From Italy「真夏の夜にひたすらダン
ス! 地元の人に愛される野外演奏会
レポート」

こんにちは。ヴァイオリニストの卑弥呼こと原田真帆です。海外の演奏会をレポートしていく連載「World Concert Tour」、第3弾でもご紹介したイタリアの音楽祭から、今度は野外演奏会の様子をお届けします。

夜空の下でひたすらダンス!
第3弾と同じく、今回の演奏会も “ポルトグルアーロ国際音楽祭” の一環。この日の公演は、イタリアの弦楽合奏団と民族音楽のグループのコラボレーション、夏の夜がより楽しくなるような軽妙な舞曲ばかり集めたプログラムを、音楽祭の監督自らのタクトで紡ぎます。
わたしは野外コンサートに行くこと自体が初めてだったので、会場についてびっくり(そもそも会場を勘違いしていて着いてから野外だと知った)。席はすでにかなり埋まっていて、茂みの向こうでは飲み物や食べ物を求める列が! プログラムに合わせてプレッツェルなどドイツのお菓子が振る舞われていました。
着いたのが開演時間ギリギリだったので、列に加わりたい気持ちをぐっと抑えて席を探します。空いていなかったので、そこは野外らしく、ちょっとした石段に腰掛けることにしました。
衣装がかわいすぎる!
演者の入場、と同時に民族音楽グループの衣装のかわいさに目を奪われます。詳しくは演奏会の衣装にフォーカスした連載「コンサート・ファッショニスタ」にゆずりますが、まず視覚から演奏会に向けてテンションだだ上がりです。
座席はほとんど埋まっています
そしてマエストロの登場! こちらのマエストロ、普段はオールブラックで登場することが多いのですが、この日はなんとベージュのジャケットに半ズボン!! プログラムに合わせた衣装と見られ、なるほど野外演奏会とはお祭りなのだと思わされた次第です。
プログラムはハイドンに始まりシューベルト、モーツァルト、ベートーヴェンにシェーンベルクのダンスやワルツと名の付く作品ばかり、もしこれがトランプの「大富豪」だったら「舞曲しばり」とでも言いましょうか、イタリアーナ弦楽合奏団と民族音楽グループが交互に曲を披露していきます。
思わず笑顔になっちゃう!
民族音楽グループの演奏ではヨーデルのような歌の掛け合いもあれば、手拍子もあったり、その響きに思わず口角が上がります。
レポートを書く側としてはありがたいことに、公式FBに動画が上がっていたので、それをお借りしてみなさまにここでシェアしたいと思います。少しでも会場の雰囲気をお楽しみください。
個人的にはヴァイオリンが気になりました。合奏団も民族音楽グループも同じヴァイオリンを使っているにも関わらず、聴こえる響きがまったく違います! 民族音楽の音色を前にすると、クラシックのヴァイオリンはマジメちゃんに聴こえるほど。でも、それがまた愛おしく感じられてなりません。自分自身は毎日この楽器を弾いていますが、改めて楽器のポテンシャルを魅せられた気がします。
また民族音楽グループのハープの音色が、まるで魔法がかかるときの音のような…いや魔法をかけられたことはないのだけれど、もしそんな音があるとしたらこんな響きなんだろうな、と思いました。演奏会が終わってみるとその空間にいたこと自体が夢の中の出来事だったように思えたので、ある意味では “魔法にかけられていた” と言えるのかもしれません。
野外ならではのハプニング
初めての野外コンサート、大いに楽しんだのですが、“野外ならでは” の思いがけない出来事もありました。
まず蚊が多くてですね……水辺の街なのもあってコンサート以前にもたくさん虫刺されがあったのですが、演奏会は夜、しかも会場は明るいとあって、演奏を聴いている間も絶対刺された気がします。そういえば街のスーパーにはシャンプーよりも多くの種類の虫除けが売っていました。虫対策は必須です。
そして何より驚いたのが…未知との遭遇。プログラム最後の曲の最中に、足の甲にチクリと何かが触れたような違和感を感じてふと視線を向けると、わたしの靴をなめくじちゃんが這って(はって)いました。
どうやら迷った挙句靴を登って、たどり着いた先にあったわたしの足の甲を少しかじってみたようです。違和感の正体は彼のSOSだったのかもしれません。なめくじを至近距離で見たのも初めてだったので大層驚いたものの、足元に落ちていた枝を使って、そっと茂みにリリースしました…。
そんなことをしていたらアンコールが終わっていました。慌てて拍手の輪に加わります。これも一期一会のご縁かもしれません。驚いたけれど、あとになって思い返すと笑いがこみ上げてくるので、いい思い出です。
会場は外とあって小さな子供が駆け回っていたり、そうして舞台のそばまで駆け寄ってきた女の子を見て、マエストロは怒るでもなく笑顔で手を振ってみせたり、雰囲気がとにかくなごやか。この音楽祭を街の人は毎年とても楽しみにしていると聞きましたが、それも納得の楽しさだなぁ、と思いながら帰路につきました。

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