【The Wisely Brothers
インタビュー】
遊び心が楽しい
The Wisely Brothersの挑戦
前作アルバム『YAK』から1年5カ月振りとなる2ndアルバム『Captain Sad』はチャレンジングな作品となった。結果、オルタナティブで等身大という意味でナチュラルなサウンドは、さらにThe Wisely Brothersならではと言えるものになっている。3人がさまざまなチャレンジを心から楽しんでいることは、アートワークからも明らかだ。
悲しみを乗り越えたいという気持ちが
どの曲にもあった
『Captain Sad』は全11曲中9曲がセルフプロデュースという意欲作ですね。
真舘
プロデューサーさんと作った前作『YAK』の経験を踏まえた上で自分たちだけで作ったらどんな作品ができるんだろう、それを聴いたお客さんはどう思うんだろうと考えながら作ったんですけど、前作に比べてものすごい力が必要だったというか、迷うことも多くて。でも、自分たちだけの力で作ってみたいという興味は、今回の作品を作ったあと、さらに高まっているんです。
迷わずに作れるという自信があったからセルフプロデュースで作ったわけではなく、自分たちがどんなことをできるのか試したかったわけですね。ところで、今回のアートワーク、すごくいいですね。お店で見つけたら絶対、ジャケ買いしますよ(笑)。
和久利
デザインをお願いする時、タイトルの意味というか、今作のテーマを送って、5つぐらい案を出してもらった中から選びました。最終的にフェンシングとテニスのどちらにするかで悩んだんですけど、テニスは誰かがやるだろうから、フェンシングに決めました。
真舘
今回、初めてお願いしたデザイナーさんなんですけど、打ち合わせを進める中で、私たちがどんな気持ちを込めて今回のアルバムを作ったのかを分かってくれて。そういう気持ちの共有ができた上で、“おぉっ、こう来るか!?”っていう、この大胆なアイデアが私たちの味方になってくれたというか。一緒に作品をドン!って力強く出そうと考えてくれている気持ちがすごく嬉しくて。撮影はちょっと恥ずかしかったんですけど…ね、頑張ったよね(笑)。
何かしらのユニフォームでっていうのは、バンドからの提案だったんですか?
渡辺
“悲しみを持っていたとしても、それを光に変えて進んで行こう”という気持ちをタイトルに込めたという話をしたら、デザイナーさんからこのアイデアが出てきたんです。他にもかわいいものや私たちらしいものもあって、どれも魅力的だったんですけど、3人とも直感でこれに惹かれました。ただ、そこには現実問題があって、自分たちがこの格好をしなきゃいけないわけですよ(笑)。
和久利
ギャグにならずに、カッコ良いものにできるのかどうかっていう。
渡辺
その不安があったにもかかわらず、これを選べた私たち、よくやったなって思います(笑)。
和久利
歌詞カードのブックレットにジャケットを撮った時の写真が何枚か載っていて、それもすごく面白いので、ぜひCDを手に取ってほしいです。
“悲しみを持っていたとしても、それを光に変えて進んで行こう”というテーマですが、曲を作り始める時には、もうあったのですか?
真舘
いえ、曲を作っている時は、聴いた人が自分の大切なものを思い出したり、考えたりできるものになったらいいなと漠然と思っていただけでした。テーマがはっきりしたのはミックスの終盤ですね。そろそろタイトルを決めなきゃいけないというタイミングで、どういう曲たちが集まったのかなって聴き直してみたら、悲しさが言葉として入っている曲が多かったんです。でも、その悲しみを乗り越えたいという気持ちがどの曲にもあって、それをアルバムのテーマとして、タイトルに込めたいと思いました。
そのタイトルですが、“Captain Sad”の“Captain”はどこから?
真舘
タイトルを考えていた時にいろんな言葉を見ていました。その時期に何度か出会ったのが“Captain”で、声に出すとすごくいい響きだなって。ポップでいて頼もしく思えたんです。Captain Kid、Captain Cook、Captain Sad…あ、これ、どうだろう? “Sad”って言葉は暗いイメージがあるけど、その前に“Captain”が来ることで、あら、Sadがいきなりポップになった! 言葉の並びで、こんなにイメージが変わるんだ!?…っていうのが面白かったし、“Captain Sad”って言葉の響きも好きだなと思ったので、ふたりに相談しました。
和久利
最初は“Sad”って言葉がマイナスイメージに思えたんです。自分たちで進み始めるアルバムだからポジティブな言葉がいいと思ったんですけど、晴子から悲しみを背負いながら前に進むという話を聞いた時に、私たちらしいと思えたし、聴いてくれる人からも共感してもらえるんじゃないかなって。その意味があるなら、めちゃめちゃカッコ良いと思いました。
真舘
悲しさがあるからこそ、それを乗り越えようとして、悲しんだ分、見える光があるんじゃないか…そう考えると、悲しみってそんなに悪いものではないかもしれない。私たちは自分たちの悲しさはもちろん、誰かの悲しさを光に変えていきたいし、そういう曲を作りたいんです。