林翔太&寺西拓人「なんでもできる」
「歌が抜群にうまい」 互いを称賛す
る二人が主演するブロードウェイ・ミ
ュージカル『ロジャース/ハート』再
演へ

ブロードウェイ・ミュージカル『ロジャース/ハート』が2023年9月30日(土)~10月18日(水)東京・有楽町よみうりホール、10月24日(火)~25日(水)金沢・北國新聞 赤羽ホール、10月28日(土)大阪・松下IMPホールにて、上演される。
本作は、作詞家オスカー・ハマースタインと組み『王様と私』や『サウンド・オブ・ミュージック』などの名作を手掛けた作曲家リチャード・ロジャースと、かつてロジャースがコンビを組んでいた作詞家ロレンツ・ハートとの物語。1920~40年代にかけて数々のスタンダード・ナンバーを世に送り出し、ブロードウェイを制覇したロジャース&ハート。彼らの半生を描き、97年にマイアミの劇場で初演された本作は、ロジャース&ハートを愛するオールド・ファンのみならず洒落た旋律と歌詞が若い観客の心をも捉え、以来、現在までアメリカ各地で上演されている。
2018年の日本版上演にあたり、上演台本・訳詞・演出・振付を手掛けさらには出演までこなした玉野和紀。オリジナルは55曲のナンバー、3時間越えのボリュームであった本作を32曲のナンバーに凝縮し、タップはもちろん、様々なジャンルのダンスを盛り込み、新たなブロードウェイ・ミュージカル『Rodgers/Hart(ロジャース/ハート)』を創り上げた。再演となる今回も上演台本・訳詞・演出・振付・出演の5役を務める。
初演ではロジャース役で初主演を務め、その後数々のミュージカルや舞台で俳優としての実力を発揮し続けている林翔太が自由奔放で天才的な作詞家ロレンツ・ハート役を演じる。そして、初演時は人気歌手のエディー・フォンティーン他4役で出演した寺西拓人が、20世紀のアメリカの作曲家の中でも有名なひとりに数えられる生真面目な作曲家リチャード・ロジャース役を務める。
SPICE編集部では、22年上演の『ダブル・トラブル』でも息の合った芝居を魅せた林と寺西に、本作へ懸ける意気込みを聞いた。
“ミュージカルモンスター”が大集合?!
ーー5年ぶりの再演で、今回はお2人ともそれぞれまた違った役での出演となります。今の率直な気持ちを教えてください。
林翔太(以下、林):てっきり同じ役をやると思っていたんですよ。だから他のキャストの情報も知らない段階で、てら(※寺西の愛称)は何をやるんだろう?矢田(悠裕)ちゃんもいるのかな?と思っていました。実際に蓋を開けてみたら、てらが僕がやっていた役をやることになって、僕が(前回は矢田さんが演じていた)ハートやることになって。
このタイミングで『ロジャース/ハート』を演じられるのは、すごく楽しみです。この初演後、僕もいろいろ舞台を経験してきたから、どう進化しているのか。それに出演者の方々も増えて、豪華すぎる方々に囲まれるので、その点も楽しみですね!
寺西拓人(以下、寺西):いや、林くんの仰る通りでございます。今回、役が変わることにびっくりしました。勝手なイメージですけど、林くんはロジャース役にハマっていたし、性格的にも逆な感じがしませんか?すごく新鮮です。
それに共演者の皆さま。“ミュージカルモンスター”が大集合じゃないですか(笑)。その中で主演をやらせてもらうことはとても光栄なことです。(演出の)玉野(和紀)さんとも仲良くできたらいいなと思います!
ーー初演の記憶も辿りながら、今回演じられる役についてはいかがでしょう?どんなイメージを持っていますか?
林:僕の演じるハートは、自由奔放な役。でも傷つきやすく、結構繊細な一面も持っている。そんなギャップがあるなと思っています。
初演のとき、僕は本当にミュージカルの右も左も分からないような状態でやらせてもらって。もともとの性格的にも「きちんとやりたい」タイプだったので、(前回演じた)ロジャースはハマっていたと思うんです。でもあれからいろいろ経験させてもらって、それこそコメディなども挑戦して、いい意味で「適当にやる」ことも覚えた(笑)。だから、今回、ハートを演じることについて、そんなに不安はないかな。楽しみにしてますね、演じることを。
寺西:5年前なので、正直記憶は鮮明ではないんですけど……台本を読んでいると、ロジャースのセリフは林くんの声で再生されます(笑)。とはいえ、今の僕がやるとしたら、どんなロジャースになるのか。自分自身楽しみにしています。
ロジャースとハートは、KinKi Kidsの光一くんと剛くんみたいだなと思うんです。分かります?(笑)。僕はハートや剛くんのように、発想力がある天才気質タイプではないので、そういう意味だと役に合っているのかなと思っています。
『ダブル・トラブル』を経験したからこそ、「無敵」!
ーー前回よりキャストも増え、曲も増えるそうですね。ミュージカル『ダブル・トラブル』を経験されているお二人ならば、怖いものはないですかね?(笑)
林:そうですね。『ダブル・トラブル』やっている僕らだからね(笑)。
寺西:無敵ですよ!(笑)
林:実際に『ダブル・トラブル』のときも、「これを経験したら、もう怖いものないよね」と言いながらやっていたんですよ(笑)。
寺西:今回、曲数は増えても、人も増えていますからね。前回僕はいろいろな役をやっていたので、そういう面では今回、1つの役に集中できるので、「楽」かもしれません。前に玉野さんにお会いした時も(玉野さんのモノマネをしながら)「ちょっと、楽になってるかな〜」と仰ってました。
ーー玉野さんとはビジュアル撮影のときにお話しされたそうですね。
林:はい。それに玉野さんは『ダブル・トラブル』を観に来てくれて。そのときに「心配はない」と言ってくれたんです。
寺西:え、マジですか!俺、言われてないんですけど!俺だけ心配されている?(笑)
林:いや、そんなことないでしょう(笑)。当時はタップも全然できなくて、かなり苦労しましたけど、今回はタップもやるのが楽しみですね。
寺西:僕はビジュアル撮影のときに細かく話したわけではないんですが、(再び玉野さんのモノマネをしながら)「あー、大変だよ。 キャストも増えてさ、曲も増えて、本も書かなきゃ……」みたいな話は聞きましたよ(笑)。悩んでいました。
>初演時の思い出、互いの印象は?
「ミュージカル俳優としての基礎を作ってもらった」
ーー改めて初演のときのことを振り返っていただきたいのですが、役者として一番の収穫になったなと思ったことは?
林:僕は初めてづくしだったんです。きちんと主演をやらせてもらうのも、ミュージカルにがっつり挑戦させてもらうのも。今までの歌い方とも違って、歌をセリフとしてちゃんと届けなくてはいけないから、悩んで悩んで……玉野さんにいろいろご指導していただきました。
それにピアノ演奏も、タップも初めてでした。あのときの『ロジャース/ハート』の経験がなかったら、その先のミュージカルもなかっただろうなと思います。全部が収穫ですし、ミュージカル俳優としての基礎を作っていただいたなと思います。
寺西:僕が印象に残っているのは、ウェイターの役。ウェイターは台本だけ読むと、ただ接客するだけの役なんですね。その通りに稽古場でやったら、玉野さんに「もうつまんなーい!」と言われて(笑)。「せっかく出るんだったら、なんかやりなよ」と言われたんです。
最初は玉野さんからいただいたアイデア通りにやっていたんですけど、途中から楽しくなっちゃって、 全然違うことを本番でやって。玉野さんに怒られるかな……と思っていたんですが、玉野さんの知り合いの方が本番を観に来てくださって、「お盆を使って遊ぶの、玉野さん、さすがっすね!」と仰ったときに、玉野さんは「いや、(寺西さんが)勝手にやっているんです」と返していて。そのときに、やったと思いました。舞台の上では無茶苦茶にやっていいんだと学んだんです。
林:今回は誰がやるんだろう?
寺西:まさくん(※中河内雅貴)じゃないですか?分からないけど。
林:楽しみだな。
ーー前回は林さんが挑戦されたピアノ。今回は寺西さんが挑戦することに?
寺西:見せ方でうまいこといかないかな〜(笑)。もちろん頑張りますけどね。
林:最初が怖いのよ。真っ暗の中で始まるから。でも、大丈夫。てらは絶対やれちゃうよ。
寺西:頑張ります(笑)。ピアノ以外の挑戦をいうと、前回は一つ一つの役をそこまで深掘りしなくてもいいというか、むしろ瞬発力みたいなのが大事だったんですが、今回は1人の人生を生きるので、その点は挑戦かも。実在した人物なので、芝居に重きを置かないといけない気がしております。
ーー林さん自身はどんな点が挑戦になりますか?
林:ロジャースとハートは全然キャラクターが違うので、ハートの自由奔放な感じをどう出せるか。挑戦というより、単純に楽しみです。前回は矢田ちゃんが演じていた役なので、どういう風に変えながら、自分の色に染められるか。
……でも今回はピアノがないというだけで、心に余裕が生まれます(笑)。初演のとき、僕が必死に練習しているのに、てらや矢田ちゃんが「楽しんでる?」と茶化しに来て全然関係のない曲を弾きに来て……!僕も必死だったので、ピアノを楽しむところまで行けてなかったんですよ。
お互いについて「なんでもできる」「歌が抜群にうまい」
ーーお二人とも柔らかい印象なのですが、お互いに俳優としてギラっとしたものを感じる瞬間はありますか?
林:てらは本当になんでもできる。
寺西:誰のことを言っているんですか!(笑)
林:いや、ほんとに。コメディチックな役からちゃんと演劇的な役まで、 本当にどんな役でもできちゃうから、すごい。特に『ダブル・トラブル』を一緒にやったときは、発想がコメディ向きだなと思いました。いろいろなアイデアを出してきて、稽古場でもちゃんと毎回違うことで笑いをとっていたし、もちろん本番に入ってからもちょこちょこ変えてきて。
寺西:確かに稽古のときはいろいろやろうと思っていましたよ。でもね『ダブル・トラブル』はドタバタコメディだから、スタッフさんも演出家さんも僕らがやりやすい雰囲気を作ってくれるんですよ。あんまり面白くなかったとしても笑ってくれる。だから、チャレンジできたんですけど、本番に入って「あれ?稽古場ではあんなにウケていたのに!違うじゃん!」ということはありました(笑)。
……僕から見た林くん。さっきなんでもできると言ってくれましたけど、それこそ林くんもなんでもできるんです。特に歌。『ロジャース/ハート』の初演でも『ダブル・トラブル』でも思いましたけど、歌が抜群にうまいんですわ。ミュージカルは、どんなに芝居ができようが、踊りがうまかろうが、やはり歌がうまいことが最強だと思うんです。『ダブル・トラブル』から1年ぐらい経っていますけど、さらに上手くなっているのでは?と思います。
林:そういう自分もうまいじゃん!(笑)。褒めてくれるのは嬉しいですけど、自分で自分がうまいと思わないですから。
ーーお互いをリスペクトし合っていることが伝わりますが、相手に対してあえて「ここは直した方がいいよ!」と思うポイントだったり、「これはどういうこと?」という謎の生態だったりはございますか?
林:えー、なんかあるかなぁ?(考え込む)
寺西:いや、(林さんは)先輩っすからね。……でも僕思うのが、できないふりするんですよ。例えば、タップ。一緒に練習をスタートさせて、全然できないできない言うのに、次の日は完璧にこなしてしまうんです。何なら僕の方がちょっと早めに始めていたのに、寝て起きたら、林くんにずいぶん先を越されているみたいな!(笑)「テスト前は勉強してないって言ったじゃん!」というタイプなんです。いやいや、俺も頑張れよという話なんですけど(笑)。
林:……てらについて直した方がいいことはないかなぁ。絞り出したいんですけど、全然ない気がする。
寺西:マジですか。じゃあ、僕も「林くんについてはないです!」としておきます……(笑)。
ーー改めて今回の『ロジャース/ハート』の見どころを教えてください。
林:見どころはたくさんありますけど、このメンバーを見ることができるだけで見どころだと思います。“ミュージカルモンスター”ぞろいなので、絶対楽しいですよ。それに今回、曲が追加されていることもありますけど、初めてご覧になる方はもちろん、初演をご覧になって再演を観てくださる人たちも「あ、前回とこう変わっているな」とか「ここ追加になっているな」などと楽しむことができると思います。
個人的なことで言うと、 てらの『マイ・ロマンス』が聞けることが嬉しいです。
寺西:頑張ります。今回は楽曲が増えたといいますが、もともと楽曲が多い作品だったので、より目まぐるしくナンバーを披露していくんでしょうね。この時代の曲っておしゃれですし、それを“ミュージカルモンスター”たちが歌ってくれるなんて。僕も出演はしていますけど(笑)、個人的にそこが楽しみです!
林:確かにおしゃれな曲が多いよね。「ここで半音なんだ!?」みたいね(笑)。そこをバチっと決めれたら、よりおしゃれな曲として届けられるんだろうなぁ。
ーーようやくコロナ禍が明けてきましたが、このコロナ禍で舞台に対する思いは変わりましたか?コロナ禍で感じたことを教えてください。
林:コロナ禍になったばかりのときは、一席飛ばしにしたりして、客席が半分だったじゃないですか。そんな景色を経て、久しぶりに満席の客席を見たときに「あぁ、こうだったな」と思い出して、改めてお客さんがそこにいてくれるありがたみをすごく感じました。
劇場に来るのも大変だっただろうし、ある程度のリスクを覚悟するじゃないですか。その中でも演劇を観にいくということを選んでくれた。いつも以上に感謝の気持ちいっぱいで過ごしていました。
寺西:一時期は飛沫感染対策のためにソーシャルディスタンスをとって芝居をせざるを得なかった時期もあって……そんなのお芝居できないじゃん!と思っていましたけど、そういう規制も徐々に緩和されてきましたよね。林くんが言っていたことと同じようなことなんですけど、お客さんが劇場に来てくれることも、舞台上でお芝居ができることも、当たり前ではないんだなと感じられたことが大きな収穫でした。
ヘアメイク:国府田雅子(b.sun)
スタイリスト:嶋岡 隆(Office Shimarl)
衣裳協力:【林】チェックシャツ¥41,800【寺西】シャツ¥41,250(ともに EYCK / info@eyck-tokyo.jp)【林】カットソー¥27,280(guernika/03-5784-3474)【寺西】パンツ¥16,990(UNFILO/03-5476-5811)

取材・文・撮影=五月女菜穂

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