【THE SAX NIHGT】
取材:田中 大
高排気量、重低音のR&Rに興奮!
バリトン・サックスが4本もあるバンドがメジャーデビューするのは、おそらく世界初でしょう。
甲田
無茶ですよね(笑)。でも、“何で今までバリトン・サックスが4本あるバンドがいなかったんだ?”っていうのもある。サウンドに無理があるから今までいなかったんだろうけど、ウチのメンバーはずっとやってきた中で、自分の役割がちゃんと見えてきているんですよ。バンド力が増してきてます。
変な表現ですけど、アメ車っぽいバンドですよね。排気量が異様に多いけど、何だかそこがイカす感じというか。
甲田
そういうムダが色気なんですよ(笑)。アメ車も“扉がこんなに重い必要がないじゃん”とかあるから。俺らもこの編成によって、独特のサウンドになってます。何かキチンと決めてから走るんじゃなくて、走りながら決めるようなところが楽しいかなと思ってます。
飯島
ウチのバンドは何につけ後付けだから(笑)。
今回のアルバムって全体的にロマンチックなムードがありますよね。ラブソングが何曲かありますし、歌モノが多いのも特徴だと感じたんですが。
飯島
オルガンの伝太が歌ってるんですけど、ヤツが“歌わせろ!”と(笑)。それで俺らも、“じゃあ、歌えばいいじゃん”ってなったんですけど。
甲田
つまり、狙いとか戦略とかとはまったく無縁なところで、歌モノが増えたんです。
ラブソングが良いですよね。「BUZZ TRIP A GO GO」とか「星屑のハイウェイ」とか。
甲田
「BUZZ TRIP A GO GO」は飯島くんが作詞で伝太が作曲。飯島くんの詞が僕も大好きで。説明がましくないのに、ロマンチックなポイントがあるのが良いんですよ。
飯島
最近、こういう詞先の曲の作り方も面白いなと思うようになってます。詞を渡して“曲作っといて”っていうのは、楽だなあと(笑)。
甲田
良い詞が最近もどんどん出てきてますよ(笑)。
「さらば、オーシャン」とか「さよなら、WASTING TIME」も、甘酸っぱいメロディーの歌モノですね。
飯島
「さよなら、WASTING TIME」みたいなタイプの曲は、今までになかった感じでしょうね。
甲田
夏休みのど真ん中にリリースされますし、こういう青春の甘酸っぱさみたいなところを聴いてもらえると良いんじゃないでしょうか。海に行きたくて堪らなくなるアルバムだと思いますよ。
アクセルを踏みたくなるアルバムでもありますよ。
甲田
みなさん、スピード違反に気を付けてください(笑)。
(笑)。今回のアルバムって前作の続編の物語に基づいて作られているのも面白いです。前作って2138年にサックスナイトがタイムスリップして、少年をいろんなところに連れて行って、ロックンロールの素晴らしさを体験させる物語を表現していましたけど、今回のアルバムはその少年が大人になった2162年に、2007年に向かってタイムスリップするじゃないですか。
甲田
コンセプト的なイメージはずっと持ってまして。前作と関連付けた何かが欲しいと思ってたんです。今回のアルバムもいろんな謎を残して終わるんですけど、物語の続きは、アルバムの回を追う毎に続けていくつもりです。
やっぱり、いろんな新鮮さがあるバンドですよね。
甲田
“サックスナイト”っていうサウンドが確立されつつあるのは、自分たちでもすごく感じてます。
まず間違いなく言えるのは、低音の厚みがあるこの感じは、本当に独特ということです。
甲田
バリトン・サックスに対してオクターヴ上のテナー・サックス重ねると、低音がより際立つんですよね。やっぱり低音ならではのカッコ良さみたいなものってありますから。バスドラとも違う、音階のあるホーンの低音のカッコ良さは、ずっと大切にしていきたいです。
こういう音域と編成でロックンロールを鳴らすのって、サックスナイトの発明と言っても良いかも。
甲田
発明です(笑)。
飯島
発明ですよ。ヤバイですね(笑)。
甲田
サックスナイトが主体でやってる8ビートって、実はホーンを乗せにくい。そこを強引にねじ込むのは、俺らの中でも確信を見出している部分なんです。そこは確かに新しい部分だと思います。
飯島
8ビートのロックンロールは、サックスナイト結成の時点から、僕と伸太郎さんが描いていたイメージなんですけど、その理想が良い形になってきてます。
甲田
ロックの中の新しいジャンルとして、サックスナイトを聴いてもらえたらうれしいです。さっきも話に出たムダの部分って、厳密に言えばいろいろあるんでしょうけど、そういうのが気持ち良いはずだから。
サックスナイトはアメ車スピリッツのバンドですね。
甲田
ほんとそう(笑)。みなさんにも、このムダをムダのあるまんま聴いていただきたい。遊びってムダではあるけど、遊びができるのは人間の特権。俺らは10人いるから10人それぞれの遊び方がある。それを一切否定せずにひとつにまとめたのが、サックスナイトなんだと思います。