生演奏と生歌の音楽ライブで5周年を
盛大にお祝い!『白猫プロジェクト
Music Live 2019』イベントレポート

2019年7月14日(日)に5周年を迎えた、スマートフォン向け本格3DアクションRPGアプリ『白猫プロジェクト』。その楽曲をフィーチャーしたライブイベント『白猫プロジェクト Music Live 2019』が、2019年7月13日(土)・14日(日)の2日間、東京にて全3公演開催された。このイベントは、ゲームを彩る600曲をも超える楽曲の中から、選りすぐりの楽曲を生演奏で楽しめる『白猫』初の単独音楽ライブである。今回は、2日目である14日(日)の夜に行われた最終公演を取材。感動と興奮に満ちた、そのステージの模様をレポートする。

キャトラ(cv堀江由衣)の声で演奏開始! ゲームの世界に引き込まれる演出も続々
館内放送は、ゲーム内のキャラクターである猫のキャトラ(cv堀江由衣)が担当。ゲームそのままの愛らしい声で楽団をステージに呼び、開演を告げた。
13日夜公演より 写真:中田智章
ピアノの優しい音色と共に、スクリーンに映し出されたのはゲーム画面。オープニングは「ずっとずっと昔の物語」に始まり、メインテーマである「冒険の始まり」と2曲続けて演奏される。ステージには、飛行島を再現しているのであろう雲のようなスモークもモクモクと立ち込め、画面には「白猫プロジェクト」の大きなタイトルが表示された。まさにゲームの世界に入り込んだかのような錯覚を起こす。
続く『白猫スペシャルメドレー』では、「編成」「冒険」「飛行島の平和な日常」、そしてガチャのBGMである「出会いの予感」と、耳馴染みある楽曲が続く。中でも「編成」は大胆なアレンジが施され、弾き始めはピアノとアコースティックギターのみの静かな音色からスタート。そこへホルンやヴァイオリンなど楽器の音が次々に足され、やがて原曲通りの勇ましい雰囲気へと変わる。生演奏ならではの、心地よく楽しい演出だ。
司会進行役のMC・伊吹高恵と、『白猫』ではヘレナとパンの2キャラの役も務める声優・中村紗彩の登場を挟み、続いて多彩なジャンルの楽曲が7曲演奏される。それぞれ、これまで『白猫』内で開催されたイベントを彩る楽曲たちだ。
13日夜公演より 写真:中田智章
ジャズ調の軽快な楽曲である「夜学GIG」では早くも観客が手拍子を始め、楽しげなムードが会場を包み込む。かと思えば、シリアス調の「過去との決別」からは会場が一気に張りつめた雰囲気に。ピアノの儚げな音色から始まる「Love」では静寂が立ち込め、王道ファンタジーを思わせる力強いメロディの「蒼空の輝き ―絆―」で、また一気に盛り上がる。七変化、という言葉がピッタリの展開だ。また演奏中には、スクリーンにそれぞれの楽曲の演奏にピッタリとマッチするゲーム内の画面が続々と流れた。ゲームでも再び見返したくなる激アツな映像ばかりだ。
二度目のMCを挟み、またイベント楽曲5曲が展開。『絶海の侵略者 〜混沌インフィニティX〜』より「カーニバルX」ではカーニバル調の愉快なリズムに合わせ、スクリーンに2頭身にディフォルメされたネモやノア、ルルとたこ焼きなど可愛らしいイラストが登場する。しかも単にキャラクターが現れるだけでなく、ステージで演奏中の奏者たちの姿をリアルタイムに映し出しながら、その周りをちびキャラたちが囲むというコミカルな演出も。
13日夜公演より 写真:中田智章
前半の最後には、山崎寛子が登場。自身が作詞・作曲も手掛けた「Ray―はじまりのセカイ―」を歌い上げた。
13日夜公演より 写真:中田智章
ゲーム内でも多くのプレイヤーの思い出に残る屈指のイベント『ゼロ・クロニクル ~はじまりの罪~』の一曲。曲が終わるや、舞台袖から出てきたMCの中村紗彩が、感動で山崎の胸に飛び込みハグし合う場面も。グスッ、グスッと鼻をすすりながら涙する中村は、なんとリハーサルから数えて4回もこの楽曲で涙してしまったそう。
前半だけでも全19曲、沢山の演奏に興奮冷めやらぬ中、15分間の休憩を挟んでイベントは後半に入る。
ステージがバグる演出も!? クラウディア役の上田麗奈も登場
ライブの後半では、スクリーンに8bit調の角ばった文字で「はじめる/つづきから」とコマンドが映し出され、観客からは笑いがこぼれつつ演奏スタート。昔のビットゲームで聴き馴染みのあるピコピコサウンドをフィーチャーした4曲が演奏された。中でも「おそらでたいとる」では、出だしからオーケストラの演奏でスタートしたかと思うと、急に楽器が止まってピコピコサウンドのみに。その間、約50秒も、奏者たちは楽器に手をかけたまま時が止まったようにフリーズしていた。中には高くギターを掲げたまま静止していた奏者も。『不具合だらけのダンジョンに~』というイベント名に合わせた、体を張った「バグ」の演出である。
続く『オーバードライブ紅蓮』、『オーバードライブ紅蓮 2 ~Crimson Darkness~』、『オーバードライブ紅蓮 3 ~Phantom Hero~』と『討滅士ガルガ』の全4曲の後には、再び歌付きの楽曲が披露。『パイレーツシンフォニア』でイベントキャラクター・クラウディア役を演じた上田麗奈が登場し、「Hymnus」と「Oratio」の2曲を歌い上げた。
13日夜公演より 写真:中田智章
真っ白なドレスを着た上田の透明感にあふれた生の歌声が、ピアノや弦楽器など生の楽器に載り、のびやかに会場内に広がる。それだけでも贅沢なのに、演奏後には「ヨーホーヨーホーホー」というクラウディアのハミング曲を観客全員で合唱するというサプライズも催された。
続く『帝国戦旗 ~The Undertaker~』と『帝国戦旗II ~REQUIEM~』からの、スリリングなロック調の3曲が。ステージのライトも眩くフラッシュし、ドラマチックな音楽を一層盛り上げていく。
13日夜公演より 写真:中田智章
まだまだこれからどんな楽曲が演奏されるのだろうかと期待していたが、時間は残酷だ。続くMCで、次のイベント楽曲でライブが終わってしまうことが告げられる。
最後を飾るのは『白猫』4周年イベント『WORLD END ~運命の光~』からの3曲。それぞれ、スクリーンに映し出されたイベントのアニメーションと共に楽曲が奏でられた。力強い、王道ファンタジーのサウンド。最後の「Lux ―最後の約束―」では、歌を務めた山崎が再び舞台に現れ、切なくもパワフルな歌声で最後の楽曲を歌いあげた。
演奏が終わり、指揮者の砂守岳央が観客を振り向く。3日間のすべてを出し切ったかのようにフウーッと大きく溜め息をつき、観客に一礼した。しかし楽団が送り出された後も鳴りやまない大拍手。「アンコール、アンコール」の声で会場は埋め尽くされる。
13日夜公演より 写真:中田智章
それに応え、楽団とMCらが再びステージに登場。アンコールの楽曲として「仲間と一緒に」「Stand Up!」の2曲が演奏された。演奏に合わせて、MC2人と歌手2人がそれぞれ『白猫』キャラクターが描かれたボードを両手に掲げて踊るチャーミングな演出も。さらには、指揮者の砂守が楽団ではなく観客に向けて指揮棒を振ると、それに観客も手拍子で応える。文字通り会場のすべてが一体となった壮大な演奏で、ライブの幕は閉じた。
13日夜公演より 写真:中田智章
前半と後半、さらにアンコールも合わせて全37曲。単純に楽曲の多さだけでも驚かされるが、それだけではない。楽曲のジャンルや舞台演出、そしてゲーム映像と、すべてにおいて工夫が凝らされた壮大なステージ。お手軽で楽しいアプリゲームであるだけではない、壮大な物語やキャラクター、そして音楽の数々など、深みある『白猫』の世界観にどっぷり浸かれるイベントであった。
出演者コメント
ライブ終了後には、メディア取材として演奏直後の出演者4人(砂守岳央、上田麗奈、山崎寛子、中村紗彩)にインタビューする時間を設けていただいた。皆さんからの言葉を、一人ずつお届けする。

MC・中村紗彩コメント:
今回、MCと言うよりも「プレイヤー代表」として舞台に立たせていただきました。最初は「私で大丈夫かな?」という気持ちがありながら、皆さんの演奏を聴くと、やはりステージ上で「いち、ファン」という気持ちになり……。それでも伊吹高恵さんが引っ張ってくれたので、何とかMCの役もこなせてホッとしております。また『白猫』では、こうした大きなホールでのミュージックライブは初となるので、お客さんも付いてきてくれるんだろうかと最初は不安もありましたが、1日目の最初から盛り上がっていただけたので、その後も1日目、2日目と走り切った感じはあります。本当に楽しかったので、またやりたいです、よろしくお願いします(笑)。
『白猫』で好きな楽曲は、一番好きなキャラクターのユキムラ・サイオンジの曲で、今回のステージではセットリストになくて残念でした……。しかしすべてのイベントを遊んでいるので、すべての曲に思い入れがあります。今回の楽曲の中では「Ray―はじまりのセカイ―」で『ゼロ・クロニクル』のシナリオを思い出してしまって、リハーサル含め4回泣いてしまうくらい、感情が引き出されてしまいました。
歌手・山崎寛子コメント:
演奏する皆さんの熱量が伝わって、自分から熱量を込めようなんて思わなくてもどんどん気持ちが込もって熱くなりました。MCのときには中村紗彩さんが本当に泣いているのを見て、私も笑い泣きしそうに(笑)。観客の皆さんも泣いていて、こんなライブに参加できるなんて人生でなかなかないので、本当にいい経験になったなと思いました。
『白猫』で好きな楽曲は、どうしても自分が作った曲を贔屓目に見てしまうので、「Ray―はじまりのセカイ―」で。私は普段は作曲家なのであまり人前で歌を歌うこともなかったんですが、「Ray」をきっかけに歌うようになって、「Lux ―最後の約束―」も歌いました。上田(麗奈)さんが歌う「Hymnus」「Oratio」も私が書いた曲で……本当に贔屓目ですね(笑)。完全に自分の趣味で好きな楽曲を言えば、『帝国戦旗』シリーズの楽曲。「狩猟戦旗」とかサイコーで、観客の気分で聴いていましたね。
歌手・上田麗奈コメント:
最初に舞台の袖から見ていても演奏者の皆さんや観客の皆さんの熱量が伝わってきていたので、歌うときは、その熱量に圧倒されないようにと、戦いに行くような感覚で舞台に出て行きました。でも戦いに行ったのに、ステージ上では不思議なことに、仲間しかいないんですよね。感動と皆さんの愛情がダブル伝わってきて、演奏者目線、観客目線、それぞれの目線で楽しませていただきました。
クラウディア役としては、まだ自分の感情を爆発させたり、ポテンシャルを発揮したりできていないキャラクターだと思っているので、レコーディングのときもそこまで熱量を込めすぎないように挑みました。それをまたライブで演じるにあたって不安や緊張もありましたが、彼女が「歌が大好きなんだ」という気持ちを大切にしてあげられたらいいなという、半ば願いのような気持ちを込めて歌いました。
『白猫』で好きな楽曲は、私も『ゼロ・クロニクル』の「Ray―はじまりのセカイ―」です。歌詞と物語がリンクしているので、歌を聴いたときに切羽詰まった切ない思いが伝わってきて、「これは泣いてしまう!」と印象深かったです。『帝国戦旗』も個人的にどストライクで、本当にかっこよくて……何だろう、ちょっとヘンタイ性を感じる(笑)。あのフェチズムがたまらないです。
指揮者・砂守岳央コメント:
回を増すごとに自分の中でどんどん世界に入り込んでいきました。特に第一部の終わりの歌(「Ray―はじまりのセカイ―」)とか、僕が一番泣きそうになりながら、泣くと演奏がぐちゃぐちゃになってしまうので、ギリギリ泣かないようにこらえながら、自分が感動しているのが伝わればいいなと思いながらやっておりました。
今回の楽曲は、基本的には原曲の雰囲気・メロディを残しつつアレンジしていきました。ジャズやロックなど幅がある『白猫』の楽曲に対応できるよう、メンバーにも、ギターとキーボードを兼ねている人、サックスとフルートを兼ねている人、10個ぐらいのパーカッションをやっている人など、応用力の利く人たちを集めました。特にソロやアドリブなどは彼らにボンとお任せしてあって、それらの演奏が原曲の良さの上にうまく載っていってくれているところに、我々らしさ・自分らしさがあるのではないのかなと思います。
映像と音楽の組み合わせは大変でした。どちらかと言うと映像さんサイドに音楽を合わせていく立場だったんですが、システム的な同期をバッチリするために映像さんサイドと僕とで話し合っていきました。例えば何か事件が起こった場合、バックアップはどうするかなどを考えると、できること・できないことをパズルのように組み合わせて、「これはどうですか? では、これは?」と、2、3往復ぐらいの話し合った末にようやくまとまったという感じです。
演出面ではリハーサル直前まで試行錯誤したところもあって、例えば「おそらでたいとる」でバグって演奏者が全員止まるという演出は、本番のときに初めてやりました。1日目の公演時はすぐに演奏に戻れるように控えめにやっていたんですが、楽屋で「もっとウケたい」と皆盛り上がってしまって、2回目、3回目ではポージングも激しさが増していきましたね(笑)。
『白猫』で好きな楽曲は、歌のある楽曲はぜんぶ好きです。でも、それだと皆さんとカブってしまうので(笑)。今回できて良かったなと思えるのは、『100億$$$(トライドル)』のイベントの2曲ですね。曲順とかも、序盤で観客の皆さんに手拍子をやっていただくのは早すぎないか? と悩んだんですが、結果的にはあの位置で良かったですね。堅苦しい感が一気に抜けて、会場が盛り上がりました。「Ray―はじまりのセカイ―」は、最後にキャラクター2人の手が届くか、届かないか……というところで終わる、という演出にしました。
改めて、演奏者、観客、物凄い熱量のステージに参加できたことを嬉しく思う。それと共に、『白猫』はまだまだ5周年を迎え、6年目がスタートしたばかり。これからはテレビアニメ化も予定されており、さらに音楽や、物語の幅も膨らんでいく。再びスマートフォンを手に取れば、あの冒険の世界にはスッと戻っていける。そんな簡単なことが、今は嬉しくてたまらない。
7月20日(土)0時からテレビ東京「あにてれ」にて今回の『白猫プロジェクトMusic Live 2019』13日公演のもようがアーカイブ配信される。今回のライブに足を運んだ人はもちろん、予定が合わなかった人もぜひ、『白猫プロジェクト』の音楽を存分に楽しんでほしい。
取材・文:平原 学 撮影:中田智章

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