてライブハウスに変えてみせます!」(関根梓)

「群馬出身、群馬在住、群馬県観光特使の新井愛瞳です。実は今日、群馬に住むおじさんが来ているんですよ。いつもより気合が入っているから、みなさんも大きい声を聞かせてください!」(新井愛瞳)

 ここからは代表曲が続く。『銀河上々物語』『イチバンガールズ』『UPPER ROCK』『バレバレ I LOVE YOU』『ジャンパー!』『全力!Pump UP!!』……ノンストップで6曲を歌い切る7人。マット界きってのアプガファンとして知られるDDT大石真翔選手も、ファンに混じって笑顔でフリコピする。ステージとなった大型トラック荷台はメンバーのダンスで大きく揺れるし、モニターや照明などの環境も決していいとはいえない。だが、そんなこと関係なしに、とにかく今を楽しもうとする7人の姿勢が、観客の心を熱くさせた。 MCでこの日の感想を尋ねられた佐保明梨は、「そりゃ最高ですよ。前を観れば、ファンのみなさん。左を見上げれば(工事現場や工場によくある)“安全第一”の文字。本当に安全が第一ですからね。“破壊第一”に変えたい気持ちもありますが……」と“破壊王”らしい一面を覗かせながらも、実に満足そうだ。 最高の盛り上がりの中、ラストの曲として紹介されたのは、グループのアンセムソング『アッパーカット!』。ところが、実際にスピーカーから流れてきたイントロは『スリル』(布袋寅泰)だった。ここで男色ディーノを先頭に、レスラー数人が登場。ディーノはアプガのファンに対しても、いつもと同様にキスしまくり。工場は断末魔に包まれた。

 ステージ(トラック荷台)をジャックしたディーノは、「おい! 工場の時間はもう終わってますよ~。騒音だ! やめろ!」と理不尽要求。これにはアプガファンの大石も黙っているはずがなく、「てめぇらにこのライブを潰す権利はねぇ。俺はアップアップガールズ(仮)の大ファンだ! このライブを潰したかったら、俺を倒してからにしろ!」と白馬の王子様気取りで徹底抗戦する。

 だが、勇ましいのは口だけだった。あっという間にディーノら数名の悪徳レスラーから大石が袋叩きに遭うと、今度は高木ら親アプガ派のレスラーたちが救出に駆けつける。こうして極度の混乱のまま、ディーノ、アントーニオ本多、諸橋晴也、伊橋剛太組(反アプガ軍)VS高木、大石、平田一喜、DJニラ組(親アプガ軍)の8人タッグマッチが開始されたのである。 ここからはカオスな展開が続く。工場の敷地をフルに使って、縦横無尽にファイトを繰り広げる選手たち。否が応でも、アプガのメンバーも巻き込まれていく。石灰を使った攻撃では、レスラーのみならず、アプガ、観客、マネージャー、カメラマンなども全身真っ白に。高木や本田が自転車(ドラマティックドリーム号)を駆使した攻撃を仕掛ければ、ニラは自販機天井部からのムーンサルトプレスを敢行。やんやの喝采を浴びていた。

 中盤に入り、ついに闘いは敷地外にまで及ぶ。路上で高木が炭酸ガスを佐保に誤爆すると、怒った佐保は高木をタコ殴りに。この日の佐保は、他にもディーノをスコップでメッタ打ちにしたり、諸橋に正拳突きを連打するなど、大車輪の活躍。攻撃に一切の躊躇が感じられないあたり、天性のプロレスラーぶりを発揮していた。 15分経過。アプガが平田に対して「お前、平田だろ!」と追及するも、あっさり「そうです」と切り返されるなど、シュールな展開が続く。その平田だが、アプガをバックダンサーに従えて『TOKYO GO!』でマグナム・ダンスを披露する一幕も。こうなると、もはやプロレスなのかどうかも怪しくなってくる。

「茶番の時間は終わりです。さぁ、ギブアップしなさいよ!」

 相手陣営から集中して攻撃を浴びた大石は、ディーノから降伏を迫られる。これには大石も「ギブ……ギブ……」と心が折れかかるが、最後は気力を振り絞って「ギブ・ミー・『アッパーカット!』」とシャウト。呼応するようにトラック荷台でアプガが歌い出すと、高木はホースで水を撒き散らし、伊橋はパイプイスで乱打される。工場プロレスのハチャメチャぶりは極限まで到達した。

 だが、試合のカギを握ったのはやはりディーノだった。人質として仙石みなみを拉致すると、あろうことか男色ナイトメア(相手の顔面の上でタイツを脱ぎ、尻を擦りつける下ネタ技)を試みる。これには“侍魂”を標榜する仙石も両手で顔を覆う有様。「明日の東スポの見出しが決定しました。“アップアップガールズ(仮)、ケツを舐める!”」というディーノの高笑いが憎々しい。もはや万事休すかと思われたそのとき、新井が「なに、可愛いアイドルに汚ねぇケツをつけようとしてんだよ! 助けて、群馬のおじさーん!」と絶叫した。

 ……えっ、まさか? ……嘘だろ? どういうことだよ?

 観客の悲鳴は、どよめきに一変する。こちらに向かってくる男は、間違いなくミスター・ポーゴ。つまり新井は、あの極悪魔王と親族の関係にあったのか!? となると自叙伝『ある悪役レスラーの懺悔』に書かれていたあの女性とはどういう関係!? 試合はポーゴがビッグファイヤーを伊橋に噴射し、フィニッシュは大石がピン。ご機嫌なポーゴは、「みんな、彼女たちを応援してやってくれよ!」と観客に共闘を呼びかけていた。そして、最後にアプガが熱唱した『Burn the fire!!』に合わせ、再度、ビッグファイヤーをド派手に咲かせたのだった。

 最後に宮地鉄工所の関係者コメントを紹介しよう。

「DDTさんとのコラボは今回で5回目。最初にやったのは5年前で、当時から路上プロレスをやっていたDDTさんが、試合ができる工場を探していたんですよね。そのことを僕はmixiで知って、すぐにうちでやることが決まったんですよ。今回が例年と違うのは、なんといってもアイドルが登場したことでしょうね。ただ、僕自身が川崎純情小町というアイドルグループのファンなので、アイドルファンのマナーがいいことは信じていました。今後も機会があれば、ぜひ続けていきたいですね!」アップアップDDT(仮)~アイドルvsプロレス異種対バン戦Vol.2、工場ライブプロレス~(東京都・昭和島宮地鉄工所)
観衆:200人(超満員札止め)

【8人タッグマッチ 時間無制限1本勝負】
高木三四郎
平田一喜
○大石真翔
DJニラ

(25分37秒・群馬のおじさんことミスター・ポーゴのビックファイヤー→体固め)

男色ディーノ
アントーニオ本多
諸橋晴也
伊橋剛太●



(※DDTプロレスリングを初期から支え続けていた木村浩一郎さんが、28日未明、お亡くなりになりました。謹んでお悔やみ申し上げます。)

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