【江藤天音】
取材:土内 昇一
永遠と終焉がテーマになってる
天音さんが歌い始めたきっかけというのは?
4歳ぐらいの頃から歌ってましたね。しかも、童謡じゃなくて、演歌を(笑)。歌が好きだったんで、ずっと歌手になりたいと思ってました。でも、家系が医者だったもので、親に言っても聞く耳を持ってくれないだろうから、ずっと胸の奥にしまってたんですよ。で、一生懸命に勉強して医者になったんですけど、医学部に在学中ひょんなことから営業用のバンドのヴォーカルをやることになったんですね。結婚式やホテルのショーで歌ったりしたんですけど、それがものすごく楽しかったんですよ。それで、なんとかしてプロの歌手になれないものかと思って、上京して東京の病院に勤めながら歌手を目指そうと思ったんです。でも、何をすればよいか分からなかったので、とりあえずストリートライヴをやったんですね。やっぱり、最初は全然立ち止まってくれる人はいなかったんですけど、どんどん立ち止まってくれるようになって、そうなると音楽関係者の耳にも止まるようになり、そこで今のマネージャーに出会ったんです。
では、どんな歌を歌っていきたいと思ってますか?
私は人を愛する気持ちだったり、美しい景色とかが永遠に続いてほしいと思っている人間なんですけど、その一方で、医療の現場で常に生と死の狭間にいるので、人の終わりというものを嫌っていうほど体験しているんですね。だから、どんなものにも終わりがあるっていうのは、ひとつの真実として理解しているので、今のこの状況が永遠に続いてほしいけれど、物事にはやっぱり終わりがあるっていう葛藤が歌詞に表れている…永遠に続いてほしいのだけれど、終わりがあるから、悲しくて叫んでいるっていう感じなんですよね。だから、永遠と終焉がテーマになってますね。
そういうものが、この1stミニアルバムに詰まっていると。
そうですね。例えば、1曲目の『仁来神愛 ~ニライカナイ~』は…“ニライカナイ”というのは沖縄や奄美地方に伝わる海の彼方の極楽浄土のことなんですけど、実はムー大陸のことを表しているんじゃないかっていう説もあるんですね。ムー大陸ってはるか昔に栄華を極めたけれど、海の底に沈んでしまった国じゃないですか。だから、何度も波にさらわれて崩れていく砂の城だったり、海底に沈む宮殿とかを思い浮かべながら書いた曲なんですよ。永遠に続かないものを惜しむっていうか。
楽曲的には『みんなのうた』っぽいというか、どこか民族的で、いわゆるJ-POPとは一線を画してますよね。
なぜか、そうなってしまうんです。自然にまわるこぶしだったり、出るニュアンスに、どうも沖縄の血が濃く引き継がれているようで、南国の香りが消せないんですよね。だから、歌い手が違えば普通のポップスに聴こえるかもしれない(笑)
あと、夢が国連親善大使になることだと?
そうなんですよ! “私は何のために生きてるんだろう?”とよく思うことがあって…私は医者をやりながら、アーティストとしての活動もしてるんですけど、それを通して自分は何ができるんだろうって考えると、自分の世界を伝えるってことも大切なんですけど、医者という立場も生かして、地球上にはワクチンが足りなくて死んでいく子供たちが大勢いたり、みんなが知らない医療の知識について知らしめていく…それは私にとっては素晴らしい使命なんじゃないかなって。二足のわらじを履くことによって、そういう活動ができればいいなって思ってるんですよ。だから、観客に対してだけじゃなくて、世界に向けてマイクを持つことが私の最終目標であり、夢なんです。
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