日本武道館2デイズを目前にリリースされるシングル「バタフライエフェクト」は、バースト寸前の秘めた熱を感じさせる攻撃的なナンバー。新たなシドを感じさせるこの楽曲と1年7カ月振りとなるワンマンライヴへの想い、こだわりについて4人に訊いた。
取材:山本弘子
日本武道館に向かっていく攻撃的な曲に
したいと思っていた
日本武道館公演の目前にリリースされるシングル「バタフライエフェクト」は、何かを動かす秘めた力を持っている曲だと思いました。ライヴを意識した曲でもあるのですか?
ゆうや
かなり意識しましたね。きれいな曲というよりもパンチの効いた激しさのある曲にしたいなと。とはいえ、普段の自分が作るタイプの曲とは全然違うので、いつもはメロディーから作るんですけど、今回はインパクトのあるものにしたかったのでイントロから順番に作っていきました。
最後にメロディーを乗せたのですか?
攻撃的だけど、どっしりとした力強さがある曲ですよね。他のメンバーがこの曲を聴いた時の印象というのは?
Shinji
最初に聴いた時はゆうやの曲じゃないと思ったぐらいに意外でしたね。メロディーラインがいつもと違うので、“すげぇ新しい曲作ってきたな”って。
シドとしても新しい曲調だと?
Shinji
そうですね。デモの時点からギターもガツンガツン入っていたし。
明希
俺もShinjiと近いんですけど、ゆうやのいつもの曲とは違うテイストだと思いましたね。でも、ただ激しいだけじゃなくて、ちゃんと聴きどころが散りばめられているので、より明確にロックな方面に向かっていくと、ゆうやの曲ってこうなるんだろうなって。
前作「硝子の瞳」の時には、マオさんに歌詞のイメージを伝えたという話が印象的でしたが、今回は?
ゆうや
作る段階から今回はコンセプトが決まっていたので伝えなくても曲から吸い上げてもらったら良くなるなと。
マオ
俺が制作に入る前の段階で、5月のシングルは重めのミディアムテンポで、日本武道館に向かっていくイメージの攻撃的な曲にしたいっていうリクエストを3人にしていたんですよ。そこから生まれたのが「バタフライエフェクト」で。
テーマありきだったのですね。
マオ
そうですね。なので、“ゴリッとしたロックのイメージなんだろうな”とか“ライヴでフックになるような曲なのかな”と想像していたので、いつもは曲を聴いてから作詞に入るんですけど、ゆうやから曲が上がってきた時にはイメージと重なっていたので書く作業はわりと早かったですね。
タイトルの“バタフライエフェクト”は、ある場所における蝶の羽ばたきがはるか遠くの場所の天気を左右するという考え方で、些細な現象が物事を大きく変化させることにつながるという意味を持っている言葉ですよね。
マオ
タイトル帳というのを持っていて、思い付いたフレーズを書いているんですけど、その中にあった言葉でいつか使いたいなと思っていたんです。“バタフライエフェクト”という言葉は歌詞の中には出てこないんですが、小さな怒りがどんどん膨らんでいって最後には…という今回のストーリーに合うと思って付けました。
最後の《深紅の羽 広げ おれが変えてみせよう》という部分は蝶を想像させますし、使われている言葉も“イツカミテロ”とか“奪えよ”とかいつも以上に強めですよね。
マオ
そうですね。ウチは“怒り”をテーマにした曲はそんなに多くないので、今回は珍しい歌詞になったと思っています。今まで使わなかった言葉を選んでいたりするし、“シドってこういう曲もやるんだ”って世の中的にも作詞の面でも思ってくれたら嬉しいですね。ちょっとドキッとさせられたらいいなって。
なるほど。“シドと言えば、切なめな恋愛ソング”というイメージを持っている人も多いかもしれないですね。
マオ
ええ。あと、「バタフライエフェクト」に関しては、日本武道館が決まっていたというのも大きいですね。日本武道館用の曲ぐらいのイメージだったので。
もう少し歌詞について突っ込んで質問したいのですが、さっき小さな怒りが膨らんでいってという話をしてくれましたよね。《何もかもを全て おれが捻じ曲げよう》というフレーズが非常に気になるのですが、何かを変えたいという想いがあって書いた歌詞なのでしょうか? そうだとしたら、それは何に対してですか?
マオ
何というわけでもないんですけど、小さな頃から“何か違うな”と思ったら曲げたいと思う性格だったんです。例えばクラスの中の大勢がイエスって言ってもノーって言ったり、自己主張をするほうだったので、ここに来て改めてそういう面が出てきたのかなって。歌詞に関しては最近は若干、大人だったと思うんですけど(笑)、ちょっとやんちゃな感じに戻ったのかなと思いますね。
キッズ魂が戻っているというか?
マオ
うん。それは曲に呼ばれたものですけどね。そういう勢いを出したかったんです。
では、各自の楽器、レコーディングへのこだわりについても聞かせてください。ベースは太い音でグルーブしていて隙間を縫ったフレーズがカッコ良かったです。
明希
フレーズはゆうやのアイデアをもとに広げていきましたね。“この部分はこうしたほうがいいんじゃないか”っていうやりとりをしながら。サウンドに関しては最近自分が好んでいる感じをパッケージしました。こういう攻撃的な曲だと特にはまりがいいかなと思って、パッと音を作ってそのまま録っちゃいました。
Shinji
みんなで話し合って最初は重厚感を出したいということになったので7弦ギターを試してみたんです。そしたら重たくなりすぎたから、じゃあ、レギュラーの6弦でエッジの効いたズンズンした音でいこうと。ハードなんだけど、メロディアスな曲なので6弦のほうがしっくりきたんですよね。
ギターソロも歌詞とぴったり合っているというか、突き抜けた気持ち良さが感じられます。
Shinji
ゆうやくんのデモに入っていたギターソロもあんな感じで、自分は後半を変えたぐらいなんですよ。ゆうやくんのおかげです(笑)。
ドラムは大地の力強さが感じられました。
ゆうや
俺の中では力強さもありつつ、打ち込みのドラムに近い感じで叩いたんですよ。みんなをノせるリズムに徹するほうが、この曲はダサくならないんじゃないかなと。思い付くフレーズを入れていくとキン肉マンみたいな感じになっていきそうだったので(笑)、シンプルに音の厚さや太さで止まらないビートのまま押せるんじゃないかと。
では、歌へのこだわりは?
マオ
この手の曲は力任せに歌いがちだと思うんです。実際、テーマも“怒り”なんですけど、秘めた怒りなのでかなり抑え気味に歌っていますね。最後の最後でちょっと感情的な部分を出してみました。
確かにこういう曲調で、こういう歌詞だとシャウト気味に歌うことが多いと思うんですよ。あえてそうしなかったのは、それがシドらしいと思ったからですか?
マオ
シドらしいというより、この曲の世界観がそうかなって。歌録りって早かったっけ?
ゆうや
早かった、早かった。Aメロを1回歌い直したぐらいでもうバッチリでした。おっしゃる通り、この曲はシャウトになりがちなところをあえてファルセットを使って歌っていたりするんですけど、それがマオくんの言う冷静な怒りにつながっているのかなって。