モーニング娘。’14のために「もがく
人」生田衣梨奈

 それは珍しいことのようで、新垣がもともと参加していたその曲をカッコよくやりたいという気持ちはもちろん、「道重さんの最後のツアーを成功させたい」という理由があったという。

 生田と道重さゆみには通づるものが多い。道重が「昔の自分を見ているみたい」と言ったこともある。

 誤解を恐れずに言えば、道重には、今も歌やダンスがうまいとは言えないけれど、それ以上の表現力や説得力がある。

 ”アイドル”という以上、歌とダンスは必要不可欠。特にハロー!プロジェクトではほぼ年間通してライブが行われているので、余計にそれを重視されるのだろう。

 練習を積めば技術はつくだろうが、常にその先を行く人がいる。それを必死に追いかけているうちに、後輩が自分より前に立っていたりする。じゃあ、自分は何をやれば前に出られるのか。同じように葛藤してきた道重は、生田にとっての最高のお手本なのかもしれない。



次ページは「生田の未来図」生田の言う”未来図”

 生田はダンスも歌も得意ではない。かといって、トークがすごくうまいわけでもない。それでも、生田に目が行ってしまうことがある。なぜか気になってしまう。ものすごく荒削りで雑に見えることもあるけれど、自分を見てほしいという気持ちが人一倍強い彼女の目がそうさせる。その一瞬がとても美しいこともあれば、笑いになることもある。すべての瞬間を「いい!」と思わせるには、経験を積み、研究するしかない。それはきっと生田が“未来図”だと言う、道重もやってきたことだと思う。

 生田は気配りができるし、よく気づく人だが、他人に対してドライで、サバサバしている。だが、譜久村聖との“ぽんぽんコンビ”では、それが少し違うように見える。

 同じ9期メンバーだし、そもそも一緒にいることが多いのだろうが、お嬢様と言われる譜久村と、ややヤンキー感のある生田という正反対なイメージの2人。この2人はお互いに対する、依存みたいなものが強い気がする。

 サバサバしてるように見えて、お互いが内を向いている感じ。ただ、この年頃の女の子にはきっとよくあることで、他のメンバーがあまりそうでないことのほうが、珍しいことなのかもしれない。

 それは9期が1番上になることで変わってくるだろうし、特にこの年長の2人は、そのことにかなりプレッシャーを感じてるような気がする。それが空回りしてるときもあるけれど、背負っていきたいという気持ちは今回のツアーで強く感じる。

 実際、生田はこれまでより他のメンバーとの会話に参加するようになったとか、ツアーのMCの真面目な話しぶりを見ると、徐々に変わってきているのだろう。モーニング娘。’14がもっと前に進むために、この人たちの変化は欠かすことができないはずだ。

「センターになりたい」と臆せず発言し、「ソロパートがある!」と喜んだり……。思っていても、口に出すのを躊躇するようなことを、ハッキリと言ってしまう彼女は強い。でもこれは強くなった、という言い方のほうが正しい。昔はいじられて泣いてしまうこともよくあった。

 道重の卒業を乗り越えて、また強くなったら。もう少し周りのことが見えるようになったら。先のことを考えて前に出られるようになったら。そうやっていろんなことを積み重ねていったら、彼女の言う“世界一のアイドル”に近づくのかもしれない。それが何なのかは分からないけれど、言い続けるのなら突っ走ってほしいし、それを見届けたいなと思う。根拠のない自信を持つ彼女に、期待してる人はかなり多いから、もっともっとモーニング娘。’14を、ハロー!プロジェクトを、そしてアイドル界を引っ掻き回してほしい。東海林その子 メジャーどころを中心に、女子アイドルを追いかけています。女の子が変化する一瞬一瞬を見逃したくないです。

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