SUSHIBOYS x 夜の本気ダンスが打ち出
した新たな特異点、ライブイベント『
Singularity』レポート

『Trigger Records presents Singularity #02』2023.7.21(FRI)大阪・ANIMA
7月21日(金)、大阪・ANIMAにて、インディーズレーベル・Trigger Recordsが主催するライブイベント『Singularity』が開催された。イベントタイトルの「シンギュラリティ」という言葉を辞書で調べると、一つであること、単独(性)、単一(性)、唯一性、〔普通ではない・奇妙な〕特異性、《数学・物理・天文》特異点とある。多くのアーティストのなかでも、特に独自の世界観を持ち、存在感のあるアーティスト同士をブッキングすることで、新しい特異点となれるようなイベントにすることをコンセプトとして開催されてている。
記念すべき大阪での開催、第1回目となるイベントにはエージェントにSUSHIBOYS、ゲストに夜の本気ダンス、オープニングアクトにはDraw4が登場。唯一無二の存在感を放つ三者三様のステージは観る者の感情にどんな引き金を仕掛けたのか。たっぷりと踊り、遊び明かした夜の模様をお伝えしたい。
Draw4
Draw4
オープニングアクトのDraw4は大阪・枚方出身、新進気鋭の存在として注目を集めるラッパーだ。「ボクとみんなの共通点はライブが大好きっていうこと」「ヒップホップシーンとは違う、ライブハウスで戦えることが嬉しい」と、ジャンルに関係なく楽しいライブにしようと、セルフライナーノーツのように自身の生い立ちをったナンバーや心打つリリックで観客を魅了。
Draw4
Draw4
SUSHIBOYS
SUSHIBOYS
初っ端からハイテンションにステージインしたSUSHIBOYSは「死んだら骨」からポジティブ全開なナンバーでフロアを沸かす。ここ数日の大阪は酷暑続きで気力も体力も沈みがちだったけれど、「みんな死んだら骨、日に日に骨に近くなる時が来るまで好きに楽しもう。平和が一番、かっこいいでしょ?」なんて言われたら、鬱々とした気分がスコンと抜け落ちて、もう楽しい!しかない。「良い感じだね、もっとイケるっしょ!」と「木にしない」へ。アッパーなビート、フリーキーに踊るサンテナ、そこに反するのは優しさに満ち溢れたリリック。なんともいえないギャップに心躍らされ、フロアの熱は高まるばかりだ。周りの視線なんて”気にしない”、楽しんだもん勝ち、そんなリリックが心に沁み、満面の笑みでステージを魅入る観客たち。
SUSHIBOYS
大阪でのライブは久しぶりだという彼ら。大声で騒いで踊れることにハイになりつつ、「最初に飛ばしすぎたんで、夏の曲を」と「ISCREM」へと繋ぐ。同曲はMVのセンスが最高なのだが、なんともいえない哀愁を感じるトラックに心がほっこり。かと思えば続く「LOUD」では、ファームハウスのスリリングでとんがったバースにフロアが熱狂。(ちなみにこの曲のMVもツッコミどころ満載で最高!) ポップなのにほどよい気だるさと皮肉さがこめられたリリック、中毒性満点のトラック、そしてファームハウスとサンテナのスプーキーなパフォーマンス。そしてDJ兼カメラマン兼マネージャー兼運転手兼スーパーバイザーのneo yoshikawa(役割多い!)のえぇ塩梅なバランスの取り方に、オーディエンスは大喜び。
SUSHIBOYS
日常生活を切り取った楽曲が多い彼らにとって時事ネタもお手の物で、某大型自動車販売店のニュースを紐づけつつ、「乗り物の曲を4曲続けたい」と「軽自動車」「ダンボルギーニ」「高速道路」と連投。リリックでクスっとさせつつ、ハイなスキルもきっちりと見せるニクい一面に観客は興奮しまくりで、ファームハウス&サンテナと一緒になって踊り、歌う。ライブ中盤、息ぴったりのフロアをさらに煽るのは「アヒルボート」。ライブではおなじみのアヒル型ゴムボート(けっこう巨大!)をフロアに投げ込み、お祭り気分は最高潮に。コール&レスポンスも”アヒル””ボート”とポップ&キャッチーで、彼らのライブが初見の観客もあっという間に巻き込んでしまう。
SUSHIBOYS
ライブは「OMG」でさらに最高潮へ。フォークソングの定番曲「オクラホマミキサー」をサンプリングしたトラックはポップなリズムが耳なじみ良すぎて、時間がアッという間に過ぎていく。ライブ後半は、7月19日にリリースしたばかりの新曲「白米」を披露。疾走感あるビートに乗せ、白く輝く白米を称える攻めのライムを構築しちゃう彼らの才能とセンスに思わず啞然としてしまう。終盤には「SANAGI」で改めて、卓越したセンスとストーリー性抜群なリリックを見せつける2人。「音楽に救われるぜ!」と、「DRUG」で気持ちを鼓舞するリリックとビートでフロアをハイジャンプで盛り上げ、ステージを締めくくった。
SUSHIBOYS
夜の本気ダンス
夜の本気ダンス
フロアの熱をさらに高調させるべく、夜の本気ダンスが1曲目に選んだのはキラーチューン「Crazy Dancer」。仕掛けてきた♪、そんな気配をビンビンに感じる攻めの姿勢に即座に反応したオーディエンスはバンドの音を全身に浴びようと、前のめり気味にフロア前方へと駆け寄る。鈴鹿秋斗(Dr)のタイトなビート、マイケル(Ba)のご機嫌なグルーヴがフロアの空気をビシっと整えていくのが伝わってくる。
今年で結成15周年を迎え、より一層脂がのったライブパフォーマンスで魅せてくれる彼ら。「寿司(SUSHIBOYS)が好き? 最近は回転寿司もいろんなネタがある。寿司だけじゃない、今日を楽しんで!」と、音楽のジャンルに関係なく、ライブを楽しんでほしいとメッセージを送り「LOVE CONNECTION」へ。自然と体が揺れるグッドメロディに、気持ち良い部分をずっと突っついてくる躍動感あふれるグルーヴ。もっともっとと、欲を出してくる観客のはつらつとした表情がとても良い。
夜の本気ダンス
「ロックバンドを楽しんでもらってますでしょうか?」、西田一紀(Gt)のギターリフが腰に響く「Movin’ 」。Creepy Nutsとのフィーチャリングで話題になった楽曲だが、ロックバンドとヒップホップの相性が良いことは一目瞭然で、確実にフロアを揺らし、沸かしてやるという気迫もビンビンに伝わってくる。かと思えば、「Wall Flower」では艶やかさが印象的なメロで、米田貴紀(Vo&Gt)の歌声をよりくっきりとした輪郭で聴かせていく。チルな雰囲気だけど、色香もあってしっかりと踊れる、さすが夜ダン!といった曲陣が続き、ライブ中盤ですでに満足度は高めに。
夜の本気ダンス
この日の会場、LiveHouseANIMAは心斎橋·アメリカ村のど真ん中にあるライブハウス。周辺にはヒップホップやロック、パンクなどジャンルレスに音楽が鳴り響くライブハウスが密集していて、大阪の音楽ラバーにとっては馴染みある場所。夜ダンメンバーは久しぶりに心斎橋·アメリカ村を訪れたらしく、あまりの賑やかさに驚きを隠せない様子。それでも「(音楽のジャンルに垣根がないように)自由に行き交って。ルールはない。勝手に踊って帰って」と、「Ain’ t no magic」へと繋ぐ。夜の匂いをプンプンとさせるダーティな照明の下、怪しげに唸るギター、荒ぶるバンドグルーヴに視線が奪われる。
夜の本気ダンス
彼らのライブにおいて踊り疲れるなんてことは当たり前にないんだけど、「VANDALIZE」「審美眼」とトドメを刺すようなダンスチューンの連投には参ってしまった。米田のハイなボーカル、切れ味抜群のグルーヴに観客はついていくのも必死だ。ライブ終盤には感度抜群、ループする四つ打ちサウンドが刺激的な「WHERE?」でフロアをよりハイに! 曲中盤からぐっとギアが高まる瞬間もたまらない! ラストは「GIVE&TAKE」できっちり締めたと思いきや、アンコールでは、この日一番の疾走感あるナンバー「TAKE MY HAND」で豪快にトドメをぶっ刺してステージは終了。
夜の本気ダンス
ヒップホップとロック、SUSHIBOYSと夜の本気ダンス。際立つ個性や存在感に感性が刺激された一夜だったが、彼らが今後どんな「Singularity」を打ち出してくるのか注目し続けたい。
取材・文=黒田奈保子 撮影=オガワタクヤ

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