L→R かめがいあやこ(Key&Vo)、かわむら(Dr)

L→R かめがいあやこ(Key&Vo)、かわむら(Dr)

【ポップしなないで インタビュー】
モードが切り替わって、
覚悟を決めたところがあった

人生を肯定するための
音楽をやりたい

今作のベースになった「支離滅裂に愛し愛されようじゃないか」はタイトルからしてキラーワードですね。励ましというか、どんな状況からも救い出してくれる力強さがあります。

かわむら
マイナスな感情に落ち込んでいく曲は作りたくないんですけど、生きていると残酷なことや嫌なことはあるし、口に出したくないような恥ずかしいこともあるじゃないですか。それを音楽で前向きにとらえられるように表現をしたいと思っていて、それが聴いてくれる人のためになっていたら嬉しいですけど、何より“自分たちのために”っていうのが大きいです。自分たちの人生を肯定するための音楽をやりたいと思っているので、「支離滅裂に愛し愛されようじゃないか」はその精神を抑えることなく詰め込んで、すごく素直に作った曲なんです。

ダンサブルな曲も多いので、楽曲にどんな背景があっても音楽として楽しく聴けるという、ポップしなないでのポリシーを感じます。

かわむら
とにかくノリ重視というわけではないけど前向きに聴いてほしいし、悲しい時も嬉しい時も背中を押すような音楽であることは、自分たちにとってすごく重要なことですね。ありきたりだけど、バンドの芯になっていると思います。

「city pops」はグルービーで、ベースもカッコ良いです。歌声には大人っぽい雰囲気を感じました。

かわむら
これはアメリカのR&Bみたいな、曲全体に広がるアッパーな感じをイメージしていたんです。ヴォーカリストがひとりいて、それを楽曲が盛り上げるというか。その雰囲気を前提に作ったので、ちょっと新鮮かもしれないです。ベースラインを考えたのは僕ですけど、ライヴでもサポートしてもらっているカワノアキちゃんの力もフルで借りました。彼女は弾いている絵と音が一致する感じが魅力的なんですよ。

「tempura」の歌詞には今作のタイトルになっている《美しく生きていたいだけ》というフレーズがありますね。

かわむら
どんなアレンジをしても自分たちの音はドラムとピアノだという意識が常にあり、この曲はドラムとピアノだけでデザインできた曲なんです。“美しく生きていたいだけ”という今のモードを表す言葉が入っているのも含めて、大事な存在だと思っています。ポップしなないでの精神性とか、表現の方向、自分たちの想いを伝えるのに一番気持ちの良い曲のひとつですね。

でも、なぜ“天ぷら”なのですか?

かめがい
美味しいからです!
かわむら
ちょっと急にザコミュージシャンが横から出てきましたね。すみません。

あははは。タイトルを見た時には、遊び心あふれる曲なのかと思ったので意外でした。

かわむら
自分の中にある美学みたいなもので、その言葉が実際に表す物事と言葉自体の響きを考えた上で、使いたいかどうかのラインがあるんですけど。“tempura”はローマ字にした時にバランスが良く、美しいと思ったんです。言葉の響きと存在感と、もともとポルトガル語であることも魅力的だなと。残酷な世界観やどこか悲しい物語の中で“tempura”という言葉は違和感があるけど、呑気にマッチするところがロマンチックだなと思って。簡単に言うと“可愛いな”と思ってつけました。
かめがい
ローマ字になると、つい口に出したくなっちゃうんだよね!

楽しく聴けるポイントもたくさんありますが、「でも暮らし」では《味が無くなった/ガムを噛んでるみたいな/毎日のくせにさ/ルールが多すぎる》のあたりは日常がリアルに言語化されていてドキッとしました。

かわむら
タイトルにもしているとおり、この曲は“結局、暮らしていくよね”って話です。“ひとつでもきれいなものがあったら暮らしていけるぜ”というニュアンスもありますが、どうしても社会って多数決とか、圧とか、自分自身を守れなくなるようなことが多いと思うんですよ。それをくだらないと断言することはできないけど、何かひとつでも美しいと感じられるものがあるだけで考え方は変わってくるという意味も込めて、言葉遊びで“でも暮らし”としました。ライヴでかめがいさんが歌っているのを聴いていてもグッとくる曲です。手前味噌ですが、《何度も何度も/声に出して確かめるんだ「永遠」》という部分でそう感じたり。

サビの《しないで多数決!》からもこの曲のメッセージ性は伝わるんですけど、かめがいさんの明るい歌い方が意味を持って歌っているのか、ノリ重視なのかが掴めないまま心にスッと入ってきます。

かめがい
その部分にはあまり想いは込めていなくて、淡々と歌っているだけだと思います。言葉自体にパワーがある時は、自分がどう感じているかは表現する必要がないんですよね。
かわむら
表現が外に出すぎてしまうと、表現したいたいものが変わってしまうことがあるんですよ。歌は特にそうです。感情豊かにやっているように見えるかもしれないけど、かなり抑えていて、淡々とすることで気持ちを噛み締めて伝えようとしています。

かわむらさんが歌詞でシリアスに表現していても、それをかめがいさんがどう歌うのかが合わさることで楽曲が出来上がっている感じですね。

かわむら
最近思うんですけど、自分にないものをかめがいさんが持っていて、自分がアウトプットしたものが彼女の手によって想像以上のものになるとワクワクするんです。かめがいさんにとってもそれは一緒なのかなと。“想像以上で面白い”っていうのだけで成り立っているバンドですね。
かめがい
うん。常にお互いがやることを面白がって作っています。

OKMusic編集部

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