上記作品 ポスター

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28本目・『黄金バット』:杉作J太郎の
DVDレンタル屋の棚に残したい100本の
映画…連載55

杉作J太郎の

DVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画
28本目・『黄金バット』 マーベルのキャラクターにひけをとらない凄い奴が日本にもいる。いや、いた。
 その名は黄金バット!
 おうごんばっと、と発音する。
 黄金バット。
 口に出すのが恥ずかしいほどに古く感じるのは私が子供のころから知っているからだろう。
 もしなんにも知らなければ。いま初めて『黄金バット』という言葉を与えられたら。金属バットの一種と察するのではないか。そんなバットを使っている野球選手がいるのだろう、もしかして大谷翔平が使ってるバットだろうか。
 だが残念ながら私は知っている。
 ものごころついた頃に知った。
 骸骨である。
 ガイコツ。
 ガイコツなので頭部は髑髏である。
 漢字が難しいね。ドクロと読む。
 姿かたちはただのガイコツである。
1万年の眠りから目覚めたのである。
 なので元々は人間なのだ。複顔(身元不明の白骨死体の頭部に肉づけをしてどんな顔だったかを推察する作業。実際にそういう行為が犯罪捜査にあるのかどうかは知らないがテレビドラマでは20世紀の終盤に流行した)したらどんな顔なのだろうか。
 ちなみに全裸だがマントを羽織っている。おそらくマントの力なのだろう、自由に空を飛ぶことができる。
 見た目は完全に不気味というか恐怖だが正義の味方である。
 正義というか、人類の味方である。人類の危機に蘇える設定である。だが蘇えるためには水分が必要である。1万年寝たまんまなのでカラカラなのであろう。
 彼(おそらく性別は男である、股間など明確な特徴はないが声、及び言葉遣いが男である、というのは今日的な発想であり、1万年前のジェンダー感覚はどうだったのだろうか。1800年前が女王・卑弥呼の昔である。まして1万年前。私には夢想する術すらないが、今日的ムードに照らし合わせてここでは男ということにしておく)に水を与えたのは少女であった。人類の危機を救うのは大命題であるが彼は少女に恩義を感じておりコウモリのブローチをプレゼントする。彼は少女のピンチにはいつ何時、どこであろうが駆けつける。少女はブローチにこう呼びかければいいのだ。
「コウモリさんコウモリさん、助けて」
 彼は駆けつける。
 彼は飛んでくる。
「ははははははははは」
 高らかに笑いながら。
 敵がどんなに多くても。
 敵がどんなに強くても。
 敵がどんなに卑劣で残虐でも。
 彼はいつも笑っている。
「ははははははははははははは」
 負けてない。
 マーベルのキャラクターたちにまったく負けてない。
 いや、私の感想としては勝っている。悲しいドクロの顔をしていても、彼はいつも高らかに笑っている。
 黄金バットのような人になりたいと思う人はもしかしたらあまりいないかもしれない。悲しいといえば悲しいし、あまににもストイックだからだ。この映画でもラスト、笑いながら飛び去っていく彼と千葉ちゃん演じる博士、高見エミリーちゃん演じる少女、筑波久子さん、中田博久さん演じる研究員たちとの距離はあまりにも遠い。めしでも食べましょうとか、泊っていってくださいと言う者はいないし、見ている私たちの頭をかすめもしない。
 だが、それゆえに。胸にせまるなにかが強烈にある。
 ものごころついた頃、風呂敷を羽織って椅子や座卓からよく飛び降りた。もちろん黄金バットにあこがれて。ガムだったか、マントが当たるキャンペーンもあったがマントはなかったので風呂敷を羽織っていた。飛べなかった。

『黄金バット』(1966年・東映)
出演/ミスター黄金バット(声:小林修)、千葉真一、中田博久、高見エミリー、山川ワタル、佐藤汎彦、関山耕司、沼田曜一、国景子、北川恵一、片山滉、アンドレ・ヒューズ、岡野耕作、菅原荘男、亀山達也、山田甲一、佐川二郎、木村修(ノークレジット)、青島幸男、筑波久子
監督/佐藤肇
企画/扇沢要
原作/永松健夫
脚本/高久進
監修/加太こうじ
撮影/山沢義一
録音/内田陽造
照明/銀屋謙蔵
美術/江野慎一
音楽/菊池俊輔
編集/祖田冨美夫
特殊撮影/上村貞夫
助監督/山口和彦
協力/第一動画株式会社
主題歌/「黄金バット」(朝日ソノラマ)
作詞/第一動画、作曲/田中正史、歌/ヴォーカル・ショップ

<隔週金曜日掲載>
画像:上記作品 ポスター

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杉作J太郎(杉作J太狼XE) twitterアカウント
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・雑誌、実話BUNKA超タブー(隔月刊/偶数月2日発売)でコラム「熱盛サウナおやじの伝言」連載中!

【プロフィール】
杉作J太郎(すぎさく・じぇいたろう)
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める(男の墓場改め)狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。

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