小西成弥「見れば見るほど面白さがわ
かる作品です」~unrato#9『Our Bad
Magnet』稽古場レポート&インタビ
ュー
本作はスコットランドの劇作家ダグラス・マックスウェルの人気作で、同級生4人の9歳、19歳、29歳を描く青春群像劇。現実と思い出に揺られながら懸命に生きる男たちに魂を注ぐべく、4人の俳優が日々稽古に挑んでいる。
誠実かつ向上心にあふれた稽古の様子を、ゴードン役の小西成弥のインタビューとともに紹介する。
ゴードンも、友達がほしいしフレイザーたちと仲良くなりたいと思っているけど、自分から輪に入っていけない。無理やりにでも入っていったほうが楽なのに、簡単にはできない。そういうゴードンの気持ちはすごくよくわかります。
そして、稽古をするたびに考え方がどんどん変わってきています。最初は会話に着目していたけど、稽古を重ねるうちに4人で一緒にこの場所(物語の舞台となっている小高い丘)に来ていること自体を大切だと感じるようになりました。今はどう演じるのがベストか探っているところです」
ゴードンにとって4人で過ごす日々は、ようやく見つけられた“自分の居場所”であり、“生きていける場所”なんだろうなと思います。19歳になって皆が恋愛したり遊んだり各々の時間が増えていくなかで、ゴードンだけは4人でいる時間が唯一の居場所だったことが、ほかの3人とは違う点ですね。フレイザー、ポール、アランにはほかの世界が広がったけど、ゴードンは取り残されてしまった。そんな切ない気持ちを感じます」
ダグラス・マックスウェルのせりふには、先の場面への布石がいくつもちりばめられている。何気ないせりふの裏側に込めた思いも複雑だ。稽古でのディスカッションは、そんな戯曲の言葉ひとつひとつを納得いくまで確認する作業。さらに、アクセント、言葉の折り目、リズムやトーンも細かく調整していく。
「楽しくやろうという稽古場の空気を演出の大河内直子さんがつくってくれて、助けられています。キャストの中では、一緒のシーンが多いフレイザー役の松島庄汰さんとよく話をします。休憩中はキャストと大河内さんの5人で雑談しながら芝居のことも話します。やりづらい部分があったら話し合ったり、こうやってみようかと試したりしています」
と語る。
また、前田清実が手掛けたステージングも物語に厚みを加えている。多彩な舞台で経験を積んだ4人が、時に切なく時にコミカルに動いて表現していく。三枝伸太郎の音楽と相まって一気に『Our Bad Magnet』の世界に引き込んでくれる。
「一気に全然違う空気になるので、演劇的にとても面白いと思います。現実とは違う世界を表現したいですね。僕は元々人前に出るのは得意ではなかったけど、今はお客さんを前にして芝居をするのがとても楽しいんです。ゴードンにとっても劇中劇は、今まで出せなかった自分を表に出すことができて、自由でいられる瞬間なのかもしれない。普段のゴードンはしないような動きもしているのでぜひ注目してください」と話す。
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