【Caravan】
取材:高木智史
僕らはもともと空を飛ぶためのチカラを
持っている
Caravanの3枚目のアルバム『Yellow Morning』がリリースされる。
彼の音楽を聴く度に思うことは“nature”。その単語には“自然”や“本質”、“生命力”などの意味があるが、そのいずれもが当てはまるように思う。木や水のようになくてはならない、なくしてはならない尊さを感じる、音と言葉。派手な飾り気などを取っ払った、音と言葉。聴き込む度に自分の一部になるような、また、作り手の経験、息づかいが伝わってくるような、音と言葉。
果たして、そこまで必要かと思うほど高層ビルが立ち並び、政界では相次ぐトップの交代劇に政治は頓挫し、混沌とする社会…。そんな世の中だからこそ、彼の“nature”な音楽が輝き、意味を持つのではないだろうか…。
…と、かなり堅っ苦しく、下手にカッコ付けて書いてきたのだが、今作はとにかく素晴らしい一枚だ!
まずは1曲目の「Well-Come」はインストで、アコギとエレクトロの音色が心地良く感じること請け合い。聴き馴染んだ音のようで、そうではない新鮮な感覚を覚え、彼のサウンドクリエイターとしての力を1曲目にして十分に感じることができる。
そして、次なる「Lonesome Soul Survivor」からだんだんと世界が広がっていく。この曲を聴いて思ったことは歌詞を感じてほしいということ。一見、ネガティブに捉えてしまいそうだが、まるでCaravan自身の生き様を描いているようでもあり、孤独な生存者が光を見出していくように物語が見え、強い力を感じた。“君はひとりじゃないよ”という歌よりもよっぽど、僕は彼の描いたこの孤独の強さに勇気を与えられた気がする。
“Train days”という旅を人生に例え歌った「Train Song」。戯けたピアノのサウンドに乗せ、社会に鬱屈しながらも、何かを誰かを求めてしまう人の愛らしさ、人生の素晴らしさを歌った「Strange Garden」。そして、ラスト「Song For You」ではリスナーへ向けて率直な歌を歌い、“サヨナラまた逢う日まで”と締めくくっている。
上目線で申し訳ないのだが、なんだかCaravan自身にも愛らしさを覚え、興味が沸いてくる。こんなに人間味を感じる作品は聴いたことがない。
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