TOWA TEI

TOWA TEI

【TOWA TEI インタビュー】
“まだ聴いたことがない
音を聴きたい”という
欲が非常に強い

2024年のソロデビュー30周年を目前にTOWA TEIの動きが活発だ。前作『LP』(2021年発表)の続編であるアルバム『TOUCH』と、自身初の全編インストアルバム『ZOUNDTRACKS』を2枚同時発売した。両作ともにさまざまなサウンドがこれまで以上に奔放に広がる、TOWA TEIにしか成し得ない音世界の構築が見事。こんな傑作は世界中を探しても間違いなくここにしかない!

聴いたことがないレコードを聴いて、
聴いたことがないレコードを作る

2作同時リリースのニューアルバム『TOUCH』『ZOUNDTRACKS』を聴かせていただきました。ともに圧倒的に面白かったです。

それは良かった。昨日も久々に親友と話していて、テスト版を聴かせたんですけど、“何が面白かった?”って訊いたら、彼は音楽制作に関しては素人なんだけど、レコードコレクターというか、かなりレコードを買う人で、その親友が言うには“サンプリングの音をどこから持ってきているのか分からない。聴いたことがない音が次から次へ出ているんだけど、音像がすごいタイト”と。“粒が立ってる”という言い方をしていたかな? そういうふうに結構専門的に言われちゃったんですけど、自分は正直言って、本当に世の中との接点がなく、今のビジネスとして作られている音楽はほぼ聴いていないから、チャートとかも分かんないんですよ。レコード…つまり過去の録音物で、昨年のものだったり50年前のものだったりを聴くんですが、自宅に郵便とか宅配便で届いたレコードを開けて、拭いてターンテーブルに乗せて…そのタッチという意味も含めて“TOUCH”というタイトルなんですけども、さまざまレコードを聴く中で、やはり“まだ聴いたことがない音を聴きたい”という欲が非常に強くて。

まさにそれです。『TOUCH』も『ZOUNDTRACKS』も他では聴いたことがない音だし、しかもそれが聴いたことがないタイミングで出てくる。予測不能なんですよ。以前の取材でも申し上げたことですが、“これはどこに連れて行ってくれるのか?”と聴いていて楽しいんですよね。

それは良かった。だから、自発的には聴いていないけど、たまに街へ行くと“相変わらずあまりにも予定調和な音楽をやっている人がいっぱいいるんだな”っていうことがあるじゃないですか。まぁ、自分もDJでそういうものもかけたりするんですけれども、まだ聴いたことがない、いろんな国のいろんな時代の音楽を自分なりに探して、自分なりに引っかかった音をサンプリングして、それらを紡ぎ合わせるわけですよ。コラージュですよね。コラージュだけではなくて、そこにはメロディーを書いたりとか削ったりっていう作業もあって。僕的には絵を描くとかっていうよりは、彫刻をやっているイメージにすごい近いんですよ。最初はそこら辺にあるレコードを使って、バッと大きなかたちを作って、“はい、今日はおしまい”って寝ちゃうんですけど、次の日にちょっと細くしてみたり、また肉づけしたりとかっていう作業をずっとやっていて。

ざっくりと作ったものを削ったり足したりしてく感じなんですね。

そうですね。削ったり、足したり、色をつけたりですよね。やっぱり聴いたことがないレコードを聴いて、聴いたことがないレコードを作る…そこですよね。あとは、以前にも増して、他人の作る音楽に興味がなくなったという。

自分自身の頭の中にだけあるものを作っていきたいという気持ちが、より強くなっているという。

そうです。あと、スケッチはしないので、さっきおっしゃっていたけど、自分でも予測不能で作っているプロセスが一番楽しくて。最終形はぼんやりと見えているんだけど、やっていくうちにまったくかたちを変えていったりして、そのプロセスが面白いという。

具体例を挙げますと、『TOUCH』の「HAND HABBIT」。これはメインのメロディーは中国民謡風でありつつ、そこにインドネシアの楽器のリンリックが重なって、その上でアーバンな雰囲気の管楽器が鳴っています。これらが合わさった音楽は他のどこにもないでしょうね。

うん。でも、“これはどこにもないだろう”って奇をてらって作っているんじゃなくて、感覚的に…これもさっき言ったけど、僕はすでに存在しているもの、フォーマット、フォーメーションができている音楽から離れようっていう志があるんで、自分の中ではそれがナチュラルなことなんですよ。だから、例えばスチールドラムをずっと聴いている時期があって、それがアフリカの音楽を聴く時期になったと思ったら、急にインドネシアの音楽を聴くようになったりとか。そういうことが1週間続いたり…特に流行病の3年間、自宅にいることが圧倒的に増えたし、人とも会わなくなったんで、それをやっていただけなんです。カッコつけるわけじゃなくて、人様がどう思うかという評価は気にせずに。ただ、ある程度、音楽を聴いている人も、そんなに聴いていない人も面白がれるとは思うので、自分も面白がって作り続けられるというか。やっぱり途中で挫折しちゃう曲も多いんですよ。“これはありきたりだな”とか“あんまり面白く転ばないな”って。だから、“いかに転ばすか?”というか、予測不能は大事ですね。
TOWA TEI
アルバム『TOUCH』
アルバム『ZOUNDTRACKS』

OKMusic編集部

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