【UNISON SQUARE GARDEN】誰かの目が
覚めたり、夜が明けたり、何かのきっ
かけになればいい
赤坂BLITZのワンマンを成功させ、2009年、年末のクアトロワンマンでは圧倒的な攻めのライヴを見せたUNISON SQUARE GARDENが2ndアルバムを発表。常に成長し、研ぎ澄まされていく彼らの音楽観を訊いた!
取材:高木智史
今作は1stアルバムと比べてユニゾンのモチベーションというか、音楽に対するスタンス、精神的な部分にすごく変化があるような気がしました。
田淵
赤坂BLITZのワンマンをやった時に、お客さんが約1500人くらい集まってくれて、僕らの音楽に反応してくれる人がそれだけいるんだなって思って。そこから今回はその反応してくれた人に、“バンドはこういうことを考えてる”という何らかの意思が見えるアルバムにしたかった。1stの時は“こういうバンドの存在があるんですけど、どうですか?”っていうとこがあって、そこよりもう少し先の、“こういうことを考えてる、こういうバンドがいるんですけど、どうですか?”っていう少し毛が生えた感じかな。音楽としてアウトプットしたいことが、ベクトルとしてものすごい一方向にそろったアルバムだなと思っています。
なるほど。そして、シングルとしてリリースした「cody beats」が4曲目に入っていますがアルバムに入るとよりガツンとくる曲ですね。
田淵
何でシングルになったかというのは、一番ユニゾンが主軸としてやってきたこと…アップテンポでキャッチーでっていう。あとは、限りなく自分の考えてることが翻訳された、余計なものを削いだ結果の歌詞というか。自分の中で完結するというところからもう一歩外に出たような書き方をしたんです。だから、アルバムの中でも特別な曲になったなという感じはあります。
ヴォーカルに関して、この曲は特に前面に出ていて、インパクトがありますよね。
斎藤
この曲に関しては、とにかく自由にやりたいなと思って。なんか堅苦しいのがつまらないなと思っていたんです。せっかくユニゾンっていう素晴らしいバンドをやっていて、素晴らしい環境にいるんだから、あとは僕ら次第だよって時に堅苦しいのはつまらない。だから、思うがままにっていうのと、マイクから逃げないっていうこと…ごまかせるんですよ、歌って。言葉の切れ目だったり、弱く歌うところだったり。でも、ごまかさないでグッと踏み込んで歌うっていうのはやっていこうと思ってて。人から嫌われたくないとか、弱いところを見せたくないとか、そんなことを言ってる場合じゃないなと今思っているんです。そこを出してこそ次が始まるんじゃないかと。
ドラムに関しては今どんなスタンスがありますか?
鈴木
ドラムに関してはカッコ良いことを100言うより、良い演奏を1するだけですね。それが最近すごく研ぎ澄まされているような気がします。音がカッコ良ければ、それだけで思っていることは証明できるというか。そのカッコ良いっていうのも、俺の中ではいかに感情に振れ幅があるかっていう。音楽は全部感情だと思ってて。楽しい時は振りきって、悲しい時も振りきって悲しくていい。自分自身もそういう人間でいたいし、ドラムは生楽器だからそれが一番表現できる楽器だと思う。
アルバムの話に戻りますが「ライドオンタイム」はすごくユニゾンらしい曲で、09年2月のリキッドルームワンマンで初めて聴いてからずっと気になっていました。
田淵
この曲は僕のある種のメッセージソングでもあって。言いたいことを言ってやろうぜみたいな。馬鹿には馬鹿って言ってやりたいし、頭が悪い奴にはそう言ってやりたいし。でも、それをネガティブではなく、圧倒的なポジティブさに持ってくることができたんで、この曲は気に入ってます。歌詞にすることは最後はポジティブに持って行かないと僕は気が済まないんです。やっぱり未来を歌いたいなってすごく思う。自分が当たり前だと思っていることが人に話してみると案外そうでもなかったことがあったんですけど、そこで引っ込むのが嫌で。世界は変わりませんよって言われても、自分は変わるって思わなければ居心地が悪いなというか。それがこの「ライドオンタイム」にはつながってると思う。
田淵くんってインタビューやライヴでよく“世界は変わる”っていうことを話していますが、その世界は具体的に言うと?
田淵
なんか、あとひとつスイッチが入れば簡単に世界が変わるような気がしていて。そのスイッチはきっかけみたいなもので、例えばオリンピックで浅田真央がトリプルアクセルを決めるっていうことかもしれないし、村上春樹が『1Q84』の続編を出すだったり。そんなきっかけひとつで世の中は変わるというか。表現者は何かをすることで、それで世の中が変わるって思ってないといけないと思うんです。世界が変わるっていうのは決して大きなことではなくて、誰かのきっかけになればいい。具体的にリスナーに対して言うならば、自分で頑張れっていうことを言いたいな。そのきっかけがユニゾンだったらすごくうれしいという感じですね。誰かの目が覚めたり、夜が明けたり、何かのきっかけになればいいなと思ってやってます。
ユニゾンの曲を聴いてバンドを始めたり、自分の中の世界が変わるということですね。
田淵
そうですね。だから、現在進行の世の中を歌っても意味がないなと思っているんです。それが自分にとっては可能性をずっと探しながら、満たされない感じでやり続けることが答え探しになるんだろうなって思ってます。
だからこそ、今回のアルバムでは、より意思表示を強くする必要があったんですね。
田淵
そうですね。“未来を見たい。未来を歌ってます”っていうことを言いたいですね。
斎藤
それは“夢を与えたい”って言葉にも変えられると思うし。僕は音楽に得体の知れないパワーみたいなものを感じていて。それを何とかかんとか表現して、人に届いたら自分はすごくうれしいし、楽しい。だから、音楽をやっているんですよね。
鈴木
音楽とか漫画とか本でも、自分が好きなものはそうなんですけど、単純で声を大にしていうのが恥ずかしいくらいのこと…友情とか愛情とかそういうことを描いている作品が好きで。ただ、現実は辛いっていうことをちゃんと伝えた上で、だからこそそういう当たり前のことが大事だって声を大にして叫んでるアーティストが好きなんです。そういう未来を歌ってたり。僕らもそんな未来を歌っていくバンドだと思ってます。