【n-buna】“夏の終わりの一日”とし
て時間経過を意識
「透明エレジー」「ウミユリ海底譚」が100万再生を突破するなど、ボカロPとしてニコニコ動画を中心に活躍する次世代シーンの開拓者n-buna(ナブナ)が、1stアルバム『花と水飴、最終電車』をリリース!
取材:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
これまでDTM中心だったと思いますが、しっかりやるレコーディングは今回が初めて?
そうですね。今回が初めてです。ミックスも3曲をプロのエンジニアさんにやっていただき、感慨深かったです。メジャーへの憧れがあったのでとても嬉しいです。
どんなアーティストに憧れを持ってました?
Mr.Bigとか、amazarashiとか。あと、ラリー・カールトンがすごく好きですね。
それは意外な。ギターが音楽の入口としては大きい?
祖父がアコースティックギターを弾いていたり、兄ちゃんがエレキギターを中学・高校くらいで買っていた影響が大きいです。それでギターインスト系にはまって、なぜかフュージョンにいって、カールトンを好きになるという。
そのうち自分でも曲を作りたくなったと。
中学の終わりに、母親にお下がりのノートパソコンをもらったのが始まりです。ネットをしているうちにDTMという単語を知って、パソコンで曲を作れることを知りました。それまでは、買ったり借りてきたCDを姉ちゃんが持っていたパソコン経由で、iPodに好きな曲を入れてもらってました。
なるほど。n-bunaさんは“夏”をテーマにした楽曲が多いですが、“夏”への憧れは、自身の体験からの影響ですか?
田舎の夏の情景がすごく好きなんです。晴れた日の縁側だったり、山の中にある神社…そういう“夏”という言葉から連想される、自然とのコンビネーションですね。
そして、今回“夏の終わりの一日”というコンセプトが生まれたと。
“夏の終わりの一日”として、時間経過を意識したアルバムになっています。朝がきて、昼がきて、夕方がきて、夜には祭りがあって、花火が上がって、ずっと空を見ていたら夜明けがきて、また一日が始まるっていう。曲の中でいろんな登場人物が出てくるんですが、曲同士でつながりを意識したアルバムになっています。例えば、「始発とカフカ」で毒虫になった男が手紙を書いているんですけど、「拝啓、夏に溺れる」に関連していたり、「夜祭前に」では歌詞カードを見ていただくと分かるのですが、そこでは拾った手紙の内容の詩を挟んでいたりします。そこから「着火、カウントダウン」で手紙を拾った人の話が出てきて、最後に手紙の締めの「敬具」があるという。手紙に関する一連の流れを描いています。物語のつながりを楽しんでもらえたら嬉しいですね。
こだわりな情景描写ですね。小説もお好きなのですか?
道尾秀介さんの小説がすごく好きで、夏について書かれていたり、影のある雰囲気からの影響が大きいです。
今回、アルバムには15曲と盛りだくさんの楽曲が収録されていますが、ニコニコ動画で先行して発表されていた楽曲もある中、本作においてキーとなる曲はどの辺ですか?
アルバムの全てが物語の世界観とリンクしているので、言ってみれば全部大事ですね。…あえて自分が特別な思い入れを込めたと言えば、「無人駅」と「昼青」と「ずっと空を見ていた」の3曲です。「無人駅」が絵を描く人の話なんですけど、それと同じ人物が「ずっと空を見ていた」に登場します。このやりとりが、アルバムの中でキーになってきますね。
大事なポイントですね。ちなみに、1曲目「もうじき夏が終わるから」のイントロというか、物語への導入がドラマチックで素晴らしいと思いました。
最初に作った時、とてもエンディング感のある曲だなと思ったんです。でも、僕はひねくれているので(苦笑)、そのままアルバムの最後に持ってくるのではなく、最初に持ってきて夏の終わる感じをまず表そうと考えました。
いきなり、スッと世界観に入り込むことができました。
ただ作品を出すだけじゃ、印象に残れないと思っているんです。ひと捻りふた捻りした工夫が、いろんな作品を楽しんでいる若いリスナーの子たちには刺さるんだと思うんですよね。
n-bunaさんの作品にはロックをとても感じています。邦楽ロックだと、どの辺がお好きなんですか?
クリープハイプがすごい好きです。Mrs. GREEN APPLEも勢いありますよね。People In The Boxや、解散しちゃいましたけどthe cabsというバンドも好きでした。米津玄師さんも大好きで。『YANKEE』というアルバムの曲たちは、ハチさん時代の雰囲気をさらに濃く煮詰めて表現されていて、持っていかれました。今でもよく聴いていますね。
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