L→R atsuko(Vo)、KATSU(Key&Gu)

L→R atsuko(Vo)、KATSU(Key&Gu)

【angela インタビュー】
どんな“バトル”の中でも、
やっぱり自分の
“メッセージ”を発信したい

エンターテイメントを世に出すことが
angelaの使命だと思っている

そんな表題曲と対照的なのが、同じくアルバムのために書き下ろされた「夢と希望に殺される」ですけれど、これは…かなり痛いところを突いた曲ですね。

atsuko
プロデューサーからの“ものすごく暗い曲を作ってはどうですか?”という、ざっくりとしたオーダーから生まれた曲なんです。私、“夢を持て”とか“希望を持って頑張れ”みたいなメッセージが本当に正しいのか分かんないなって思うことが何度もあるんですね。自分を振り返ってみても、“歌手になる”という現実味のない夢を追いかけてきたおかげで傷ついたことがたくさんあったし。よく専門学校のパンフレットとかに“夢は叶う!”みたいなキャッチコピーが書いてありますけど、専門学校に行ってプロのミュージシャンになれる人ってほとんどいないじゃないですか。でも、そういうキャッチコピーを掲げてくるわけで。本来、私もそう言わなきゃいけない立場だと分かってはいるんですよ。でも、人には表と裏があって、その両方ともが真実なんですよね。なので、この曲ではそんな裏の部分を曝け出したかったんです。

叶うとは限らない夢や希望を追い求め、追い詰められていく心情を語った歌詞が本当に生々しいのですが、夢を叶えたatsukoさんがそれを歌っているというのが若干不思議に感じなくもなく…

atsuko
いや、叶ってないんですよ。客観的に見れば“十分に叶ってるじゃん!”って言われるのは当然だろうけど、自分の思い描いていたところには辿り着けてないし。“それは我々の曲のせいなのか? 若くないからいけないのか?”と悩んでしまう時もあって、歌手になりたいなんて夢を持っていなければ、そんなことは考えなくても済んだのにと思ってしまうんですよ。
KATSU
ライヴの規模で言うと、“さいたまスーパーアリーナが目標です!”って何年も言っているのに、まだ全然届かない場所にいるし。だから、僕、これは自分の歌だととらえていたんで、傍からは“夢を叶えた人”に見えてることに初めて気づきました。

じゃあ、おふたり自身も夢と希望に殺されずとも、半殺しくらいにはされていると?

atsuko
あっ、全然されてますよ! “もう辞める!”と思ったことは何度もありましたし。
KATSU
常に“殺される”と怯えながら作業してますよ。命を削ってるし。“この人たちにアニソン書かせると何か爪痕を残してくれる”って言われる存在になりたいんですよ! でも、まだ自分の中では全然なれてないし、18年も“ジークジオン!”ってやってるのに『機動戦士ガンダム』の曲を一回もやったことないですからね。この前も高橋洋子さんに“あなたたちがうらやましい”って言われましたけど、僕からすれば「残酷な天使のテーゼ」という世界中で通用する曲を持っている高橋さんのほうが夢を叶えてる。だから、ひとりの根暗な少年の嘆きを歌ってる「夢と希望に殺される」を、僕は自分自身の曲だとしか思えないんですよ。

どのラインで“夢を叶った”と見なすかは人それぞれですからね。どんなに成功した人でも成し遂げたことがその自身の夢であったとは限らないし、逆にどんなにこの曲に共感したとしても、傍から見たら“夢を叶えたくせに”と言われる可能性がある。

atsuko
今回、初めてリリックビデオというものを作ってもらって、イラストがあると入ってき方が違うんだなというのは感じました。ここで雑踏の景色を、ビルの絵を…とかっていう指定は一切してなくて、動画編集してくださる方の感性に全部お任せした結果、自分の曲なのに自分とは違う感性が追加されて、より伝わりやすいものに変換されたのが、なんだか不思議な感覚でしたね。みなさん、ニコニコ動画とかで楽曲に勝手に絵をつけたりするのも、こういう楽しみがあるからなんだなって今さら気づきました。

感性の相乗効果って確実にあって、その最たるものがアニメだと思うんですよね。だから、時に爆発的な引力を持つんだろうなと。

KATSU
コラボってことですよね。総合芸術の一番ミニマムなかたちが、こういった曲と絵師と動画師っていうことなんだろうな。
atsuko
この動画を作ってくださった方からは“まるで僕の人生を歌っているような曲なので編集しててつらいです”ってメッセージいただいて、“抉っちゃったみたいですみません!”ってなりましたけど(笑)。

いや、こうしてangelaの楽曲にかかわって大々的に自分の作品を発表できているんですから、ある意味で夢叶えてますよ! そして、夢と希望に“殺される”と訴え続けながら、ラストは“夢と希望は生きている”になるという。

KATSU
最初は“殺される”のままだったんですけど、プロデューサーから最後くらい希望を持たせてはどうかって助言もあって。まぁ、どちらでも正解ですし、これも取り方ひとつで意味合いが変わっちゃうんですよね。
atsuko
こんなにつらくて殺されそうなのに、僕の中での夢と希望はまだ燻っているというポジティブなとらえ方もできれば…

自分を殺しにかかる夢が元気に生きて、まだまだ自分を苛んでくるというのは、さらなる絶望に取れなくもないと。

KATSU
エンターテインメントというものを世に出すことがangelaの使命だと思っているので、自分たちからのメッセージ100パーセントにはしたくないんですよね。むしろ、エンターテインメントのひとつとして、どう取っていただいてもOKなスタンスでいたいなって。
atsuko
だから、最後の一文は余白って感じですね。

OKMusic編集部

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