三宅裕司と紅ゆずるが語る喜劇の素晴
らしさとは 熱海五郎一座『Jazzyな
さくらは裏切りのハーモニー』

新橋演舞場6月公演に、今年も熱海五郎一座公演が登場する。熱海五郎一座は2006年に旗揚げされ、座長の三宅裕司を筆頭に、コント赤信号の渡辺正行、ラサール石井、小倉久寛ら豪華喜劇人が脇を固める。毎回女性ゲストを招いており、今回の公演では、宝塚歌劇団を2019年に退団したばかりの元星組トップスター紅ゆずると、AKB48の2代目総監督・横山由依が登場する。
熱海五郎一座が新橋演舞場で行う第7弾の公演、東京喜劇『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー~日米爆笑保障条約~』について、座長の三宅、ゲストの紅に話を聞いた。
ーー6月新橋演舞場に、再び熱海五郎一座が登場します。
三宅:去年の6月に作家(吉高寿男)と打ち合わせした時に、「戦後の闇市からのし上がっていくジャズシンガーをやりたいね」と話したことがはじまりです。それからシノプシス(あらすじ)を持ってきてくれたのですが、ひとひねりしてありました。今回のゲストである紅さんは宝塚出身で歌・ダンス・芝居ができますし、AKB48からは横山由依さんが来てくれて、音楽の要素が集まりました。考えたストーリーにぴったりのキャスティングができたと思っています。
ーー紅さんは宝塚を退団してはじめての舞台です。お話を頂いた時の印象をお願いします。
紅:豪華な一座にゲストとして呼んでいただけるなんて、こんなにありがたい話はないなと思いました。とても緻密に計算して演じていく喜劇というのは、普通の悲劇よりも難しいと感じているんです。間合いだったりとか、そういうものはその日によって違うものなので、敏感にキャッチして展開していく、繊細な芝居としての笑いを分かっていらっしゃる方々なので、私も体感してやっていきたいと思っています。それに、はじめての女役です(笑)
ーー紅さんは元々コメディに興味があったんですか?
紅:はい、宝塚歌劇というイメージが色々あるかと思うのですが、私は「こういう宝塚があってもいいんじゃないかな」と思ったものをやっていたんです。それを最終的にみなさん面白がってくださって。ただ、それとは違うと思うので、勉強していきたいです。
ーー稽古はもうはじまっていますか?
三宅:いえ、まだはじまっていなくて。秘密練習をしているメンバーはいますよってことくらいです。もうはじまっていると言ってもいいのかもしれないですけど、個人の中では(笑)
三宅裕司
ーー秘密練習とは……少しでもお話しいただけることはありますか?
三宅:それがねえ、言っちゃうと秘密じゃなくなっちゃうんだよ(笑)。でも、音楽関係ということだけはお伝えします。
ーー今回の舞台のストーリーや役柄についてお伺い出来ますか?
三宅:さっき話したことは、やりたいと話していたことで、実際作家が作って来たものは全然違っているんです。『戦争が終わったけどアメリカ敗戦』ですよ。どうするんですか?
一同:(笑)
三宅:そこはもう、楽しみにしていただきたいです。私の役はアメリカにいる、日系アメリカ人のジャズバンドのひとりです。そして日本が勝ったわけですから、紅さんは日独同盟軍から来る方です。大佐だっけ? 少佐?
紅:中佐です(笑)
熱海五郎一座『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー』チラシビジュアル
三宅:当時、実際の日本では、やってきたマッカーサーが民主化や教育改革とかをしていったわけですが、彼女はその逆をやる人です。日本人と日本の文化のよさを伝えていきます。それが全てギャグになっております。
ーー舞台の注目ポイントのひとつですね。
三宅:そうですね、あと、由依ちゃんのドラムでね、紅さんが歌うという。
ーーそうなんですね。
三宅:そうなんですね、って頷いてるけど、まだ分かんないよね。
紅:はい(笑)。聞きながら「そうなんだ~」って思ってました。
三宅:まだ台本を渡してないから。調整中です。さらに面白くしています。
ーーお互いの第一印象をお願いします。
三宅:紅さんとの初対面は……衣装合わせ?
紅:いえ、(劇団SETの舞台を)観劇させていただいて、ご挨拶させていただきました。
三宅:ああ! 楽屋で……まず背が高いなぁと思って、あと、吸い込まれそうだなぁと思いました、すぅ~~~っと。変な表現かもしれませんが、グッと引き込まれる魅力のある方だなぁと思いました。
紅:私の第一印象は「ほ、本物だ、『THE夜もヒッパレ』だ……!」でした。お話をいただいた時に「すっごぉい」みたいな、ミーハーな気持ちが一番でした。ただ、「いいもの作りましょうね!」と言っていただいて「そうなんだ、私はもうこっち(演じる側)の人間なんだ」と思って。実はお話をいただいたのは退団5日目だったんです。
三宅:うわ~~~。そうだったんだ。
紅:なので、まだ全然退団ホヤホヤで、男役の服しか持っていないですし、そのまま「お願いします!」と乗り込んで行った感じです。なんだか、こう……とても柔らかい印象の方で、紳士ですよね! 『THE夜もヒッパレ』の印象があったんですが……。
三宅:まぁ、ツッコム方ですしね。
紅:(笑)。その印象が強かったので、優しい方だなぁというのが第一印象です。
紅ゆずる
ーー紅さんの中で、退団後初舞台の一番の課題だなと思っていることはありますか?
紅:そうですね、まだ台本を見ていないので、漠然としかイメージしていないんですが……振り返った時に「あの舞台が原点だったんだな」と自分の中で誇らしく思えるようなものがあったらいいなと思います。
三宅:紅ゆずるの人生を背負いました。
紅:あはは(笑)
ーーアクションや仕掛けは今回どうなりますか?
三宅:アクションはまだ、アクション振付師と相談している段階です。
紅:私、立回りありますか?
三宅:これからご相談ですね。やってみたい?
紅:やりたいです。
ーーおふたりにとって、コメディとはなんでしょうか。
三宅:今回舞台は終戦後の日本とアメリカです。戦後はみんなが必死で生きていて、緊張感に満ちている。ギャグに必要なのは緊張感なんです。その時必死にやっていることが、周囲から見たら笑えたり。ですから、必死でやっている、生きている状況をいつも探しています。それと、僕は音楽が好きでジャズのバンドとかもやっていまして、ジャズをよく題材にしています。何故かというと、僕たちは“東京喜劇”と銘打っていますけど、定義は何もない。ただ、格好いいジャズをやって、その後ずっこける。そのギャップの大きさみたいなものが、東京の格好いい喜劇かなって思っています。
お客さんは素に戻ることを期待しているところもあるんですよ。……だから素に戻っているのか、アドリブなのか、分からない様に演じるんです。
ーーそれも計算の上で。
三宅:はい、計算の上で、東京の新しい軽演劇を作り上げたい。アドリブとそうじゃないものの区別ができないようにしていきたいっていうのが、理想です。ダンス、歌はレベル高く、そしてギャグはバカバカしく。感動のストーリーを最後まで爆笑でもっていく。我々、熱海五郎一座のポリシーは『豪華なセットにせこいギャグ』。
一同:(笑)
三宅:せこいギャグを牽引するのは渡辺リーダーです。
紅:例えば、本当につらいときにつらいものを見る人もいますけど、そういうものだけでは生きていけないですから、つらい時こそ、笑いを見て、その時だけはつらさを忘れられるとか。至って簡単にみえるけど難しいことをしている、というのが好きなんです。人の涙を誘うっていうのは、シェイクスピアなら、笑いもなくて、ずっと暗くて、ちょっとの幸せも全部不幸にしていくよっていう……それも計算なんですけど。ただ、喜劇というものは、何か落とすものがなければ、上げるものがない。やっぱり喜劇っていうのは、ギャップだなと思います。
三宅:今回の台本を見てないから、はっきり言えないよね。演じて、そのギャップを見つけてもらえればいいなって思います。
三宅裕司
ーー大阪出身の紅さんと、東京の喜劇というものが、どう組み合わされるのか、注目されていますね。
三宅:SNSですごい話題になっていたみたいです。最大限、紅さんの持っている笑いのセンスが活かせる台本を作って、一座の仲間としての環境を整備していくことに時間がかかるかもしれません。去年よりも面白いものを、と考えていますが。
ーー紅さんは過去の映像資料などをご覧になっていますか?
紅:もちろんです。「面白い、巻き戻そう」って巻き戻してしまうんですけど、「ダメだ、ほんとは生で見なきゃいけなかったんだから、体感しないといけないから、巻き戻しとかはなし」って、巻き戻さなくなりました(笑)
三宅:(笑)
紅:今のアドリブだったのかな? とか、芝居なのかな? とか分からなくて。あと、三宅さん以外がお芝居されている時に、役としてもその場にいるけれども、絶対に監督としての三宅さんもいるはずと思って、観察していました(笑)
三宅:歌舞伎の劇場ならではの機構の宙乗りを、この一座だからこその新しい使い方ができないかとかも考えます。うちでやったのは、死んだラサール石井をヘリコプターで運ぶだけの宙乗りをしました(笑)
紅:普通こう使うだろうっていうとことを、違う風に使うのがいいんですよね、あえての死体(笑)。うまいこと、いい形で人を裏切るってすごく難しいと思うんです。
ーー先程紅さんが、三宅さんは一座の舞台に立たれている時に監督的な目線を持っているはずだと仰っていましたが、どのような意識で立たれていますか?
三宅:「何があっても俺に任せておけ」って気持ちを持っています。そうすると演者の緊張が解けるじゃないですか、何かあっても絶対に笑いにかえるぞって。だから大丈夫だよ、ってお互い信頼していたら思い切って馬鹿ができるから。
紅:三宅さんは「今できているのはこのくらいなんだよね」と作っている途中のものを見せてくださることはないんです。それってすごいことだと思っていて。「絶対面白いものを作るので、待っていてください」って言うのは勇気がいるはずです。
紅ゆずる
三宅:笑いって言うのは、結果がすぐ出ちゃうんです。「これでやってみて」って、やってもらったら、シーーーーンとしちゃう。「ごめんな、ごめん、恥かかせて……」ってなるんですよ。
一同:(笑)
三宅:先程の紅さんの話で、人生も背負うことになっちゃったし、台本また見直さなきゃなって思っています。
ーー同じくゲストで出演される横山由依さんの印象は?
紅:まだお会いしてないんです。同じ関西の出身(横山は京都府出身)なので、そこを頼りにしています。やはり総監督をされていたので、全員を見て、自分がきっちりしていないと相手に言えないという立場は私も分かってますし、そういう点で共感できるんじゃないかなって私は思っています。
三宅:何回かお会いして、「真面目な方だなぁ、一生懸命な方だなぁ」と思いました。ピアノとドラムができるということなので、器用な方だと思います。
ーー今回の舞台を楽しみにしている方へ、メッセージをお願いします。
紅:私自身は「私を見てもらうのではなく、一座に溶け込んでる」と思ってもらいたいなぁって考えています。私のファンの皆さんも来てくださると思うんですが、この一座の中でどんな役割ができるか、そんな風にできるのか、ということを目標にしています。
三宅:去年とは違うもの、と毎回模索しています。宝塚の方は何度も来ていただいていますが、紅さんのように、笑いが好きで宝塚の時代からやっていたという方は、はじめてなんです。なので、宝塚ファンの方にも喜んでいただけて、一座のファンの方も「ああ、この人が来たから新しいものができたね」と思っていただけるように化学反応を期待しています。
熱海五郎一座 東京喜劇『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー~日米爆笑保障条約~』​は新橋演舞場にて、2020年6月2(火)~30日(火)まで上演される。
(左から)紅ゆずる、三宅裕司
取材・文=森 きいこ

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