結成10周年を迎えた、The Rev Saxop
hone Quartet 記念企画『週刊REV』
への思いをメンバー同士、リレー形式
でインタビュー

上野耕平、宮越悠貴、都築惇、田中奏一朗の4人から成るサクソフォン四重奏団「The Rev Saxophone Quartet」が、2023年で結成10周年を迎えた。
それを記念して、10周年の「10」にかけて10月に記念企画『週刊REV』を開催。毎週金曜日に、メンバーがひとりずつ異なるプログラムでリサイタルを実施するものだ。
今回は、その企画のみどころを引き出すべく、メンバー同士でリレー形式のインタビューを実施。普段は舞台上でともに演奏し気心知れた彼らで、記念企画の楽しみ方についてざっくばらんに語り合ってもらった。

メンバーそれぞれの特色を打ち出したソロ公演を4週間かけて毎週行う『週刊REV』
宮越:まず、『週刊REV』は4週間に渡って、メンバーそれぞれがソロのコンサートを行うという10周年企画です。10月のすべての週をスペシャルウィークにしていきたいと思っています。
普段はカルテットで演奏しているため、グループとして聴いていただくことが多いですが、今回はあえて一人ひとりをクローズアップ。そして、12月公演に全員が集合するとどういう演奏が生まれるのか……。それをみなさんに体験していただける企画です。
上野:それぞれが特色あるコンセプトで公演を実施する一方で、全員共通で演奏する作品もあります。無伴奏のサクソフォン作品である、ボノーの「ワルツ形式のカプリス」です。
田中:それぞれの比較を楽しんでいただくためにも、前週に行われたメンバーの演奏が聴けるQRコードを、それぞれの公演でお配りする予定です。たとえば、宮越号の日に、その前の週に披露された上野さんの演奏が聴けるわけです。
CDはともかく、同じ作品を聴き比べする機会はライブ体験においてなかなかないので、きっと楽しんでいただけると思います。
5種のサクソフォンが登場。音色の違いを楽しんでほしい(上野←田中)
田中:では、ここからメンバー同士でインタビューを行います。まずは僕から上野さんに質問しますね。「上野号」のみどころを教えてください。
上野:ソプラニーノとソプラノ、アルト、テナー、バリトンの5種類のサクソフォンが一気に揃うのが目玉だと思います。
田中:これまで「1曲の中で5本を持ち替える」というスタイルはありましたが、公演を通して持ち替えながら演奏するのは初めてですよね。
上野:もちろん、そうです。
(左から)上野耕平、田中奏一朗
田中:中でもソプラニーノサクソフォンは、なかなかソロで演奏される機会が少ないですよね。どんな作品を演奏するのでしょうか?
上野:作曲家の旭井翔一さんに、今回のために「Eclogue」という作品を書き下ろしていただきました。世界初演です。ピアノとの絡みが美しく、非常に良い作品ですよ。
ソプラニーノサクソフォンとピアノのデュオって、なかなか聴く機会がないじゃないですか。そこはさすがの旭井さん、音色のチョイスが本当に素晴らしいんです。高橋優介くんという素晴らしいピアニストをお呼びしているので、楽しんでいただけると思います。
田中:ソプラニーノサクソフォンは、ソプラノサクソフォンより一回り小さくて、さらに高い音が出ますよね。普段、上野さんはソプラノサクソフォンを担当することが多いですが、ソプラニーノサクソフォンと比較していかがでしょうか。
上野:両者は音域が違うのはもちろん、音色もまったく異なります。ソプラニーノサクソフォンの方が、太陽に近いイメージ。言葉にするのが難しいので、これは実際に聴いていただきたいですね。
田中:5種類のサクソフォンの中で、上野さんと親和性が高いのはどれですか?
上野:バリトンサクソフォンです。
田中:その理由は?
上野:なんとなく(笑)。吹いていて心地良いんだよね。
(左から)上野耕平、田中奏一朗
田中:上野さんのバリトンサクソフォンのソロを聴く機会はなかなかないので、注目したいですね。最後に、来てくださる皆さんにメッセージをお願いします。
上野:TOKYO FM ホールは、演奏者と聴衆の距離が近いのですが、天井は高くてよく音が響くんです。その分、5種類のサクソフォンの響きやキャラクターの違いが間近でわかると思います。なかなか聴く機会の少ないソプラニーノサクソフォンの作品も含めて、ぜひお楽しみにしていただきたいです。
自分だけでなくRevの歴史も辿ることのできる「宮越号」(宮越←上野)
上野:では、次に僕から宮越さんに話を伺います。今回の公演、お気持ちはいかがでしょうか。
宮越:ついに、一生やることがないと思っていたソロのコンサートをやらざるを得ない状況になりましたね……。
上野:だって、「リサイタルやらないの?」って聞かれるたびに「やらん!」としか言わなかったもんね。
宮越:周りでは「大学を卒業したらとりあえずリサイタルをやる」という流れがありましたが、あえてそれに乗らないと決めていたんです。自分だからこそできることは何なのか、あまりわかっていなかったというか。
(左から)宮越悠貴、上野耕平
上野:ということは、「自分だからこそできること」が見つかったということでしょうか。
宮越:そうですね。この企画が決まってから何をやろうかと考え、「自分の歴史を追う」をテーマにしました。これまでの歩みを思い返すと、さまざまな作品があって、そしてそこにはRevのメンバーとの出会いと思い出が詰まっているわけで。「この作品をやっていたときは、このメンバーと出会ったな」と蘇ってくるんです。
上野:素敵です。宮越とRevの歴史がわかるわけですね。
宮越:音楽を一緒にやっている人との出会いと、作品との出会いは、やっぱり結びついていると思うんです。それを辿るのが、今回の大きなテーマです。
上野:僕も聴くのが楽しみだな。
宮越:中学校のときに初めて上野さんの演奏を聴いたとき、クレストンのサクソフォンソナタを吹いていたんですが、今回はそれも取り上げます。
上野:ということは、当時の制服を着て……?
宮越:いやいや(笑)。でも、当時の写真をパンフレットに掲載する予定です。
上野:ちなみに、吹くのはサクソフォンだけではないですよね。
宮越:はい、その通りです。最近クラリネットやフルートも演奏しているので、それらも登場する新曲を書き下ろしてもらい、披露します。
(左から)宮越悠貴、上野耕平
上野:3本を持ち替えるんですね。
宮越:そうです。ピアノとのデュオなのですが、なかなかないタイプの作品ではないかと思います。
上野:そうですよね。そもそも、そこまでいろんな楽器を吹ける人が少ないから。
宮越:怖さもありますが、新たな挑戦だとも思っています。日本を代表するジャズサクソフォンプレイヤーのMALTAさんにも作品を書き下ろしていただいたり、僕の歴史の中で外すことのできないAKIマツモトさんをピアニストに迎えたりと、僕のすべてがわかる時間になると思います。
上野:まさに、「宮越号」ですね。
宮越:他では聴けないコンサートにもなっていると思います。ぜひお越しください。
大好きなオーボエの作品をサクソフォンで(都築←宮越)
宮越:次に、僕から都築さんに伺います。「都築号」のコンセプトを教えてください。
都築:ポイントは、「オーボエ」です。僕、オーボエがすごく好きなんですよね。だから今回は、一部をのぞいてほとんどをオーボエ作品の編曲版でプログラムを組みました。
宮越:オーボエのどういうところが好きなんですか?
都築:単純に音色はもちろんですが、「この作曲家、オーボエの音色が好きなんだろうな」と感じさせる作品も好きです。ソプラノとアルトのサクソフォンを使って、3人の弦楽器奏者と一緒に室内楽形式で演奏します。あと、今回は普段担当しているテナーサクソフォンは演奏しません。

(左から)都築惇、宮越悠貴

宮越:なるほど。今回はソプラノとアルトで、別のサクソフォンの魅力を引き出すんですね。弦楽器の方と一緒に演奏したことはありますか?
都築:ピアノとヴァイオリンのトリオで演奏したことはありますが、それ以外はなかなかありませんでした。
今回はモーツァルトとブリテンの作品を取り上げますが、どれも本当に素晴らしくて。ソロのリサイタルでありつつ、室内楽的なアプローチを聴いていただきたいと思っています。
宮越:都築さんがソロで、弦楽器奏者がバックで……というわけではなさそうですね。
都築:そうですね。僕と弦楽器の皆さんが一緒に並んで演奏するパターンが多いです。ただ、無伴奏作品も演奏するのでソリスティックな場面も見せられるかなと。
宮越:では、今回演奏する中で最もイチオシの作品をプレゼンしてください。
都築:やっぱり、それはモーツァルトのオーボエ四重奏曲ですね。たとえばピアノを習い始めると、大抵はモーツァルトの曲を通るじゃないですか。でも、サクソフォンを選んでしまったからには、自分で意識しなければモーツァルトの作品に関わることはあまりなくて。
とはいえ音楽をやっている以上、モーツァルトは憧れの作曲家ですし、オーボエ四重奏曲はずっと演奏してみたい作品でもありました。ピアノ伴奏で演奏したことはありますが、弦楽器の皆さんと一緒に演奏できるのが楽しみです。
宮越:弦楽器とサクソフォンの室内楽は聴く機会が少ないので、貴重ですね。
都築:正直、サクソフォンならではの「速い!」「大きい!」「すごい!」みたいなアプローチから離れたい気持ちも大きくて……(笑)。美しい音楽を聴いていただきたいなって。

(左から)都築惇、宮越悠貴

宮越:今回は、そんな音楽の魅力を最大限に引き出すんですね。「俺、俺」という感じではなく。
都築:いや、「俺、俺」というところを見せつつ(笑)。今回は1時間程度のコンサートで、長いようで短い時間ではありますが、サクソフォンの魅力、作品の魅力、私の魅力のすべてをお見せしたいと思います。ホールの響きも相まって、すごく良いコンサートになるのではないかと想像しています。ぜひお越しください。
バリトン一本で、無伴奏作品を貫く(田中←都築)
都築:今回のテーマはバッハでしょうか。
田中:その通り、まさにバッハのコンサートです。バッハの無伴奏チェロ組曲第2番を中心に据え、バッハだけでなく関わりのある作品をセレクトし、演奏します。

(左から)田中奏一朗、都築惇

都築:すべてひとりで演奏されるそうですね。
田中:すべて無伴奏で、バリトンサクソフォン一本です。舞台を広く使いながら演奏したいと思います。
そもそもチェロとバリトンサクソフォンは、最低音が同じなんです。中でも第2番は無伴奏チェロ作品の中で1番好きで、幸せそうな第1番や明るい雰囲気の第3番とは真逆で、マイナーキーの暗い作品なんですが、そこに人間的な暗さも感じさせるというか。バッハって神様のような地位のある作曲家ですが、彼の人間くさい一面がちらちらと見えるところが好きなんです。
都築:他には、ピアソラの「20 years ago」やヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ」第5番も演奏予定ですね。
田中:ピアソラの方は、ジャズのバリトンサクソフォン奏者のジェリー・マリガンも録音に携わった作品で、ジャズ的なアプローチを感じる作品です。あと、ピアソラの作品のコード進行はバッハにも近いため、セレクトしました。
あと、他に演奏するボザの「アリア」はバッハの「パストラーレ」が題材になっていて、アニメ『ルパン三世』や映画などでも使用されている作品で。そこでもバッハとのつながりがあります。
都築:無伴奏かつバリトンサクソフォン一本でも、さまざまなカラーが感じられるプログラムですね。
田中:いつもはカルテットですが、今回は逃げも隠れもせずにひとりで頑張ってみようと思っています。

(左から)田中奏一朗、都築惇

都築:丸裸ですね。
田中:70分間ずっと出ずっぱりなので、精神的な舞台でもあり、僕が作品と対話する様子を味わっていただく時間になるかと思います。バリトンサクソフォン1本のコンサートはなかなか少ないと思うので、楽しんで聴いていただければと思います。

『週刊REV~The REV Solo Recital Series~』は、2023年10月6日(金)~27日(金)TOKYO FM ホールにて開催。10月6日(金)は、上野号『~ソプラニーノからバリトンまで~サクソフォン5種味比べ』。10月13日(金)は、宮越号『俺の道 〜70分で魅せるみやこの全て〜』。10月20日(金)は、都築号『弦楽器と共に魅せる室内楽の世界』。10月27日(金)は、田中号『無伴奏70分一本勝負〜Road to Bach〜』を行う。
取材・文=桒田 萌

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