「わたし、アイドルですから!」武藤
彩未が拓くソロアイドルの未来

 今回は、傘へのプロジェクションマッピング、カラフルなレーザー、宇宙を表現したかのようなミラーボールを使った照明、そしてカラフルでキラキラした衣装。アーティスト写真やMVでも表現されているような、洗練されていて、かつかわいらしい、彼女の世界感を体感できるライブになっていた。ライブハウスでのライブで、ここまで演出でも楽しませてくれるアイドルはなかなかいないと思う。

 そして今回のバンドとのパフォーマンスも本当に素晴らしかった。今年は6月10日に行われた610の日Special LIVE「A.Y.M. Ballads」では、ピアノ・パーカッション・チェロとともに、7~8月に行われたSUMMER TRIAL LIVE「20262701」ではキーボードとドラム、というそれぞれ違った編成でのライブを見せてくれた。

 前者では優しい雰囲気の中で彼女の歌声を堪能でき、後者ではテンションの高いポップなパフォーマンスが楽しめた。

 今回のライブでは、キーボードとドラムにギターが加わった編成。『A.Y.M』や『宙』というポップな楽曲から、新曲『OWARI WA HAJIMARI』のようなロックナンバー、そして本編最後のギターをバックに披露したバラード曲『明日の風』まで、幅広く彼女の魅力が発揮されたライブになっていた。

 特に、明るい曲が続いたあと、最後の『明日の風』では彼女の歌の幅を改めて感じ、また心ががっしりと掴まれてしまった。彼女は歌がうまいだけでなくて、歌を聴かせる力があるんだと思った。


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 こういった最新の音楽や映像、演出のなかで、武藤彩未はなんとなく今っぽくない。彼女を見ていると、彼女がカバーし、好きだと言い続けている80年代のアイドルが頭をよぎる。決してそれを真似をしているとかではなくて、尊敬や憧れを持った上で活動を続けているという、軸にあるものがそう感じさせるのだろうか。

 80年代と違ってアイドルとファンの距離は近かったりと、違いはあるけれど、武藤彩未が持つ神聖さや、場を支配する力は昔のアイドルに近いような気がする。

 そして、どんなジャンルの楽曲を歌っても彼女らしさがあるのは、そういった80年代アイドルへの想いや彼女の芯にあるものが全くブレないからだと思う。そして何より、彼女の凛とした気品が常に感じられるから。

 可憐Girl’sでも、さくら学院でも、そして今武藤彩未としてソロで活動しているときも、彼女はいつだって品があって、美しい。小さい体でステージに立つ彼女は、見ている側にとって、そしてきっと同じステージに立つ人たちにとっても、とても大きな存在で、武藤彩未についていきたい、と思わされる。あれだけの演奏や演出の中でも、やっぱり武藤彩未がすごかった。

 ライブ中、2月25日にアルバム『I-POP』の発売を発表。アルバムタイトルの”I”について、たくさんある意味を話す中で「わたし、アイドルですから」と武藤彩未は言っていた。そうやって、彼女が”アイドル”にこだわって続けてくれることが、とても嬉しい。

 そして「ソロで一番を目指す」という目標も話していた。グループアイドルが多い中で、ソロアイドルは今、厳しい部分もあるだろうけど、武藤彩未の歌声は必ずたくさんの人に響くだろう。彼女が憧れた松田聖子のように、武藤彩未に憧れてアイドルを目指す女の子もきっといるはず。そのときのためにも、ソロアイドルの未来を明るく照らす存在であってほしい。

 来年はどんな武藤彩未が見られるのか、本当に楽しみだ。いつかライブ以外にも、ミュージカルや教育テレビの歌のお姉さん的立ち位置の彩未ちゃんも見てみたいと、個人的に思っています。

 まずは2015年2月25日のアルバムと、4月29日の19歳誕生日当日のライブを楽しみに待ちたい。東海林その子 メジャーどころを中心に、女子アイドルを追いかけています。女の子が変化する一瞬一瞬を見逃したくないです。

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