初心者もミュージカルファンも必見!
新藤晴一がミュージカル制作の舞台裏
を綴る話題のnoteをのぞいてみた

ポルノグラフィティのギタリストで、多くの作詞・作曲を手がけているほか、小説やコラムの執筆も行なっている新藤晴一が初のプロデュース・原案・作詞・作曲を務めるミュージカル『ヴァグラント』が、2023年8月より東京・大阪にて上演される。
新藤は自身のnoteでアーティスト活動や日常だけでなく観劇した作品の感想などもっているのだが、7月から「稽古場でヒマな人と思われたくなくて」というタイトルで『ヴァグラント』の稽古場レポートを執筆している。このnoteが今、SNSを中心に注目を集めているらしい。
「制作現場の裏側を知る機会はなかなかないから貴重」、「楽曲制作者という視点からの解説は珍しくて興味深い」、また、ミュージカルに触れた経験が少ない方からも「そうやって作るんだ、知らなかった」という驚きの声など反響多数。覗いてみると、たしかに、ミュージカルが完成するまでの過程をワクワクしながら見ている様子が印象的な稽古場レポートで、ポルノグラフィティや新藤晴一の以前からのファンだけでなく、『ヴァグラント』のキャストファン、本作を楽しみにしている方、さらにはミュージカルファンや舞台制作現場に興味がある方も楽しめる内容になっていた。……ということで、noteの内容を一部取り上げながら、紹介したい。
新藤晴一のnote
『ヴァグラント』は、大正時代の日本を舞台に、“マレビト”と呼ばれる芸能の民と、ある炭鉱で暮らす人々を描く物語。ムラ全体を巻き込んだ大きな騒動が発生する中で、それぞれの葛藤を描いたオリジナル・ミュージカルだ。主演を平間壮一・廣野凌大(Wキャスト)、ほか、小南満佑子・山口乃々華(Wキャスト)、水田航生、美弥るりからが出演する。新藤が本作のために書き下ろした楽曲は20曲以上にのぼるという。
新藤は本作のビジュアル撮影などにも参加しており、主演の平間は4月のSPICEインタビューで「作曲家の方とこんなにお会いしながらお芝居を作ることはまずないので、ここまで関わってくれることに驚きました」と語っていた。 同じく4月に行われた『日比谷フェスティバル』のステージでは楽曲が初披露され、新藤もステージに登壇。キャストとのトークの中で、ロックバンドのライブにはない長期間の稽古に興味を示し、「絶対見に行きたい!」と話していた通り、アーティスト活動の合間を縫って稽古場に駆けつけているようだ。
日比谷フェスティバルでのステージの様子/前列左から平間壮一・廣野凌大、後列左から山口乃々華・水田航生・美弥るりか・小南満佑子
noteには7月31日現在、レポートでは歌稽古や本読み、衣装合わせの様子などがまとめられている。
歌稽古では上口耕平から出た「役の声と楽曲のキーのバランス」という意見を聞いてそれだけで成り立つ曲と演技の一部としての曲の違いに気付いたり、Wキャストである平間壮一・廣野凌大のカラーの違いに期待を寄せたり、アンサンブルの迫力に感動したり。 親しみやすい文章から新藤がそわそわワクワクと制作現場を見ている様子が想像できるため、まるで一緒に稽古場を見て回っているような気分になれる。キャラクターや物語、曲の裏話も登場するほか、舞台を見ない方には馴染みのない用語や仕事についても、新藤らしい感性で捉え、とっつきやすい言葉で解説してくれているのも楽しい。まじめな話もおちゃめな発言もあり、くすっと笑いながら読める軽さが魅力だ。
また、最近では公式・キャストのSNSや稽古場密着などで裏側を見られることも増えたが、衣装合わせや顔合わせといった部分を知る機会はあまりない。ミュージシャンにとっても馴染みのない作業らしく、顔合わせやハラスメント講習といったことについても興味深げに様子を綴っている。
稽古場の様子
稽古場の様子
そのほか、本読みでは、自分が生み出した作品やキャラクターにキャスト陣の演技と歌唱がのり、想定していなかった色や深みが生まれたことへの感動や興奮が見え、初めてミュージカル制作に携わる新藤の視点から語られる現場の雰囲気や「こんなイメージだったけど、実際はこうなんだ」という驚きは、読む側にも新鮮な驚きや発見を与えてくれる。カンパニーへのリスペクト、作品が自分の手を離れて育っていくことへの期待が伝わり、読んでいるこちらも心が躍る。
ポルノグラフィティの活動や楽曲と絡めた話もあり、ミュージカルとロックバンドの曲作りやパフォーマンスの違い・共通点が見えるのも面白い。 新藤が書く詞は物語性のあるものが多く、ミュージカルとの親和性も高そうに感じるが、実際に作ってみることで初めて気づくポイント、芝居の中で展開する楽曲ならではの工夫があることなど、ミュージシャンから見た舞台作品の魅力や難しさが率直に語られている。
M0(オープニング)では新藤自身がギターを演奏(録音)。「せっかく制作に関わらせてもらっているので」と、タイトルコールなども入れているのだという。
さらに、楽曲のことだけではなく、新藤から見たキャスト・スタッフの印象や裏話、衣装やセット、振り付けやアクションについて、歌唱指導の福井小百合や演出の板垣恭一から学んだ内容まで幅広く言及。舞台を見る時に何気なく流してしまっている部分にも多くのプロフェッショナルによる工夫がなされていることに改めて気づかされる。
自らもミュージカルのファンで、「こういうのが見たい」という思いで『ヴァグラント』を作ったという新藤。 作り手とファン両方の視点から考えるミュージカル・舞台の魅力、好きな理由が丁寧に言語化されているため、ミュージカルファンであれば頷けるポイントも多いだろう。原案を書いた本人が持っていたキャラクターのイメージなどもさらっとだが書かれており、noteを読んで想像を膨らませた上で公演を観に行き、答え合わせをするのも楽しそうだ。
稽古場の様子
稽古場の様子
また、一部有料の記事にはなるが、稽古がはじまる前のビジュアル撮影や4月に行われた日比谷フェスティバルでの楽曲披露、物語の舞台である炭鉱の取材についてのnoteもある。本格的な稽古がスタートする前段階や、作品が生み出される流れを知りたい方は合わせてチェックするのもいいのではないだろうか。いずれの記事からもミュージカルや作品に対する愛情とカンパニーへのリスペクトが感じられ、「この人が携わり、このチームが作った作品なら面白いに違いない」という期待を抱かせてくれた。
GWに行われた日比谷フェスティバルでの楽曲披露からますます進化し、曲やキャラクターへの理解が刻一刻と深まっていることがわかる新藤の稽古場レポート。作品が完成していく流れがわかるだけでなく、新藤のミュージカルに対する愛情や熱意、キャストやクリエイター、スタッフの努力も伝わってくる。今後も続いていくというnoteを、公式が発信する情報やオリジナルポッドキャストと合わせてチェックしてみてほしい。
ミュージカル『ヴァグラント』は8月19日(土)より東京・明治座、9月15日(金)より大阪・新歌舞伎座にて上演される。

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