BUCK-TICK、メンバーの故郷・群馬で
デビュー35周年を締めくくり 群馬音
楽センター公演オフィシャルレポート
が到着

BUCK-TICKが、2023年9月17日(日)に群馬音楽センターで行った『BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- FINALO』のオフィシャルレポートが到着した。

2022年9月にメジャーデビュー35周年を迎えたBUCK-TICKは、今年4月からアルバム『異空 -IZORA-』を引っ提げたホールツアー『BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA-』で全国を巡り、その最終地点として彼らの故郷である群馬の空の下へ帰ってきた。9月17日・18日に群馬音楽センターで開催する追加公演「BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- FINALO」で、35周年のアニバーサリーイヤーを締め括る。7月の東京ガーデンシアター公演終演後に飛び込んできたそのニュースは、ファンにとっても特別なものだった。
9月17日、JR高崎駅に降り立つと、この2公演のために作成されたポスターが出迎えてくれた。彼らの故郷の空気を吸いながら、駅から群馬音楽センターへと続く道を歩く。この日の高崎の空は快晴。会場の前に到着すると、メンバー5人の等身大パネルが展示されていた。二度のお出迎えに、自ずとテンションが上がる。1988年の『SEVENTH HEAVEN TOUR』以来、彼らが何度も公演を重ねてきた群馬音楽センターは1961年開館だから、ヤガミ・トール(Dr)の一つ先輩になる。そのモダンな造りは、『異空 -IZORA-』の世界によく合いそうだ。
不穏な世界情勢や多様化する社会の裏にある歪み、そしてそこに生きる人々の営みや感情を映したアルバム『異空 -IZORA-』のストーリーは、『BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA-』で回を重ねるごとに深化し、最終日の東京ガーデンシアターでの圧倒的なパフォーマンスにより、一度完結を迎えていたと思う。この『BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- FINALO』では、アルバム収録曲の置き位置はそのままに、既存曲を変更したり加えたりすることで、それまでとはまた違う手触りと心象を残した。
SEの「QUANTUM I」が流れた後、ステージ上手から今井寿(Gt)を先頭に、ヤガミ、樋口豊(Ba)、星野英彦(Gt)と順に登場すると、大きな歓声と拍手があがった。4人が定位置につき楽器を手にする間、観客は逸る気持ちを抑えられない様子で、拍手は手拍子へと変わっていた。その音が最高潮に達した頃、センターに櫻井敦司(Vo)が姿を見せた。太腿を露にした黒い衣装に、黒いハットと黒いマラボー姿。一曲目「SCARECROW」の背景に映る案山子のシルエットとシンクロしているようでもあるし、歌詞に出てくる案山子を襲う鴉のようでもある。楽器陣の4人が白い衣装で揃えてきたので、その姿はとりわけ異質に見えた。行き場のない現実に膨らんでいく切迫感を、サビからテンポアップしてギリギリのところまで追い込んでいく。緊張感そのままにインダストリアルナンバー「ワルキューレの騎行」を響かせた後、“ガッガッガガッ”と今井が鳴らしたピックスクラッチを合図に「ICONOCLASM」へ。ツアーでは入っていなかったライヴ定番曲に歓声があがった。さらに中盤の“Five for Japanese Babies”のところを、櫻井が“Five for Takasaki Babies”と歌詞を変えて歌ったものだから、会場の熱もヒートアップ。続く「残骸」もこのツアーでは初出。死と隣り合わせで在りながら、パワフルに命を燃やすこのロックチューンは、『異空 -IZORA-』の世界観に通ずるものがあると感じた。
トーチの炎が揺らめく中、エキゾチックなパーカッションの音で空気を一変したのは「愛のハレム」。甘美なサウンドに、右手に持ったティンシャを揺らしながら、憂いのある声で情感豊かに歌う櫻井のボーカルが映えた。「さよならシェルター destroy and regenerate-Mix」では、我が子をシェルターに送り、葛藤を抱えながら銃を構える兵士を演じる櫻井のパフォーマンスが毎回注目を集めているのだが、この日は銃に見立てたマイクスタンドをそっと床に置いていたのが印象的だった。ツアーでは投げ捨てるようなパフォーマンスを何度か観ていたのだが、その日その瞬間の彼の感情がこうしてパフォーマンスに反映されるのは観ていて面白い。「お父さん、お母さん、花束をどうぞ」と、キャッチーなメロディで戦時下の生々しさを子供目線で歌う「Campanella 花束を君に」を披露。「THE SEASIDE STORY」「人魚 -mermaid-」と2曲の人魚ソングから、サンバのリズムでビーチ感を受け継いだ「無限 LOOP -LEAP-」で幻想的なサウンドスケープを描いた後、短いMCタイムへ。
たとえば過去に上毛かるたの言葉を使ったメンバー紹介をしてみたり、地元では何か特別なことがあるんじゃないかと期待する観客の思いが伝わったのか、「いつも高崎で何かあるんじゃないかって……何もないっすよ」とかわす櫻井。「地元でメンバーに会えた。それぐらいでしょうか」と語ると、「あの子が待ってくれている。だからステージへ行くのさ」と、バンド初期のエピソードを歌詞に盛り込んだ「Boogie Woogie」、ブルージーな「野良猫ブルー」、シャッフルビートの「THE FALLING DOWN」と同じ『創世記』を軸とした世界観を持つ「天使は誰だ」を続けると、いよいよ本編のクライマックスへ。戦争という重いテーマを軽快なメロディに乗せて歌う「太陽とイカロス」。“悲シクハ無イ コレデ自由ダ”と、背景に広がる真っ赤な太陽に向けて、両手を広げて羽ばたく姿が美しくて哀しかった。そして、その先にある精神世界へと導いていく「die」へ。大きな曼荼羅の映像と没入的なサウンド、全体を包み込むような光の中で、ある種の恍惚感を味わった。
ヤガミのドラムソロから始まったアンコールは、35周年の思いを込めて“WE LOVE ALL 抱きしめたい”とアップチューンの「CLIMAX TOGETHER」で盛り上げると、「Cuba Libre」「Coyote」とスパニッシュ調のナンバーを続け、「ヒズミ」へ。センターに火を灯したキャンドルと椅子を置き、腰を掛けた櫻井の独演が始まると、フロアの空気も櫻井の表情も変化する。眼光鋭く悲痛な表情で歌う櫻井の横で、ピョンピョンと「ジェンガ」のステップを踏む今井のアンバランスなパフォーマンスが物悲しさを倍増させた。命咲かせよと歌う「名も無きわたし」では、ステージいっぱいに花びらが舞う映像が広がり花吹雪が舞う会場の中、クリアーなアンサンブルと力強いボーカルが、陶酔感を与えながらカタルシスへと導いていった。
ツアーでは行なわれなかったWアンコールで演奏されたのは「New World」。この公演で35周年イヤーを締めくくり、新章へと突入するBUCK-TICKにふさわしい光溢れるナンバーは、彼らの進む未来を明るく照らす。それと同時に、問いかけてくるのだ。戦闘機に乗って太陽を目指した「太陽とイカロス」の主人公が、“今”の私たちに託してくれたこの世界は、はたして美しいと言えるだろうか。胸を張れる未来になっているだろうか。コンサートの余韻とともに、そんな問いかけが数日経った今でも胸を去来する。過去から現在、そして未来へと繋げていくもの、守っていきたいもの。『異空 -IZORA-』が表現したメッセージは、このツアーを通して、しっかりとこの胸に届けられたと思う。
終演後、外に出た観客に嬉しいサプライズが用意されていた。会場の外観に映し出されたプロジェクションマッピングで、世界各国の言葉で“ありがとう”のメッセージや、メンバー直筆のメッセージが流れた。なんたるホスピタリティ。その心遣いに感嘆の声があがった。
生配信された翌日の18日は、関係者をシャットアウトし、メンバーとファンだけで濃密な時間を共有するスペシャルな公演となった。その模様は9月26日(月)23:59まで公開されているアーカイブ配信で(配信プラットフォームによっては9月25日(月)23:59まで)ぜひ楽しんでほしい。終演後に配布された号外には、BUCK-TICKの未来が記されていた。12月29日(金)に日本武道館で『THE DAY IN QUESTION 2023』を開催すること、そしてデビュー35周年を記念した映画を製作することが発表された。アニバーサリーイヤーを休む暇なく駆け抜けたメンバーがどんなふうに描かれるのか、その完成を心待ちにしている。

撮影:山内洋枝、青木早霞

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