テデスキ・トラックス・バンドが渋
谷公会堂で凄腕ライヴ披露!

2001年に結婚、2010年のフジ・ロック・フェスティバルに”デレク・トラックス&スーザン・テデスキ・バンド”として出演したことがあった二人だが、正式にテデスキ・トラックス・バンドとして始動したのは翌年になってからのこと。それぞれのバンドがそのまま合体したこともあって、2012年2月の来日公演は個性と個性が交錯して生み出すハーモニーが刺激的だった。
それから2年を経て実現した2度目のジャパン・ツアー。初日のステージは、よりバンドとしてのまとまりを感じさせるものだ。デレクがギブソンSG、スーザンがフェンダー・ストラトキャスターを抱えてステージに現れ、「メイド・アップ・マインド」でショーをスタートしてから、アルバムからの曲を中心に、じっくり聴かせるライヴが繰り広げられる。ただ、かっちり構成が固まったぶん、その枠の中でデレクが奔放にスライドしまくるのが鮮烈だった。「ドゥ・アイ・ルック・ウォリード」でスーザンがソウルフルな喉を披露すれば、デレクも同じぐらいソウルフルにスライドを決める。
スーザンはヴォーカルにウェイトを置き、ギターはバッキング中心ながら、「ミスアンダーストゥッド」ではリードもプレイ。夫婦(めおと)ソロの応酬を見せた。
あくまで曲と演奏を聴かせることに徹したこの日のステージ。アルバム・ジャケットのアートワークをステンドグラス風?にアレンジした垂れ幕を除くと、ショーアップされた要素はほとんどない。バンドのスターである2人がステージに上がるときも、もったいぶることなく、あっさり出てきて演奏を始める。だがそれゆえに、音楽そのものの魅力がよりダイレクトに伝わってくるのだ。
スペシャル・ゲストのドイル・ブラムホールIIもまた、虚飾を嫌うアーティストだ。2006年のエリック・クラプトン来日公演以来、久しぶりに日本のステージ上でデレクとドイルが合体!という”事件”でありながら、ドイルはライヴ中盤、まるでテデスキ/トラックス家に遊びにきたかのように「ヨッ」と現れる。華々しいファンファーレでなく鎮魂歌のホーン・セクションに乗って彼が歌うのは、ルイ・アームストロングの「セント・ジェームス病院」だ。
ドイルは5曲に参加、実際に家族ぐるみの友人であるがゆえ、あうんの呼吸で押し引きの効いたプレイで魅せる。フレディ・キングの「パレス・オブ・ザ・キング」では3人のリード・ギター掛け合いも見られたが、実に”絵になる”光景だ。ツイン・ドラムスとホーン・セクション、バック・ヴォーカル2人を含む大所帯のバンドにおいて、この3人は文句なしのフロントマン/ウーマンである。
もしテデスキ・トラックス・バンドに”代表曲”があるとしたら、それは「ミッドナイト・イン・ハーレム」だろう。この曲のイントロが奏でられると、会場からこの日一番の拍手が沸き上がる。ゴスペルを軸にしながらポップに味つけ、胸を締め付けるスライド・ギターをフィーチュアしたこの曲でしんみりさせた後、「バウンド・フォー・グローリー」で栄光を取り戻し、ハードなロック・リフが腰骨を突き上げる「ザ・ストーム」でバンドはいったんステージを後にした。アンコールはジョー・コッカーの「スペース・キャプテン」。映画『バックコーラスの歌姫たち』で新たな注目を集めているこの曲だが、ここではスーザンがエモーショナルに歌い上げ、デレクがスライドで盛り上げる。ドイルも再びステージに上がり、コーラスとタンバリンでバックアップしていた。
デレクが15年間在籍してきたオールマン・ブラザーズ・バンドを年内いっぱいで脱退すると声明を出した直後の、渦中の時期に行われた来日公演。テデスキ・トラックス・バンドに専念する決意を固めて、さぞかし気合いを込めた演奏を聴かせるのでは…という予想を良い意味で裏切って、ひたすら音楽への喜びと悲しみをギターで表現するライヴだった。
スーザンのヴォーカルが心を温め、デレクのギターが肌を火照らせる。さらにドイルまで参加したステージが終わって会場を出ると、冬の風が心地よかった。

文:音楽ライター山崎智之

【2月6日渋谷公会堂 セットリスト】
1.Made Up Mind
2.Do I Look Worried
3.It’s So Heavy
4.Misunderstood
5.I Know
6.St.james
7.Meet Me In The Bottom
8.All That I Need
9.Part of Me
10.Palace of the King
11.Midnight in Harlem
12.Bound for Glory
13.The Storm


14 Space Captain

【オフィシャルサイト】
■テデスキ・トラックス・バンド オフィシャルサイト
【関連商品】 テデスキ・トラックス・バンド
『メイド・アップ・マインド』
NOW ON SALE
Derek Trucks/Derek Trucks Band (デレック・トラックス) 最新情報はこちら★
コンサート情報や、チケット優先予約などのお得な情報はこちらでチェック!
★洋楽来日公演ライブ、チケット情報ほか連日連夜更新中!

タグ

ヨーガクプラス

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着