東京バレエ団、新制作『眠れる森の美
女』の上演が決定 創立60周年記念シ
リーズ第2弾

東京バレエ団の創立60周年記念シリーズ第2弾として、新制作『眠れる森の美女』が2023年11月11日(金)より東京文化会館ほか、浜松、横須賀、堺の3都市公演を含めて全11公演が実施されることが決定した。新制作の総指揮をとるのは、芸術監督の斎藤友佳理。2015年に監督就任以来、ブルメイステル版『白鳥の湖』(2016年1月)、『くるみ割り人形』(2019年12月)と二つの古典バレエの新制作を手掛けて成功へと導き、‟チャイコフスキー三大バレエ“のレパートリーのうち、残す『眠れる森の美女』の上演も待たれていたが、この度創立60周年を控えたこの時期にようやく実現の時を迎る。
新制作『眠れる森の美女』イメージビジュアル
古典バレエの最高峰と称され、祝典としての絶対的な晴れやかさと華やかさをもって人気の高い『眠れる森の美女』は、1890年、クラシック・バレエ最盛期に古典主義スタイルの完成形として成立した。今回、斎藤友佳理がめざしたのは、受け継がれた傑作の品格、薫りを保ちつつ、現代のバレエ芸術に相応しいアップデートを行うこと。そのために舞踊大学院で専攻した伝承学の教えや、振付家の故ピエール・ラコットの下で『ラ・シルフィード』の指導に携わった経験が生かされ、また本作での自らの舞台経験による様々な気づきも演出に役立てられたという。
斎藤がとくに注目したのは、リラの精とオーロラとの関係。この物語ではリラはオーロラの「洗礼の母」であり、リラはオーロラが誕生してから100年の眠りにつく間、ずっとオーロラを見守り続けている。また、ここではリラは100年後の世界におけるデジレ王子の「洗礼の母」でもあり、時を経てデジレを生い茂るリラ(ライラック)に囲まれたオーロラが眠る城へと導き、彼女と引き合わせるのだ。
リラの花に囲まれたオーロラが眠る城 エレーナ・キンクルスカヤによる舞台装置画より
ダンスを技術的にアップデートし、場面展開の矛盾を所々解決するいっぽうで、『眠れる森の美女』を善と悪の対立を描くただのおとぎ話ではなく、舞台芸術が本来持つべき深みを加え、意味のあるものにしたいという斎藤の意志がもっとも強調されているのが第2幕。ここでは舞台芸術が古来、観客に示してきた世界──「生と死」の世界が描かれる。それを踏まえて斎藤は、第2幕でデジレ王子の心情を表すことを心掛けたという。デジレはつねに舞台上に登場しており、見せ場となるソロを与えられ、その性格や感情が十分に描き出される。
ことにデジレがリラによってオーロラに引き合わされる幻想の場面は注目のひとつ。従来はここでデジレとオーロラがともに踊ることも多いが、斎藤版では、オーロラとデジレはけっして触れ合うことはない。なぜなら彼らは異なる次元、世界にいるから──というのが斎藤の解釈だ。「100年の眠りにつくということは、一旦‟死ぬ”ことと同じ。オーロラはいわば黄泉の世界にいるのです」(斎藤)。そのオーロラは、ここではリラに導かれ、彼女の動きをなぞるように踊るが、この振付のアイデアは、同じフレーズがリフレインしていくこの部分の音楽の自分の解釈でもあると斎藤は語る。その幻想ののち、リラに導かれてオーロラの城へ向かうデジレは、彼女と出会うために現世と異界を隔てる“川”を渡っていく。「“パノラマ”の場面ではこの考え方を強調して演出を施しました」(斎藤)。
そして城への道すがらカラボスの手下たちによる妨害が妖精たちによって退けられ、デジレの口づけを受けてオーロラが目覚めると、オーロラとデジレは束の間、互いに触れ、存在を確かめ合う。「なぜならこの世で再び目覚めたオーロラが、幻想の中で出会ったデジレと、目の前の相手を重ね合わせる必要がありました。そうすることでオーロラは夢の中で出会った存在がデジレ王子だったと認識するのです」(斎藤)。
今回、主役のオーロラ姫とデジレ王子に選ばれたのは、沖香菜子・秋元康臣、秋山 瑛・宮川 新大、金子仁美・柄本弾の3組。またリラとカラボスの対立は、リラ(ライラック)の花々をあしらった鮮やかな紗幕と、カラボスの悪意を象徴する蜘蛛の巣が視覚的にせめぎ合う効果的な演出が施され、物語を象徴的に導いていく。ことにカラボス役には柄本弾と伝田陽美という男女の実力派ダンサーが配され、それぞれの持ち味を華麗に競うことが期待される。
沖香菜子・秋元康臣(C)Shoko Matsuhashi
金子仁美・柄本 弾(C)Shoko Matsuhashi
秋山 瑛・宮川新大(C)Shoko Matsuhashi

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