振付家で観るバレエの楽しみ。身体の
動きで音楽を視覚化したバランシンの
作品をBSプレミアムで放送

ジョージ・バランシン(1904~1983)は、バレエ史に残る振付家のひとり。バレエを「目に見える音楽」にまで突き詰め、傑作を次々と誕生させた20世紀のレジェンドだ。そんなバランシンの振り付け作品が、6月18日(日)深夜24時(19日・月曜午前0時)からのNHK・BSプレミアム「プレミアムシアター」で放送される。
バランシンは、ロシアのサンクトペテルブルグ生まれ。バレエ学校で学び、十代の終わり頃からマリインスキー劇場で踊った。やがてディアギレフのバレエリュスに参加し、振付家として注目を集める。その後、アメリカに本格的なバレエ団創設を望む支援者の熱心な依頼で渡米して、1934年にアメリカン・バレエ学校を設立。ダンサーを育成して、1948年に卒業生らからなるニューヨーク・シティ・バレエ団(NYCB)を発足させた。ストーリーをバレエで語るような演劇的な手法ではなく、ダンサーの身体の動きを用いて音楽を視覚化することで、振付家としての才能を大きく開花させていく。
 終生よきパートナーだったストラヴィンスキー(1882~1971)との共作をはじめ、チャイコフスキー、メンデルスゾーン、ラヴェル、フォーレ、ビゼー、バッハ、モーツァルトらの名曲を幅広くすくい上げてバレエで表現し続け、彼の振り付けた作品はプロットレス・バレエと呼ばれるまでに。しかし、作品をじっくり観ていくと、それだけではない側面も見えてくる。
 今回、前半にオンエアされる『夏の夜の夢』は、演劇やオペラでもおなじみシェイクスピアの名作で、1962年にNYCBが初演。人気演目のひとつだが、パリ・オペラ座バレエ団のレパートリーには半世紀余り入っておらず、今年3月にようやく公演された。
 シェークスピア作品にしては珍しく妖精が登場し、惚れ薬を使ったいたずらが、人間界と妖精界の悩める者たちを巻き込んだ大騒動に…という、老若男女を問わず楽しめる喜劇。エレオノーラ・アバニャート、ユーゴ・マルシャンらエトワールが妖精で登場して、メンデルスゾーンの音楽とともにファンタスティックな世界が展開する。クリスチャン・ラクロワの幻想的な舞台美術や衣装も一役買っている。
 『ジュエルズ』や『シンフォニー・イン・C』のような、バランシンの代名詞的な抽象的バレエではないが、彼の少年時代の愛読書だった作品から発展したアーティスティックな美学やエンタテインメント性を感じ取れるのではなかろうか。
 一方、後半のNYCBの『バランシン・ガラ』では、彼の革新者としての作品が並ぶ。さまざまな音と化したダンサーたちが、身体の動きで作曲するが如く、19~20世紀前半の個性的な作曲家、グノー(1818~93)、ラヴェル(1875~1937)、ビゼー(1838~75)の音楽を体現した舞台は、いずれも見どころたっぷり。
 中でも、ビゼーの交響曲第1番による『シンフォニー・イン・C』は、曲調の異なる4楽章編成で、バリエーション豊かなバレエが展開する。1947年にパリ・オペラ座バレエで初演されたときは『水晶宮』のタイトルで、各楽章にルビーや真珠など宝石の名前が付けられており、67年の『ジュエルズ』を予見するような作品だったが、NYCBで『シンフォニー・イン・C』として生まれ変わった。
「シンフォニー・イン・C」(c) MICHEL LIDVAC 
 宝石色の衣装で踊る『ジュエルズ』と異なり、女性は白、男性は黒の衣装で踊られる。オペラ『カルメン』のイメージがつきまとうビゼーの音楽が、モノトーンの世界で表現されるので、ギャップを感じる人もいるかもしれないが、百聞は一見にしかず。きっと、イマジネーションをかきたてられることだろう。ソリストたちのパ・ド・ドゥに導かれ、第4楽章の終盤で群舞との壮麗なフィナーレを迎える頃には、バランシン・ワールドにどっぷり心地よく浸りきっているはずだ。
放送情報

「プレミアムシアター」
■公式サイト:http://www4.nhk.or.jp/premium/
■放送:NHK BSプレミアム
■放送日時:6月19日(月)【6月18日(日)深夜24時】午前0時00分~4時00分
■放送内容
◇パリ・オペラ座バレエ『夏の夜の夢』【5.1サラウンド】
◇ニューヨーク・シティ・バレエ in パリ『バランシン・ガラ 』【5.1サラウンド】

◇本日の番組紹介 ナレーション: 水落幸子(みずおち ゆきこ)0:00:00~0:02:30

◇パリ・オペラ座バレエ「夏の夜の夢」0:02:30~1:50:00
<演 目>バレエ「夏の夜の夢」(全2幕)
<振 付>ジョージ・バランシン
<音 楽>フェリックス・メンデルスゾーン
<原 作>シェークスピア「夏の夜の夢」
<出 演>
ティターニア(妖精の女王):エレオノーラ・アバニャート
オベロン(妖精の王):ユーゴ・マルシャン
妖精パック:エマニュエル・ティボー
ハーミア:レティシア・プジョル
ライサンダー:アレッシオ・カルボーネ
ヘレナ:ファニー・ゴース
ディミトリアス:オードリック・ベザール
ヒッポリータ:アリス・ルナヴァン
シーシアス:フロリアン・マニュネ
ボトム:フランチェスコ・ヴァンタッジオ
ティターニアの騎士:ステファン・ビュリョン
パピヨン:ミュリエル・ズスペルギー
ディヴェルティスマン:パク・セウン、カール・パケット
パリ・オペラ座バレエ団 パリ・オペラ座バレエ学校
<合 唱>パリ・オペラ座合唱団 <合唱指揮>ホセ・ルイス・バッソ
<管弦楽>パリ・オペラ座管弦楽団 <指 揮>サイモン・ヒューイット
<舞台美術・衣装>クリスティアン・ラクロワ <照 明>ジェニファー・ティプトン
収録:2017年3月18・23日 パリ・オペラ座 バスチーユ(フランス)

◇ニューヨーク・シティ・バレエ in パリ「バランシン・ガラ」1:51:00~3:33:30
<演 目>
「ワルプルギスの夜」
音楽:バレエ音楽「ファウスト」 グノー 作曲
衣装: カリンスカ
照明: マーク・スタンリー
出演 :サラ・マーンズ、エイドリアン・ダンチグ・ワーリング、ローレン・ラヴェットほか
「ソナチネ」
音楽:「ソナチネ」 ラヴェル 作曲
照明: マーク・スタンリー
出演 :ミーガン・フェアチャイルド、ホアキン・デ・ルース
ピアノ:エレーン・シェルトン
「ラ・ヴァルス」
音楽:「高貴で感傷的なワルツ」、「ラ・ヴァルス」 ラヴェル 作曲
舞台美術: ジーン・ローゼンタール
衣装:カリンスカ
照明:マーク・スタンリー
出演:スターリング・ヒルティン、ジャレッド・アングル、アマール・ラマサールほか
「シンフォニー・イン・C」
音楽:交響曲 第1番 ハ長調 ビゼー 作曲
衣装:マーク・ハッペル
照明:マーク・スタンリー
出演:タイラー・ペック、アンドリュー・ヴィエット(第1楽章)
テレサ・ライクレン、タイラー・アングル(第2楽章)
アルストン・マクギル、アンソニー・ハクスリー(第3楽章)
ブリタニー・ポラック、テイラー・スタンリー(第4楽章)
ニューヨーク・シティ・バレエ団
<管弦楽>プロメテウス・オーケストラ
<指 揮>ダニエル・キャップス
収録:2016年7月12・16日 シャトレ座(パリ)
◇クラシック 名曲への道
歴史の光と影 ニュルンベルク3:35:30~4:00:00

アーティスト

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