「90年代リバイバル」なんて言われて久しい昨今。毎日のようにあたらしいショップがオープンし、常にあたらしいカルチャーが生まれる東京の街で、「90年代リバイバル」ではなく「90年代に生まれた世代」が活躍中。90年代に生まれた、まだまだ「若手」と言われる人たちは、どんなことを考え、何を想っているのだろう。働き方で「90年代生まれ世代」が見えてくるかも。第2回目は、新代田にある刺繍とガーメントプリントのお店「YACHT(ヨット)」の店長・タウンゼンド桃子ドーンさん(25才)に会いにいきました。

Photography_Kae Homma
Text&Edit_Momoka Oba

思い立ったらすぐに行動。突貫工事でオ
ープン。

――“刺繍とガーメントプリンターのあるオープンスペース”って珍しいと思うのですが、YACHTをオープンしたきっかけは何だったんですか?

私はレコード会社に勤めていて、所属アーティストのグッズを制作したりする部署にいるんですけど、Tシャツを気軽に作れるようなプリンターや刺繍機があったら便利だなとずっと思っていて。若手のバンドだと10枚とか少ない単位でグッズを制作することもあるから、どこかに発注するよりも自分たちで作れた方がきっと楽なんですよね。でも、会社には機械の置き場所がないから、どこか別の場所でお店にしちゃおうって思ったんです。すぐに企画書を作って会社に提出したら、「思ったようにやっていいよ」って快諾してくれて。その許可を得たのが去年の10月頃です。

――おー、すごい行動力! オープンしたのは何月頃ですか?

去年の12月末にオープンしたので、やると決まってから2ヶ月後くらいですね。もう、超突貫工事でした(笑)。内装工事も自分たちでやって。設計は、浜松を拠点とする「+tic」という建築デザイン事務所にお願いしました。彼らも90年代生まれの同世代なので、話も合うし、同じ感覚を共有しやすいんですよね。
――会社からのGOが出て、本当に良かったですよね。

めっちゃいい会社ですよね。資本も出してもらっているから、私自身が自分のお金でやっているわけではないんですけど、とても自由にやらせてもらってます。

――今は、どんなメンバーでお店を運営しているんですか?

スタッフは全部で5人です。ミュージシャンの子とかデザイナーの子とか。みんな年齢も近いので、にぎやかに楽しくやっています。
――普段は、個人のオーダーよりもアーティストのグッズ制作の方が多いですか?

やっぱり、グッズは数百枚単位でオーダーが入るので、割合としては多いですね。個人でお店に来てくれる方もけっこういて、その場合は、すぐに作ってその場でお客さんにお渡ししてます。

――作る数が多いと、その分やりがいもありそうですね。

同じアーティストのグッズを何度か作っていると、人気になるにつれて作る枚数もだんだん増えていったりして。そうやって変化を間近で感じられるのは刺激になりますね。彼らの目指している方向性がわかっている場合は、こういうのがいいんじゃない?ってアイデアを一緒に出し合って作る時もあります。

――ここで作れるのは、Tシャツとキャップと?

Tシャツとキャップとトートバッグがメインです。あとはシルクスクリーンの提携工場があるので、1週間くらいあれば、コーチジャケットとかにプリントすることも可能です。

目指すのは、地域密着型。

――ここ、環七に面してるしいい立地ですよね。いい物件が空いててよかった!

道路を挟んで向かい側にある立ち飲み屋「えるえふる」の會田さんが見つけてくれたんです。すぐに内見に行って決めました。

――友達がただ遊びに来ることとかも多そう(笑)。

缶ビール片手に来て、閉店までずっといる人とかもいますよ(笑)。えるえふるやFEVERに近いので、みんなついでに寄ってくれますね。
――仲の良いお店に限らず、この近所のお店とたくさん関わっていけたら楽しそうですよね。新代田がますます盛り上がりそうだし。

この間、近所のおじちゃんから新代田周辺のお祭りで配るエプロンの刺繍を頼まれたんですよ。そういうのめっちゃ嬉しいし、地域密着型でやっていけたらいいなと思って。

――学生時代に毎年クラスTシャツとか作ってたけど、こういう気軽に頼めるおしゃれな場所があの頃にあったらよかったのになあって思います。

懐かしい(笑)。思えば、クラスTシャツのデザインをいつも担当してました。あの頃からすでに始まってたのかもしれない! 別に昔からTシャツ屋になりたかったわけじゃないし、タイミングが重なってお店ができただけなんですけど。

勢いで始めちゃうのがこの世代の面白さ

――いざオープンしてみて、意外と大変だったこととかありますか?

何もできない状態からスタートして、研修期間もほぼなかったので、みんなで一緒に壁を乗り越えながらやってきた感じですね。あとは、ミシンもプリンターも細かい機械なので、メンテナンスが大変。今までは業者さんに依頼する側の仕事をしていたので、いざ自分で作ってみるとなると、物を作る難しさがわかります。でも、私はいつも楽観的なので、あんまり悩まずに楽しくやってます!
――私たち90年代生まれの世代は、勢いで何かを始めちゃう人が多い気がします。

たしかに! みんなノリで生きてる気がする(笑)。私は大学受験も就職活動もしなかったから、高校を卒業した後に無職になっちゃって。これはヤバいと思ってCDショップでアルバイトを始めて、その時の同僚から今の会社を紹介してもらって。今は、会社に行くのは月に2回くらいで、ほとんど毎日YACHTにいます。こうやって振り返ってみると、流れに乗ってきた人生だなあって。

――たぶん今って、24歳とか25歳とか、このくらい世代の人たちがだんだん何者かになってきている時期なんですよね。何でもなかった人たちが、少しずつ何かを得てきているというか。

しかも今は、誰でもすぐに何かを発信できる時代じゃないですか。そこが超面白いと思う。みんな、好きなものとかやりたいことがハッキリしてますよね。

――ほんと、いろんなところにチャンスが転がってるし。

何者でもない人がひょんなことから何者かになれるから、すごい時代だなあ。

みんながくつろげる溜まり場に。

――今後のYACHTについて、店長としての目標はありますか?

今は正直、お店がちょっとキャパオーバーなところがあって。どうしても間に合わなさそうな時は、依頼を断ってしまうこともあるんです。だからそうならないためにも、大きい場所に引っ越すか、もう1つお店を作れたらいいなと思っています。あとは、とにかくみんなが楽しく働けること! 仲の良い、アットホームなお店にしたいですね。

――すごい、バイトの求人みたい(笑)

アットホームな職場です!ってやつ(笑)。でも本当に、みんながずっといても苦にならないような場所にできたらいいなと思います。スタッフに限らず、いろんな人がくつろげるような溜まり場にできたらいいな。気軽に遊びに来てほしいです。
YACHT
東京都世田谷区代田4-10-24 フロント新代田1F
13:00〜20:00/不定休
☎︎ 03-6265-8636
https://yacht.maison

ザ90年代ズ:25才 新代田YACHT店長の場合はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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