【ユプシロン インタビュー】
違うレンズを通した色の見え方を
楽しんでもらえたらいい
歌い手で、ボカロPで、バーチャルシンガーと、いくつも肩書を持つユプシロンが1stミニアルバム『ガタカ』を完成させた。ユプシロンは少年のような少女のような歌声が魅力で、性別は“なし”。その楽曲からもあらゆる壁を飛び越える、広く深いメッセージ性と音楽性を感じさせる。まさに期待の次世代型シンガーソングライターだ。
先天性を認めているんだけど、
否定している
“ガタカ”というタイトルはユプシロンさんのフェイバリットムービーに由来しているそうですが、全5曲が出来上がってから名づけたのか、それとも最初からそういうコンセプトで作り出したのか、どういう流れだったのでしょうか?
最初はミニアルバムの名前を考えずに作っていました。2曲できたあとぐらいにミニアルバムを出すという話になって、その時に“ガタカ”にしようと思ったので、あとの3曲は『ガタカ』に入れるものとして書きました。
最初の2曲というのは、すでにリリースされている「ZERO」と「シンデレラ」ですか?
そうです。
じゃあ、「ZERO」と「シンデレラ」に今作を“ガタカ”と名づけるヒントがあったということでしょうか?
特に「ZERO」にあって。「ZERO」で伝えていることを簡単に言ってしまうと、本当は正解なんかないからゼロに戻ろうっていうことで。僕はよくそういうテーマを掲げて作品にするんですけど…。「ZERO」はメジャーデビュー曲だったので、どんなMVにすればいいかすごく考えて、歌詞をそのままMVにするんじゃなく、MVはMVで…歌詞と連動はしているんだけど、ちょっと独立した世界観にしたいと思って、アニメーションMVを作ってもらったんです。昔から“生まれ持ったものはどこで決められるんだろう?”って考えたり、妄想しているのですが、その中の面白い妄想として、生まれる前にガチャとかくじで、背が高いとか、頭がいいとか、運動神経がいいとかを決めているんじゃないかと。それをMVで表現しました。なぜそういう妄想をしていたかっていうと、映画の『ガタカ』の影響があったからだと思います。生まれる前に親が遺伝子を選んで、そして子供が生まれてくる未来の話なんですよ。一方で「ZERO」では“そんなのどうでもいいんだよ”って言っていて。先天性を認めているんだけど、否定しているんです。そういう物語にできたらいいなって。
じゃあ、“ガタカ”と名づけたあとに制作した「パラドックス」「祭壇」「ユビキタス」には、そのテーマが影響していると?
そうですね。直接的に遺伝子の話をしているわけではないんですけど、そういうテーマのミニアルバムに入ることは意識して作りました。
そもそも名刺代わりとも言える1stミニアルバムを“ガタカ”と名づけた理由というのは?
今のこのタイミングで、この話をしたかったんです。デビューまでの3年間は半分趣味で活動してきたけど、メジャーデビューしたので趣味とは言えなくなった。今はその中間地点にいると思うんですよ。だから、もし自分ができることが歌うことや音楽を作ることだとしたら、それが先天的なものなのか後天的なものなのかを考えるのが、ちょうど今だという気がして。どんどん歌ったり音楽を作っていくと、後天的に得られた能力のほうが大きくなっていくと思うんですね。成長するはずなので(笑)。だから、ある意味まだ染まっていない、半分アマチュアの今だから、このテーマにしたかったんだと思います。
そもそも“ガタカ”ってヌクレオチドから来ている言葉じゃないですか。楽曲を聴いていると哲学や宗教からの影響も感じるし、“ユプシロン”というアーティスト名もギリシャ文字だし、さまざまな分野への造詣が深い方なんだなぁと思って。
ありがとうございます。“勉強しろ!”と言われたらしたくないんですけど(笑)、興味があるものに対してはのめり込むタイプなんです。恐竜にハマっていた時は、一日中ずっと恐竜図鑑を見ているような子供だったし。本がたくさんある家だったんですよ。漫画も数千冊あって、映画も小説もあって…それこそ『ガタカ』もあったし、ジブリ作品もディズニー作品もひと通りあって。子供の頃から、みんながやっているような流行のゲームをするより、ひとりで黙々と漫画を読んでいる時間のほうが長かったですね。でも、詳しくはないんですよ、DNAについてとか。専門的な人と比べたら浅い知識ですけど、興味があることは調べるっていう。“ガタカ”も映画から入って調べたら、ヌクレオチドのDNAの頭文字から来ていると知り、そこで初めて4つ(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)あるんだと知ったので。
そういう知識って理系の人じゃなきゃ探求することが少ないと思うんですが、ユプシロンさんは文系的なセンスも併せ持っていらっしゃるから興味深いんですよね。
まぁ、熱しやすく冷めやすいんで。“わぁ、遺伝子って面白い! 哲学って面白い!”って読み漁っていても、数日後には飽きたり(笑)。でも、いろんな作品を通して、いろんなことを知れたとは思っています。
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