原作者・白正男が無識な日本人に教え
る『テコンダー朴』9巻の歴史的に正
しい読み方

人権派格闘技漫画『テコンダー朴』の最新9巻が発売される。しかし、無知で歴史を知らぬ我々日本人に、この書を正しく理解することは難しい。そこで原作者であり人権派義士でもある白正男先生に、『テコ朴』の正しい読み方をご教示願った。

登場キャラクターのモデルは?――『テコンダー朴』第9巻が4月25日にいよいよ発売されます。今回のインタビューは単行本の発売を宣伝する為に企画されました。よろしくお願いします。
白正男(以下、白) いきなり販促かよ? コアマガジンらしいな。
――前回(2022年12月号)のインタビューでは、先生の過去の義士活動について語っていただきました。今回は主に作品の内容、キャラなどについてお話をうかがわせていただきたいと思います。
白 ネタバレにならない話なら、何を聞いてもらっても一向にかまわん。
――ありがとうございます。第8巻は安倍晋三が描かれたカバーが暗殺直後だったことで物議を醸しましたが、新刊の第9巻のカバーは岸田文雄と小泉進次郎なんですね。
白 本作品はフィクションです。登場するキャラクターは全て架空の人物です。実在の人物とは一切関係ありません。『テコンダー朴』に登場するキャラは全て完全オリジナルだ。モデルなど存在しない。二度と間違えるな。

テロリストに襲撃され亡くなった安倍晋三と、死闘の末に命を落とした架空の人物・阿倍野晋二。偶然のことだが、顔も名前も似ていた。

――そうでした。大変失礼致しました。まあ、それはそれとして、安倍晋三似のキャラは阿倍野晋二と名前を変えていますが、何人かのキャラは、例えばドナルド・トランプ似のキャラはそのまま同じ名前ですよね。何か理由でもあるのですか? 外国人だから訴えてこないだろうと考えてるとか?
白 無識な●●●●●【編注・伏せ字とさせていただきます】は前アメリカ大統領の名前も知らないのか? 『実話BUNKAタブー』という日本を代表するハイクラスマガジンで仕事をしているライターともあろう者が全く情けない。
――え? ドナルド・トランプですよね?
白 実在の前アメリカ大統領の名前はドナルド・ジョン・トランプ。この作品に登場するアメリカ大統領の名前はドナルド・トランプ。全く名前が違うから全く無関係であることは確定的に明らか。
――そ……そうですね。おっしゃる通りです。大変失礼致しました。では金正恩というキャラの名前についてはどうなんでしょうか?
白 第5巻の巻末にキャラクター人気投票の結果が収録されている。その中の作者コメントで山戸大輔先生は好きなキャラとしてハットリと朴英日を、自分は偉大なるカリスマ(金正恩)を挙げている。今思えば不敬だったと反省している。偉大なる金正恩様はあくまでも最高敬愛と絶対忠誠の対象。
――そうなんですか。それで金正恩というキャラの名前については?
白 どのキャラもお腹を痛めて生んだ子供のようなもの。好きなキャラを聞かれても正直困るな。敢えて自分のお気に入りのキャラを今改めて挙げるなら、ソムチャイ、盧満錫、伊集院畸太郎、ハットリ。
――ソムチャイですか。第9巻ではソムチャイがオッチャンの後進国煽りにブチ切れてますね。私はソムチャイの韓国を盲信しているところが好きです。先生はソムチャイのどういうところがお気に入りなのでしょうか?
白 タイの格闘技であるムエタイは立ち技最強といわれている。格闘技漫画に出てくるムエタイ戦士はかませ犬ばかりという風潮だが、自分はムエタイをリスペクトしている。若い頃にはタイでムエタイ修行に明け暮れていた時期もあった。
――そうなんですか!? 『テコンダー朴』の格闘シーンのリアルな描写は、先生の豊富な格闘技経験が活かされているからなんですね。ムエタイはどのくらい修行されていたのですか?
白 1時間くらい。現地の旅行代理店で申し込んだムエタイ体験ツアーで修行したのだが、何か問題でも?
――……何も問題ありません。先生は何度かタイを訪れているのですよね? 私はタイに行ったことないですけど、『テコンダー朴』を読んでるので後進国のイメージしかないです。
白 いきなり差別かよ? ●●●●●【編注・伏せ字とさせていただきます】らしいな。
――大変失礼致しました。ですが先生も作品の中で何度もタイを後進国呼ばわりしてませんでしたか?
白 世界最高先進国の韓国と比べれば、世界中の全ての国は後進国に分類される。認めたくない気持ちはわかるが、タイが後進国なのは事実なんだ。
――なるほど。タイ人は事実は事実として謙虚に認めるべきということですね。
白 タイの話が出たからついでに言っておく。何年か前にツイッターに、タイのゲーセンで現地の高校生に格ゲーで負けた話を投稿したら、「タイをこき下ろしてるのはタイ人に格ゲーでボコられたからってマジ?」みたいなクソリプがくるようになった。自分はそんな器の小さい男ではねンだわ。ストリートファイター4は全然やり込んでなかったから仕方ねンだわ。卑劣なアドンにはめられたけど怒ってないから。なんか超煽られたけど全然怒ってないから。

しばき隊の活動に賞賛を送ろう――先生、お怒りはごもっともですが、タイの話はそれくらいで。盧満錫はどこがお気に入りなんでしょうか? 実在の反ヘイト活動家がモデルだと噂されているようですが?
白 ん~!? なんのことかな。そんな噂は聞いたこともない。本作品はフィクションです。登場するキャラクターは全て架空の人物です。実在の人物とは一切関係ありません。
――そうでしたね。大変失礼致しました。でもその活動家は自分がモデルと思ってるようですよ。「漫画の中でも在特会や桜井誠をやっつけているだけのただの正義なので別にイヤではない」とツイッターでつぶやいてます。全然怒ってないみたいでよかったですね。
白 この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。私見だが「ヘイトスピーチと戦う偉丈夫」というキャラ設定、特に「偉丈夫」という部分でこの活動家がモデルだと誤解した方が一部にいたのかもしれない。
――恥ずかしながら私も誤解してました。すみませんでした。「偉丈夫」とは辞書によると「体格の立派な男。人格の優れている男」を指す言葉ですね。反ヘイト運動の巨人として知られるこの活動家がモデルだと誤解した人がいたとしても、それは仕方がないのかもしれませんね。まあ、それはそれとして、先生はこの活動家をご存知でしたか?
白 反ヘイト界隈をウォッチしている好事家なら誰もが知る人物ではないだろうか。自分的には初期しばき隊の活動は興味深かった。ヘイトデモに対して「仲良くしようぜ」と書かれたプラカードで抗議するスマートなやり方。暴力的言動を控え目にして「仲良くしようぜ」路線を前面に出した活動を続けていれば、もっと広く大衆の支持を獲得できていたはず。今頃は天下をとっていたかもしれない。
――なるほど。必要悪だったとしても暴力的言動には大多数の人間が眉をひそめるでしょうね。先生のおっしゃる通りだと思います。この活動家が先生の箴言を聞く耳を持ってたらいいですね。伊集院畸太郎についても、有名なネトウヨの活動家がモデルだと噂されているようですが?
白 ん~!? なんのことかな。そんな噂は聞いたこともない。本作品はフィクションです。登場するキャラクターは全て架空の人物です。実在の人物とは一切関係ありません。
――ググれば普通に出てきますよ。(スマホを見せて)この人です。界隈の一部ではファッションリーダーとか呼ばれているらしいです。
白 確かに服装は似ているとも言えなくもない。この人物はおそらく『テコンダー朴』愛読者。コスプレするくらい熱烈なファンなのだろう。
――この人はコスプレイヤーだったのですね。伊集院にモデルなんていなかったのですね。またひとつ学びを得ました。ありがとうございます。連載初期の日本人キャラは非の打ち所のないレイシストばかりでしたが、人種差別された過去を持つ伊集院が登場したことで、ストーリーに更に厚みが増したように感じました。この作風の変化は何か心境の変化でもあったのでしょうか?
白 無識な●●●●●【編注・伏せ字とさせていただきます】は『TOUGH』も読んでないのか? 敵キャラには「哀しき過去…」が必要なんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ。
――先生、タフネタはツイッターだけでお願いします。忌憚のない意見ってやつっス。
白 いきなりマネモブかよ? ●●●●●【編注・伏せ字とさせていただきます】らしいな。

自分が盧満錫のモデルになったと勘違いした者のツイート。

普通の日本人なら予約して買え――えーっと、最初にも申し上げましたが、今回のインタビューは単行本の発売を宣伝する為に企画されました。ここまでのお話は大変興味深かったですけど、あまり宣伝になってないような気がします。単行本の話をしましょう。
白 第8巻の最後で覇王子によって「覇皇会館武闘大会」の開催が宣言された。第9巻の主な内容を雑に言ってしまうと、武闘大会の開催宣言を受けて動き出した世界各地の格闘家の紹介パート。最初にトーナメントをやった時は1冊で終わらせるつもりだったから、出場選手のバックグラウンドまで丁寧に描いてる余裕がなかった。よくわからないキャラがワンパンで倒される展開が続くのは、自分としてもいかがなものかと思っていた。今回のトーナメントはそのあたりの反省を踏まえて、読み応えのあるものにしたいと思っている。
――第9巻では進次郎似の柔道家とかネオナチのドイツ人とか新キャラの紹介だけでなく、前回のトーナメントに出場したキャラにも改めてスポットが当たっているのは、そういう意図があったからなんですね。

9巻のラストにはマザ…マミームーンと叫ぶ国会議員が初登場。

白 そういうことだ。既存のキャラの背景も掘り起こしていきたいと考えている。新キャラもまだまだ登場する予定。今回のトーナメント編は新旧キャラが入り乱れて戦っていくことになると思う。
――今後の展開がとても楽しみです。第9巻の発売日(4月25日)が待ち遠しくて夜も眠れません。本日は貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。
白 そこまで言うからには当然買うんだろうな? もう予約はしたのか?
――買いたい気持ちはあるのですが、編集者におねだりしたら見本を貰えるかもしれないので……。
白 いきなり●●【編注・伏せ字とさせていただきます】かよ? 木っ端ライターらしいな。

取材・文/高野房道
引用イラスト/『テコンダー朴』(作・白正男、画・山戸大輔、コアマガジン)より
初出/実話BUNKAタブー2023年6月号
PROFILE〈白正男〉
職業:義士、漫画原作者。出身成分:核心階層(抗日戦士)。正しい歴史認識と人権思想を啓蒙するため、本誌連載作品『テコンダー朴』の原作を担当。
『テコンダー朴』第9巻(コアマガジン)絶賛発売中!!

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