気まぐれに、ゆったりと――ピアノ・
鍵盤ハーモニカ奏者、作編曲家のShi
ori Sugayaにインタビュー プライベ
ート・レーベル開設&ファースト・ア
ルバムをリリース

ピアノと鍵盤ハーモニカのプレーヤーとして、またアニメやCMの楽曲制作やアレンジャーとして、活躍の幅を広げている菅谷詩織。鍵盤ハーモニカでは、リリカルでクールな演奏を聴かせ、下中拓哉(リコーダー)・内藤晃(ピアノ)とのユニット『おんがくしつトリオ』では全国での演奏活動も展開している。
そんな彼女がShiori Sugaya名義で2022年2月4日(金)にファースト・アルバム『Shade』を、自身が設立したプライベート・レーベルPanomated Recordsよりリリースした。配信開始直後から大きな反響があり、日本のみならず欧米・アジアほか世界150ヶ国以上で再生されているという。全8曲はピアノによる演奏。どこか懐かしく、温かで、少し切ない。「いま自分が奏でたいのは、猫みたいにただ一緒にいられる音楽」だという。そんな本作の制作過程や込められた思いについて語ってもらった。

【Profile】菅谷詩織/Shiori Sugaya
東京都町田市出身。
幼少期にピアノを始め、大学卒業後よりアーティストサポートやCM・劇伴音楽などに多数参加。参加作品にアニメ「ポプテピピック」、ゲーム「Readyyy!」等。
演奏活動をする傍ら、作曲やアレンジにも力を注ぐ。
より内的な表現を求めて、2022年に”Shiori Sugaya”名義での活動を開始。
◆家で静かに伸び伸びと、誰か一人のために奏でるピアノ
――ファースト・アルバム『Shade』は自身で立ち上げられたレーベルPanomated Recordsからのリリースとなりました。Panomated(パノメイテッド)は、菅谷さんの造語だそうですね。どんな思いがこめられているのでしょうか。
実は、今まで人にあまり話したことはなかったんですが、私はとても小さい頃、家の中で伸び伸び過ごしている時の自分に、「パノ」って名前をつけていたんです。なぜ「パノ」だったかは、自分でもよくわからないんですが(笑)。わりと外では、子どもながらに人に気遣いしちゃうタイプだったんですが、家の中にいる時の「パノ」は、とても自由で天真爛漫な世界観の中にいました。そんな、子どもの頃の自分の気持ちを、ずっと忘れたくないなと密かに思い続けていたのです。
今回のアルバムを作るときには、自分の中の「パノ」をそっと掘り起こして、子どものように、ただただ素直に曲を作ろうと思いました。それで、「秋“めいて”きましたね」とか、そういう時に使う言葉の「めいて」をつけて、Panomated(パノメイテッド​)という造語をレーベル名にしてみました。これまで、あまり表に出してこなかった、自分の一番奥にある内面的な部分を出せる場所として、このレーベルを位置付けたいというか。う〜ん……うまく伝わるでしょうか……(苦笑)。
――なるほど、と納得がいきます。と言うのも、ファースト・アルバム『Shade』には、とても純粋で、心の柔らかい部分に触れるような8曲が収められています。ピアノの音色もとても温かですね。
大勢の人の前でワーッと演奏する世界もいいのですが、家でそっとアップライトのような小さなピアノを弾いて、それを聴いてくれる人が家の中に一人いてくれる――それは人でも動物でもいいんですが、何かそういう感じって、私が昔から思い描いている、ある種の理想的な音楽の空間なんです。
コロナ禍となり、表に出て演奏の仕事をすることがなくなった時期があって、今自分は何を本当にやってみたいかなと考えたら、それまで自分が表に出していなかった面を形にしてみるのもいいのかな、と思ったんです。それが、今回のアルバムとして形になりました。
――『Shade』の音楽はまさに親密で、お家時間の音楽、という感じです。このアルバムは、実はリアルに、菅谷さんのご自宅で時間をじっくりかけてレコーディングされたそうですね。
外のレコーディング・スタジオで録音するときは、3日間で一気にアルバム全曲を収録するといった作業になるので、すごく頑張っちゃうわけですが、今回はそういう「外」のスイッチとはまったく違った環境にしたくて、自宅でゆっくり時間をかけて収録しました。曲を作り始めたのは1年くらい前で、収録自体は8曲で2週間くらいかな……ゆっくり過ぎたかもしれないですね(笑)。
――「Spore」「Unstable」「Longing」など、素敵なタイトルの曲が並びますが、一曲ずつはどんなふうに作っていく感じですか?
曲にもよるんですが、わりと先に頭の中に映像というか、イメージがまずあって、それを表せそうな言葉を選んでタイトルをつけて、そこから実際に音にする、っていうのが多いですね。「Chair」という曲は、かなりはっきりした椅子の映像が頭の中にあるんです。おばあちゃんが椅子に座って、窓辺にいる感じ。この曲が最初にできました。
Shiori Sugaya - chair [Music Video]
◆ピアノ、サックス、鍵盤ハーモニカとの出会い
――菅谷さんの音楽的なバックグラウンドを伺いたいです。最初に始めた楽器は何ですか?
ピアノですね。小学校に入ってから習い事という感じで。ピアノの先生が一緒に連弾してくれたのが楽しかったです。クラシックだけじゃなく、ポップスとかアニメとか、好きな曲はなんでも弾いていいことになっていました。
練習は好きでしたね。自分の中ではカンペキを目指してました。空想の中でお母さんをいかだに乗せて、間違えずに弾き切らないと、お母さんがワニに食べられてしまう!と、泣きながら練習してました(苦笑)。
――かわいい!でもストイック!
中学に入って部活でサックスをやりました。たまたま読んでた漫画の主人公の女の子がサックスを吹いていたので(笑)。それと、ディズニーランドのマーチングバンドでかっこよく演奏しているサックス奏者にも憧れて。高校は吹奏楽の強い普通高校の音楽科にサックスで入学しました。音大もサックスで受験を考えたのですが、私が好きだったのは、みんなと合奏するサックスだったんですよね。受験のために、ピアノとだけ合わせて吹く練習は向いていなかった。それで、高2でピアノに転向し、音大もピアノ科に進みました。
――鍵盤ハーモニカはいつから?
高3です。自分の好きだったサックスとピアノの両方のいいところを掛け合わせた楽器だな!と。音大でも学園祭などでよく吹いていました。
◆ジャケット撮影は京都にて。リアルにリラックスできる場所で
――今回のアルバムは鍵盤ハーモニカではなくピアノを選んだことに何か理由はありますか?
とくに「ぜったいピアノじゃなきゃダメ」みたいな感覚はあまりないですね。今回はたまたま、表現する上でピアノがよかったから、という感じですね。なので、アルバムのジャケットにもピアノは写していません。
ファースト・アルバム『Shade』ジャケット
――ジャケット写真は窓から外を向いていて、お顔も出てないんですが、とてもいい雰囲気です。
顔を出してしまうと、表情が何かのメッセージになってしまうから、それは避けようかなと思いました。撮影は、アルバムの内容的にも、すごくリラックスして撮りたいなと思いました。そこで、京都に仲のいい友人夫婦がいまして、カメラやアートが好きなお二人のお宅にお邪魔して、撮影してもらいました。
――Panomated Recordsのこれからの展望は?
これからも家で録音していきますので、数日間でアルバムの曲全部録音、というようなことはしないと思います。なので、出来上がったものから配信して、長くちょっとずつ楽しんでいただけるようにしたいですね。それらがまとまったらまたアルバムにしていく感じ。聴いてくれる方には、気まぐれに自由にゆったりと、楽しんでいただけるレーベルにしていきたいと思っています。
取材・文=飯田有抄 撮影=中田智章

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