【遊助 インタビュー】
苦しいことを乗り越えた先には
楽しいパーティが待っている
音楽をやっていて一番幸せな瞬間は
やっぱりクルーに会えること
お話をうかがっていて私も思いました。実は数年前にインタビューさせていただいた時にも、遊助さんから逆質問をされたことがあるんですけど、そういう好奇心旺盛なところが全然変わらないなぁと。
あははは! 俺、そんなことしてたんだ(笑)。
表現者にとっては好奇心って大事なものですし、そこは変わらないほうがいいんでしょうね。
そうだと思います。芸能人って街中を歩いていても声をかけられるし、デパートに行ったら指を差されるし、渋谷のスクランブル交差点を歩くこともないし、どうしても“日常”から遠ざかっちゃうんですよ。でも、曲を聴いてくれるみんなの日常を描かないと、その人の曲にならないじゃないですか。例えば、“この前、マネージャーが運転してくれた移動車でこんなことがあった”っていう曲より、“バスで君と肩がぶつかった”っていう曲のほうが“そういうこと、あるかも!”って思うでしょ? そう考えると、自分自身が日常を経験しにくい分、こういう仕事での出会いを大事にしたいし、その出会いから得たものを無駄にしたくない。出会った人からできる限り“日常”をインプットしておきたい。そういう気持ちが、好奇心につながっているんだと思います。
カップリングの「好きなように」と「抱き枕」はどちらも長年共作されているN.O.B.B.さんと制作されていますが、まず「好きなように」はどんなやりとりの中で生まれたのでしょうか?
だいぶ前に俺が何曲か好きなテイストの曲を挙げていて、それをもとにデモを作ったN.O.B.B.くんが“遊助好みの曲ができたから聴いてくれない?”って自信ありげに持ってきてくれたんですよね。で、それに対して俺がざっくりとしたニュアンス…“ポワンポワンとした、丸みがある音を入れたい”とか“BPMはこれくらいがいい”っていうのを伝えて仕上げてもらいました。ほとんどN.O.B.B.くんが好きなように作りましたね(笑)。
歌詞は遊助さんらしいポジティブに背中を押してくれる内容ですが、今のコロナ禍では攻めてる印象も受けます。
そうですね。今は“好きなように”って言いにくい時だと思うんですけど、だからこそこういう曲を作ってみたいと思いました。それでも正直言って、ちょっと迷った。作っておいてなんだけど(笑)。
影響力がある分、悩みますよね。
でも、レコード会社の人に相談したら“全然大丈夫”って言ってくれたから、今は前向きにとらえていますね。こんな時期だけど、自分の好きなものを見つめ直すきっかけになったらいいなと思います。
一方の「抱き枕」はレゲエテイストのラブソングですが、こちらは?
「抱き枕」は夢の中の曲を作りたかったんですよ(笑)。N.O.B.B.くんが作ってきてくれたトラックを聴いた時に、これは“抱き枕”しか出てこないと思って。
感性が天才的すぎて、理解が追いつきません(笑)。ファンの方への想いも感じられますが、そこも意識していましたか?
していましたね。音楽をやっている中で一番幸せな瞬間って、やっぱりクルー(ファンの呼称)に会えることなので。しばらくライヴができなくて、会えなかった時の想いを“抱き枕”に例えて歌詞にしました。言ってみたら、ライヴも夢の中みたいなものだから、それを想像しながら聴いてほしいなぁって思います。
そして、通常版の最後を飾るのが「SPY」。冒頭から台詞が入っているなど遊び心たっぷりですが、どういうところから着想を得たんでしょうか?
このトラックを聴いた時に『名探偵コナン』が思い浮かんだんですよね。全然コナンと関係ないし、最終的にはコナンのテイストがひとつも入ってないんですけど(笑)。港でサーチライトがワァーってなってるイメージから始まって、タキシードを着たスパイに『ルパン三世』の峰 不二子のようなセクシーなスパイが甘い罠をかけて…っていうドラマを勝手に作ってみました。改めて振り返るといろんなアニメが混ざってますね。
俳優としても活躍されている遊助さんなので、ライヴではドラマチックな演出があるのではないかと期待してしまいますが。
それはどうかなぁ~?(笑) ライヴをお楽しみに…ですね。それまで曲を聴いてイメージを膨らませておいてください。
では、最後に7月からスタート予定の『遊助TOUR2021』について意気込みを聞かせてください。
もちろんいろんな事情や想いがあって、今回のツアーには来られないっていう方もたくさんいらっしゃると思うんですけど、やっぱり遊助を応援してくれている人たちと会えるっていうのはすごく楽しみですね。今はSNSでも交流を持てますけど、どうしても会わないと伝わらないものもたくさんあるから。それをみんなで共有したいし、目と目を合わせて元気を届けられたらなって思います。
取材:斉藤 碧