恐竜が、そこに確かに生きている 『
DINO-A-LIVE PREMIUM TIME DIVER 20
21』で出会えた恐竜たちに大きな拍手

魅惑の掛け算が実現
まるで生きているような恐竜に会える……。それが、恐竜ライブステージ「DINO-A-LIVE(以下、ディノアライブ)」の醍醐味だ。恐竜メカニカルスーツをパイロットが操演し、学術的にこだわり抜いた鳴き声・足音をピタリと合わせ、光や映像の演出で観客を太古の世界へ連れていく。まさに「エデュケーション」と「エンターテインメント」を融合させた、“恐竜エデュテインメント” なのだ。
そのディノアライブが、アーティスティックな本格舞台作品としてさらなる進化を遂げたのが、10月29日(金)に開幕した本公演『DINO-A-LIVE PREMIUM TIME DIVER 2021』である。
IHIステージアラウンド東京
舞台は、豊洲エリアにある360°回転劇場「IHIステージアラウンド東京」。ディノアライブ✕360°回転劇場=大興奮、である!
劇場内の様子。巨大な回転盆に乗った1,300席を、スクリーンがぐるりと取り囲む
本公演では、解説付きの「アカデミックバージョン」と、世界観への没入感を重視した「ノンバーバルアートバージョン」の2種類のステージが上演されるという。いずれのバージョンも、ナレーションを担当するのは俳優・小栗旬だ。
この記事では、開幕前日に行われた「アカデミックバージョン」ゲネプロの様子をレポートする。全体がキレイに見えるという後方席で鑑賞しようかと最後まで迷ったが、観劇位置は前から3列目の砂かぶり席(VIP席)を選んだ。いざ、プロローグの映像演出に導かれてタイムダイブ!
中生代への幕が開く
尻尾やまぶたの細やかな演技にもぜひ注目を
ファーストシーンの大役を任されたのは、色鮮やかな背びれが美しいステゴサウルスの親子だ。恐竜が、想像以上にしっかりと演技している姿は衝撃だった。特に、小回りのきく子供恐竜の可愛いリアクションから目が離せない。一方、大人のステゴサウルスは、人間ではなかなか真似できない身体を張った演技を見せてくれる。
ステゴサウルスを狙うアロサウルス
さらに、マイペースな草食恐竜や、ちょっと荒ぶる肉食恐竜アロサウルスが惜しげもなく登場し、冒頭からグイグイ引き込まれる。ちなみに本公演では、過去最多となる15頭以上の恐竜が出演するのだという。
舞台上の恐竜たちにボンヤリした瞬間は無く、登場から退場まで、必ず目的を持って何かをしているのが凄い。セリフの無いときの “オフの演技” は役者にとって技量が問われるところだが、恐竜たちからは、自分が場を埋める! 魅せる! という役者魂のようなものを感じる。動物らしいリアルな動きだって、短期間の稽古でできるものではないだろう。
ドーンと全長約13m
大注目は、今回が初出演となるブラキオサウルスだ。さすが、首が長い。大きい。こんな生物が闊歩していたのか……と目を奪われていると、ナレーションが。
「どうやら、子供のブラキオサウルスのようだ。」
あっ……これで子供ですか……。もうスケールが違いすぎて笑うしかない。
誘導スタッフ無しで何体もの恐竜が自然に動いているのも、衝撃である
舞台美術には本物の植物(ソテツ)が使用され、さらに世界への没入感を高めてくれる。序盤の森のシーンでは、個性豊かな恐竜たちの演技と同時に、背景にも注目してみてほしい。
スリムヘッドで鮮やかに魚を捕食する、スコミムス
こちらは、続いてのシーンを任されたスコミムス。ワニのような頭が特徴的な、劇団きっての二枚目俳優(?)だ。以前見かけた公演では月を背負って登場していたけれど、今回は滝音響く夜の水辺を舞台としたワンシーンを演じている。もしかして風流担当なのだろうか。
マッチングおめでとうございます
360°回転劇場ならではの見どころのひとつは、客席がグイーンと回転する場面転換だ。回転に合わせて流れる映像をバックに、駆けていくユタラプトル。自分もすごいスピードで並走しているような錯覚にとらわれる、疾走感ある演出だ。
ふわふわの羽毛と鋭い爪が特徴的なユタラプトル
ユタラプトルが見せてくれるのは、1億2000万年以上前の恋愛の形だ。オス2頭がメスをめぐって争い、勝った方がメスへの猛烈なアプローチを始める。潔い。そして必死だ。よくよく考えてみれば、そもそも生き物にとっての恋愛とは、次世代に残れるかどうかの死活問題なのだ。
ユタラプトルとは「ユタ州の泥棒」という意味。奴は何を盗んでいったかって? それはもう一番大切なものですよ
ユタラプトルのオスと比べて、メスがとても色っぽいのが印象に残った。博物館や展覧会で恐竜を見る機会は多々あるが、その性別を意識したのは今回が初めて。オスに取り合われるのも納得の、ふっくらした頬の毛並み、ハリのある臀部、そして何より、許してくれそうで「ダメダメ〜!」といった思わせぶりな態度……。恐竜個体の “イイオンナ” ぶりまで意識させるなんて、ディノアライブ恐るべし。
恐竜の間に挟まれた観客は嬉しい悲鳴?
しかし母は強し、である。あんなにたおやかだったメス(写真右)でも、卵を産んで親になったのちは、縄張りに踏み込む敵に対して鬼の形相で威嚇を繰り返す。オスにもメスにも共感するうちに、ユタラプトルのことがちょっと好きになってしまった。
主演恐竜賞をあなたに
続いて登場するのは、年老いて弱ったティラノサウルスと、その子供と思われる若いティラノサウルス。彼らが丁寧に紡ぐワンシーンは、きっと多くの人の心に残るのではないだろうか。
横たわるティラノサウルスの周りには落ち葉が積もっている。どれくらいの間こうしているのだろうか
2頭はわずかな時間、お互いに心を通わせるものの、右の老ティラノサウルスはもう自分の巨大な顎を支えることができないほど弱っている。
群がるダコタラプトルたちを相手に格闘する、若いティラノサウルス
鳴き声、音楽、照明、すべてが作用し合った美しいシーンだった。心震わす彼らの演技は、ぜひとも舞台で実際に見届けてほしい。
華やかなるライバル対決
大きなツノ・襟巻きのようなフリルが特徴のトリケラトプス
そして恐竜ライブといえば、白亜紀の二大巨頭であるトリケラトプスVSティラノサウルスの宿命の対決は外せない!
「ウチの子に何すんのよー!」
子供のピンチに突っ込んでくる親トリケラトプスの姿に、会場のボルテージも否応なしに上がっていく。個人的には毎回必ずやってほしい鉄板シーンだ。
最前列に向かって咆哮するティラノサウルス
ティラノサウルスが客席に向かってギャオオオゥ! と威嚇するのだって、「何見てんだよ!」という声が聞こえてきそうな、真剣勝負である。実際に自分がロックオンされてみると、ピキッとさせた瞬間がハッキリと分かる。
客席の頭上をかすめていく尻尾の躍動感!
そしてティラノサウルスとトリケラトプス、宿命のライバルが揃ったところで、物語はいよいよクライマックスへ突入していく……。『DINO-A-LIVE PREMIUM TIME DIVER 2021』は、そこに確かに存在している恐竜の姿を通じて、命の儚さと、それを踏まえた生への讃歌を感じさせてくれる作品だった。
雄叫びを上げる姿はベテラン演歌歌手さながら。もう、ティラノさん絶好調です
ゲネプロ後に特別インタビュー
終幕後の興奮冷めやらぬ中、スペシャルサポーターを務めるココリコの田中直樹、演出・小栗了、ディノアライブの生みの親であるON-ART代表の金丸賀也氏が登場して想いを語った。フォトセッションでの恐竜たちの写真とともに、そのコメントの一部を紹介しよう。
スペシャルサポーター:田中直樹(ココリコ) (写真=オフィシャル提供)
田中:まだちょっと興奮してるといいますか、ドキドキしている気持ちでいっぱいなんですけど……。本当に感動しました。まさに、中生代に自分がタイムスリップしたかのようで。毎日を大事に生きようとか、地球で生きていることに感謝しようって、そんな気持ちになりました。
株式会社ON-ART代表取締役:金丸賀也氏 (写真=オフィシャル提供)
金丸:今回、背景に生の植物とかを結構使っているんです。かなり年季の入ったソテツとか。形は変わってますけど、当時から生きていた植物たちを使おうと。もちろん主役は恐竜たちですけれども、実はその奥にある植物とか大木とか、そういうものが “第2の主役” だと思ってこのショーを作りました。中生代って恐竜がすごく目立っていますけど、実はものすごい……、とんでもない自然があって! その中で恐竜たちが生きていたんですね。それを表現するにはこの360°シアターが最適でありましたし、素晴らしい劇場でやらせていただけて心から感謝しております。
舞台からはみ出すティラノサウルスの、素晴らしいボディバランス
金丸:前の席はすごくアトラクティブだと思います。ここは恐竜が間近に迫ってくるので。一方、奥の席は全体像がよく見えて、中生代の風景の中で恐竜が動く姿がすごくきれいに見えるんです。全然違った見え方がするので、ぜひ両方楽しんでいただければと思います。
演出:小栗了 (写真=オフィシャル提供)
小栗:僕、実はディノアライブのファンで、ここ5〜6年の公演は大体皆勤賞で見に行ってたんです。なので、今回声をかけていただいて本当に嬉しかった。今日このゲネプロを見て……。恐竜も緊張するんだなってことがよくわかりました。前半はちょっといつもより硬かったんですよ(笑)。「本当に恐竜がステージ上にいるんじゃないか?」って感じてもらえるように作ってきたつもりなので、皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。
ああああーーーっ(喜)!
田中:ここに来れば、本当に “生きた恐竜に会える” って言ってもいいと僕は思います。今日は最前列で見させていただいたんですけど、生き物から放たれる気配とかオーラみたいなものを、このステージの恐竜たちからたくさん感じました。頭の中を真っ白にして、タイムスリップした非現実の世界にどっぷり浸かってほしいなと思います。ぜひ、この時間を味わいに来ていただきたいです!
フィナーレには、みんな揃ってはいポーズ
会場にいたのは、まさしく気配のある恐竜たちだった。それは内側で生身の人間が情熱を燃やしているからなのかもしれない。彼らの分厚い皮膚と肉の奥まで届いて欲しい、と思いながら大きく拍手をした。
興奮をお持ち帰り
劇場内物販コーナー
劇場内の物販コーナーでは、オリジナルパンフレットや各種恐竜グッズ、さらに本物の化石も多数販売されている。演劇は形に残らない芸術だからこそ、感動した記憶をグッズで残しておきたくなるものだ。
「化石 全て本物」の立て札にちょっとときめく(手前の大きなアンモナイトはディスプレイ)
『DINO-A-LIVE PREMIUM TIME DIVER 2021』​は、東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京にて、2022年1月10日(月・祝)まで開催中。寒さを吹き飛ばす熱い恐竜体験が待っている。今年の豊洲に氷河期は来ない、かもしれない!

文・写真=小杉美香 写真(一部)=オフィシャル提供

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