進め! ヴァイオリンおけいこ道 第3
8回「伴奏合わせ」

今回のテーマは「伴奏合わせ」です。
伴奏合わせ
子供の頃は発表会が近くなると、習っている先生付き添いのもとで、伴奏合わせの機会を設けていただいたりするもの。先生がいらっしゃればさぁ安心、弾く上での都合や、表現のために共有したいことを、先生からピアノの先生に伝えてもらえます。
ですが、問題はそのあと。わたしは音楽高校に進学して初めて「伴奏合わせ」を自分だけの力で進めていくことになったときに、最初は何をどうしたら良いのかわからなくてとても戸惑いました。
そこで今日は伴奏合わせで押さえたいポイントをまとめてみます。「おけいこらむ」としては、少しお兄さん・お姉さん向けかもしれません。
伴奏者は黒子ではない

「伴奏」というものに対して、「何でもソロに合わせてもらえる」または「ただバックで弾いてくれてればいい」というイメージを抱いてしまうのは、大いなる間違いです。こういった意識で伴奏合わせに臨むと、まずうまくいかないでしょう。
「伴奏」という言葉こそ付きますが、まず伴奏者は一番に共演者であることを念頭に置きましょう。
曲の中で伴奏パートがメインの旋律を持つ瞬間は、確実にあります。また生身の人間が伴奏してくれるからこそハモりも掛け合いも味が出るのであって、伴奏に個性がいらないのならば、すべては「カラオケ」でいいじゃないか、というわけです。
伴奏者というパートナー

では伴奏者とはどのような存在かと言ったら、わたしはパートナーだと思います。バディとも言えるでしょうか、こだまでしょうか。
たとえば、伴奏者に「お母さん」を期待してしまうと、「ねぇなんで合わせてくれないの?」という感情が生まれてくると思います。言わなくてもわかりあえるはず、という思い込みは、一種の甘えと言えます。
これが「親友」だったり「仕事仲間」だったり、あるいは「恋人」や「夫婦」の関係だとしたら、わたしたちは相手にしてほしいことについて説明をするだろうし、希望を伝える努力をするし、また相手も快適に暮らすための道を模索するでしょう。
音楽の場合は、すべて全部言葉を尽くす必要はありません。伝えたいことはまず演奏ではっきり示して、それでもうまく感覚を共有できなかったら言葉を用いると良いと思います。
具体的には…?

抽象的なことを書きましたが、では実際に「合わせてほしいところで待ってもらえない」など、伴奏者に対して要求したいことがある場合は、どのように伝えたらよいでしょうか。
ただ「そこ合わせて」と口で言うのは簡単ですが、それだけでは「自分がイメージする音楽」を相手と共有できていない可能性が高いです。
一音だけほかよりも伸ばす音があって、そこでピアノが拍どおりに弾くと、お互いズレてしまう箇所があるとしましょう。まず伴奏者に伝えたいのは、そこで何を表現するためにその音を伸ばしているのか、ということ。
しかしピアニストからしたら、そこで止まらずに駆け上がりたい音型を持っているかもしれないし、または均等なリズムを刻んでいてもしかしたらソロのルバートに気づいていなかった可能性もあるし、そこが一筋縄に合わなかったことには理由があります。なぜそこでズレるという現象が起きたのか解明しましょう。
そして、お互いが気持ち良く奏でられるパターンを、伴奏者と共に見出します。それは必ずしも自分に100%合わせてもらうばかりではなくて、たとえば当初の自分の歌い方の6割程度の引き伸ばし方で落ち着くかもしれないし、ピアニストが譲歩してくれて伸ばしたいだけ伸ばせるかもしれません。
あくまで大切なのは、お互いに音楽的に奏でられる範囲ですり寄せられるかどうか。これが対話なのだとわたしは思います。
慣れは必要
もちろん、合わせというのは、実践による経験を積んで、慣れていくことでできるようになることがたくさんあります。はじめは誰だって初心者。難しく感じることも出てくるともいますが、場数を踏んで、自分の道を模索して、音楽を見出していくよりほか道はありません。
合わせは自分以外の音楽家から、さまざまな刺激を受けたり、音楽的ヒントをもらえる絶好の機会。無理をしたり我慢をする必要はありません。対話を通して疑問を解決していくことこそが、合わせの意義であり、醍醐味であります。

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