JAKIGAN MEISTER、有村竜太朗を迎え
た初の主催イベントで互いの楽曲をカ
バー 敬愛と挑戦に満ちた『MAGICAL
JAKI LAND vol.1』をレポート

JAKIGAN MEISTER presents MAGICAL JAKI LAND vol.1

2023.7.23 新宿BLAZE
NIGHTMAREのギタリストとして2003年にメジャーデビューを果たし、2016年からJAKIGAN MEISTER(ジャキガン・マイスター)名義でソロ活動も行なうようになった咲人。ギターに加えてボーカルも担い、総ての面に彼の美意識を反映させた同プロジェクトは、始動と同時に大きな注目を集めた。JAKIGAN MEISTERのスタイリッシュな音楽性やアーティスティックなイメージなどは高い評価を得ており、2017年6月にリリースされた1stアルバム『Ejaculation』以降コンスタントに音源を発表し、ライブ活動も意欲的に行なっている。2020年にNIGHTMAREが再始動してからはJAKIGAN MEISTERの音源発表は途絶えていたが、今年8月30日に待望のニューシングル「Que sais-je?」がリリースされる。咲人がNIGHTMAREとソロ活動を同時進行させる決断をしたことに、歓喜の声をあげたリスナーは多かったと思う。
咲人への期待がさらに高まる中、JAKIGAN MEISTER初の主催イベントライブ『JAKIGAN MEISTER presents MAGICAL JAKI LAND vol.1』が、7月23日に新宿BLAZEで行なわれた。記念すべき第1弾は、有村竜太朗(Plastic Tree)を招いて開催。咲人にとって憧れの存在であり、自身と同じくソロ活動も行なっている有村との競演ということで、咲人がより気合いを入れてライブに臨んだことは想像に難くない。ライブ当日の新宿BLAZEはオーディエンスでビッシリと埋まった状態となった。
有村竜太朗
『JAKIGAN MEISTER presents MAGICAL JAKI LAND vol.1』は有村竜太朗のライブからスタート。アバンギャルドなオープニングSEに続いてステージに立った有村は、「浮融/fuyuu」でライブの幕明けを飾った。ギターを弾きながら抑揚を効かせた歌声を聴かせる有村の姿は存在感に溢れているし、翳りと浮遊感を帯びたサウンドも魅力的で、オーディエンスが“グッ”とステージに惹き寄せられたことが感じられた。「浮融/fuyuu」1曲で場内をエモーショナルな世界に染め上げたのは、さすがの一言に尽きる。
有村竜太朗
「≒tsukikagetotsukikaze」でさらに深度を増した後、「どうも、こんにちは、有村竜太朗です」と挨拶。『MAGICAL JAKI LAND』に呼んでくれて、ありがとうございます。これが1回目ということで嬉しいなと思っているし、楽しんでいきたいなと思うので、どうぞ皆さんも楽しんでいってください。呼んでくれた咲人くんに何か気持ちを届けることをしたいなと思って、NIGHTMAREちゃんのカバーさせてもらうことにしました」という言葉に続けて、「まほら」が演奏された。憂いを湛えたメロディアスな「まほら」をチョイスする辺りは有村らしいし、NIGHTMAREの楽曲をいい形で届けたのも見事。「まほら」が終わると同時に、客席からは盛大な拍手と熱い歓声が湧き起こった。
有村竜太朗
その後は繊細な歌中とダンサブルなサビを配した「≒manegoto」、静と動の対比を活かした「≒sikirei」を続けてプレイ。極端にウェットではなく“柔らかみのある寂寥感”という言葉が似つかわしい彼の楽曲は心に染みるし、ダイナミクスを効かせたアレンジでドラマチックさを演出するのではなく、エモさを増幅させるというセンスのよさも光る。表現したいことが明確で、それを追究し続けているアーティストの凄みを感じることができた。
有村竜太朗
「我々のライブもそろそろ後半に差し掛かるので、もっと熱くなって帰っていってください。まだまだ楽しんでいってください」という有村の言葉から始まったライブ後半ではキャッチーな「≒kagidokei」やパンキッシュなファストチューンの「≒jukyusai」、躍動感を放つ「≒fuyuu」などが畳みかけるように演奏された。ここまでとは一味違って熱くパフォーマンスしながら歌う有村も、爽快感を放つサウンドも魅力的で思わず気持ちが上がる。オーディエンスを惹き込む前半からエネルギーを放出する後半に至る流れが見事に決まって、場内は華やかな盛り上がりを見せた。
JAKIGAN MEISTER
セットチェンジのインターバルを経て、暗転した場内にデジタリックなオープニングSEが流れ、サポートメンバーに続いて咲人がステージに姿を現した。客席から大歓声と熱い拍手が起こる中、JAKIGAN MEISTERのライブはパワフル&キャッチーな「Why don’ t you?」からスタート。歌の合間にステージを行き来してフィジカルなステージングを織り成す咲人の姿に目を奪われるし、ベースがNIGHTMAREのNi~ya(Ba)、キーボードは吉田トオル(DISCO VOLANTE)、ドラムがHIRO(ex.Raphael/rice)という錚々たるサポート陣と共に奏でるソリッドさとウネリを併せ持ったサウンドは心地好さに満ちている。咲人に牽引される形で、ライブが始まると同時に場内のボルテージはさらに高まった。
JAKIGAN MEISTER
その後は「『MAGICAL JAKI LAND』第1回へ、ようこそ! 記念すべき第1回のゲストは有村竜太朗さんでした。竜太朗さん、ありがとうございます。僕は高校生の頃にPlastic Treeさんをメチャクチャ聴きまくっていたんです。そんな大先輩の竜太朗さんとご一緒できるのは、嬉しい限りです。ありがとうございます。そして、今日は最後まで楽しんでいってください」という咲人のMCを挟みつつ「Crook」や「なりたかったくなかった」「プラセボ」といったダンサブルなナンバーを相次いでプレイ。アッパーさとロマンチックな雰囲気を纏った楽曲はライブ映え抜群で、オーディエンスは華やかなリアクションを見せる。JAKIGAN MEISTERのライブは、場内が終始いい空気感に包まれていることも印象的だった。
JAKIGAN MEISTER
ライブ中盤ではスタイリッシュ&モダンな味わいの「Que sais-je?」(新曲)や退廃的な歌中とキャッチーなサビをフィーチャーした「Mercy Killing」、ホットな「我楽多」などが演奏された。ライブ序盤から感じていたことだが、咲人のプレイは本当に素晴らしい。テクニカルなリフやトリッキーなオブリガード、シャープなカッティングなどを配した難易度の高いギターワークを展開しながら安定したボーカルを聴かせることに圧倒されずにいられない。「ヰタ・セクスアリス」や「我楽多」で見せたルーパーを使ってバッキングをループさせ、その上でリードプレイを弾くという手法(これも簡単なことではない)やテクニックと歌心を両立させた上質なギターソロなども含めて、ギターの見どころが多いこともJAKIGAN MEISTERのライブの大きな魅力といえる。
JAKIGAN MEISTER
その後は「Plastic Treeさんの『Puppet Show』というアルバムを聴いてドハマりして、その中でも1番好きな曲をやらせてもらおうかなと思います」という言葉と共に「絶望の丘」を披露。同曲の叙情的な憂いを最良の形で表現したことからはPlastic Treeに対する咲人のリスペクトの深さが感じられたし、カバー曲を歌うことで咲人のシンガーとしてのスキルの高さをあらためて実感できた。有村の「まほら」、JAKIGAN MEISTERの「絶望の丘」ともに絶妙で、競演者同士のカバーも今後の『MAGICAL JAKI LAND』の見どころになることを予感させられた。
JAKIGAN MEISTER
ライブ後半ではハイテンションな「FC MEISTER」や力強く疾走する「名状し難いほど有り余る邪気」や煌びやかなサビを配した「ワールズエンド」といったアッパーナンバーが演奏された。激しさを打ち出していながら荒れた雰囲気になることなく、オーディエンスは華やかな盛り上がりを見せる。ライブ後半の新宿BLAZEの場内は、一体感や多幸感に溢れた楽園のような空間へと化した。
JAKIGAN MEISTER
『JAKIGAN MEISTER presents MAGICAL JAKI LAND』の第1弾となった今回のライブは充実感がある内容で、非常に観応えがあった。JAKIGAN MEISTERと有村竜太朗という顔合わせの妙を楽しめこともあり、今後もいろいろなアーティストとの競演を実現させていくことを期待したい。
もうひとつ、JAKIGAN MEISTERのアンコールで咲人が語った「自分は本当に音楽しかできない“音楽バカ”だということは日々感じていて。本当にそこを通してでしか応援してくれる人にお返しというか、与えてあげられないんだなということを、今年も何度も認識している。音楽はこんなに面白いんだよということを追究して、みんなに音楽を通して面白い世界を見せてあげられたらなと思うので、これからも見守っていただけると嬉しいです」という言葉も心に残った。音楽を愛してやまない咲人だけに、今後のNIGHTMAREとJAKIGAN MEISTERがさらに魅力を増していくことは間違いなさそうだ。

取材・文=村上孝之 撮影=溝口元海

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