清春

清春

【清春 リコメンド】
初のカバーアルバムに見る
25年目の自負心

オリジナルとの比較が楽しい
いきものがかりの「SAKURA」

 多くのアーティストにカバーされている「傘がない」と「木蘭の涙」。先行配信された「悲しみジョニー」。おそらく、年齢が若くなればなるほど、タイトルを見聞きしただけではピンと来ない人が多くなるかもしれない「想い出まくら」や「アザミ嬢のララバイ」。この辺りの楽曲は、その歌の主旋律からして清春が歌ってもしっくりと来るであろうことは事前に想像できた。個人的に意外な選曲だと思ったのは「SAKURA」だ。いきものがかりの吉岡聖恵と清春はそのヴォーカリゼーションのタイプが異なる。比較的歌メロを素直に歌う吉岡聖恵に対して、ご存知の通り、清春はフェイクを使うタイプである。また、どちらかと言えば吉岡聖恵の潑剌(はつらつ)と歌うタイプだし、清春は時に聴く人の内側を抉るかのようなスリリングさを響かせることもある。ある部分でスタイルは真逆とも言えるので、どうして「SAKURA」を選んだのかはちょっと不思議な感じさえする。所謂“桜ソング”のひとつとしてチョイスしたのかもしれないけれども、そう考えてもいきものがかり以外にも“桜ソング”はあって、“個人的にはあちらのほうが清春に合いそうだな”と思うナンバーもあるだけに興味は尽きない。その真相は本人の弁を待たねばならないが、この「SAKURA」もオリジナルとも比較が楽しいナンバーであることは間違いないので、乞うご期待である。個人的な感想を付記すると、清春の口から《小田急線》という言葉が出てきたのはかなり新鮮だった。

 楽しいと言えば、「想い出まくら」に続くのが「アザミ嬢のララバイ」、「月」に続くのが「MOON」、そして「やさしいキスをして」に続くのが「接吻」という洒落っ気も楽しいところではないだろうか(「想い出まくら」→「アザミ嬢のララバイ」は、まくら→ララバイ(子守歌)の連想じゃないかな)。バンド時代から作品のトーンはシリアスで、そこに“笑”があることはあったが(それにしてもそれは嘲笑や冷笑だったけれど…)、実は清春の作品に“楽”を見出したのはこれが初めてではなかろうか。ファンならご存知の通り、清春はライヴのMCやメディアに出た時にはフレンドリーな表情を見せることも多い。だが、作品内でこうした洒落っ気(“茶目っ気”とすら言い換えてもいい)を見せたことが今まであったのかというと、記憶を辿ってみてもちょっと思い出せない。カバーアルバムという形態がゆえなのだろうが、これもまた『Covers』の興味深いところである。

OKMusic編集部

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