「ポケモン」誕生から23年。最新作か
らシリーズの意義を考える

「ポケモン 剣盾」が発売。「ポケット
モンスター」シリーズがカルチャーとし
て果たす意義について考える

2019年11月15日、人気RPG「ポケットモンスター」シリーズの最新作「ポケットモンスター ソード・シールド(以下、ポケモン 剣盾)」が発売された。シリーズ初作の発売から23年。同シリーズはどのような進化を遂げてきたのか。初作以来、23年ぶりにシリーズをプレイしたぼく、結木千尋が、ひとりのプレイヤーとしてシリーズの想い出を振り返りながら、シリーズがカルチャーとして果たす意義について考えていく。

「ポケットモンスター」の歴史

「ポケットモンスター ソード」のキービジュアル

「ポケットモンスター」シリーズの歴史は、1996年にスタートした。当時はまだ、PlayStationの発売から少し経ったころ。家庭用ゲーム機と言えば、スーパーファミコン、ゲームボーイといった時代だ。シリーズ第1作となる「ポケットモンスター 赤・緑」は、任天堂の看板携帯機、ゲームボーイのソフトとしてこの年にリリースされている。

その後、シリーズは、主役となるポケモン(シリーズでは“御三家”と呼ばれる)やタイトルを代表する特別なポケモン(シリーズでは“伝説のポケモン”と呼ばれる)などに変更を加えたマイナーチェンジ版、本編とは別のシステムを持つスピンオフタイトルのリリースを続けながら、正統な続編として「ポケットモンスター 金・銀(1999年)」「ポケットモンスター ルビー・サファイア(2002年)」「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール(2006年)」「ポケットモンスター ブラック・ホワイト(2010年)」「ポケットモンスター X・Y(2013年)」「ポケットモンスター サン・ムーン(2016年)」をリリースした。対応ハードは、ゲームボーイカラー、ゲームボーイアドバンス、ニンテンドーDS、ニンテンドー3DSと、携帯機が続く。携帯機での発売が暗黙の伝統となりつつある中で、シリーズ8作目、3年ぶりの新作となった今作「ポケモン 剣盾」は、完全新作のシリーズタイトルとして初めて、家庭用ゲーム機のNintendo Switchでリリースされた。

ぼくと「ポケットモンスター」

「ポケットモンスター シールド」のキービジュアル

冒頭にも書いたとおり、ぼくは初作の「ポケモン 赤・緑」以来、23年ぶりに「ポケットモンスター」シリーズをプレイした。同シリーズを振り返って思い出すのは、例外なく23年前のことだ。

ドラクエやFFのようなクラシカルなRPGが主流だった時代にあって、「150種類のなかから好みのモンスターを選んで戦える」という自由度の高いシステムは、当時の子どもたちにとても魅力的だった。ぼくの周りでは買った友達が圧倒的多数派で、持っていない子が話に入れず、自然と仲間はずれになってしまうような風潮があったように思う。放課後になるとそれぞれがゲームボーイを持ち寄り、ほとんど喋ることなく顔を揃えてプレイした。はたして集まる意味はあったのだろうか。
ゲームボーイは、最近の携帯機とは違い、電池によって駆動する。長時間プレイしていると、あっという間に電池を消耗した。当時小学生だったぼくの周りには、あらかじめ予備の電池を用意して遊びに来るなんて準備の良い子はおらず、電池が切れたらそこで“退場”が決定する。ほぼ会話のないその集まりから、電池切れを理由に帰らなくてはならないときの悔しさを、ぼくはいまでも忘れない。
しばらくすると、その悔しさに対策しだす奴が現れる。ゲームボーイには、本体の左側に映像のコントラストを決めるダイヤルがついていて、コントラストを弱めにすると電池の持ちが良くなるのだ。それまでは電池切れ間近(電池切れが近くなると、ゲームボーイの画面は勝手にコントラストが弱くなる)で初めて触るそのダイヤルを、電池がMAXの状態から弱めに設定してプレイする猛者が現れた。最初は彼らを半信半疑の目で見ていた仲間たちも、明らかに彼らの“退場”頻度が下がっていることに気づくと、こぞって真似をした。初代ポケットモンスター発売という一大イベントは、まだ小学生だったぼくたちに工夫することの意味を教えてくれた気がしている。

「ポケモン」誕生から23年。最新作からシリーズの意義を考えるはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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