矢井田 瞳

矢井田 瞳

【矢井田 瞳 インタビュー】
一曲の中でいろんなとらえ方が
できるようにしようと思った

一曲の中でいろんなとらえ方が
できる曲にしようと思った

楽しみにしております。それでは話題を新曲「アイノロイ」に移しましょう。「アイノロイ」はサウンドプロデューサーにYaffleさんを迎えていますが、これはまさに先ほどヤイコさんがおっしゃられた“いろんな音楽的可能性を試したい”ということではないかと思います。ヤイコさんはいつかYaffleさんとご一緒したいと思っていたということですけど、Yaffleさんをお知りになったのはいつ頃、どんなきっかけだったんですか?

一番最初にYaffleさんを知ったのは尾崎裕哉さんの作品で、シンセを使ったアレンジなんだけど、人間っぽいシンセを扱う人だなと思って気になっていたんです。そこからさまざまなアーティストを手がけていることを知って、実際にライヴでYaffleさんのプレイも観て、Yaffleさんの周囲にはとても素敵な方、素晴らしいミュージシャンがたくさんいると思って。なので、いつかご一緒したいと思っていた方のひとりだったから、今回とても嬉しいです。

Yaffleさんは藤井さんの全曲をプロデュースしていることで知られていますが、藤井さんがシーンに登場した時、そのサウンドにも驚いていた方は周りでも多かったです。

Yaffleさんのサウンドにはすごく滲み出てくるクレバーな感じはあるんですけど、そのクレバーが…何て言うかな? これは私の感覚ですけど、押しつけがましくないっていうか、さらりとカッコ良いみたいな感じがあって(笑)。あとは、さっきも言いましたけど、シンセの音も既存の音じゃない感じがするというか、キーボードに組み込まれてる音ではない音…全部がYaffleさんにしか作れなかったであろう音色をしてるんですよ。それが回り回って、“きっと人間としても温もりのある、素晴らしい人なんだろうな”って勝手に想像していました。

ヒューマニズムは感じますよね。「アイノロイ」はドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』の主題歌として書き下ろしたものということですけど、Yaffleさんのプロデュースとドラマの話はどちらが先だったんです?

時系列的にはどうだったんだろう? “ドラマの主題歌が決まるかも?”という時期が長くて、“もし主題歌に決まるとしたら、新しさや力強さを感じてもらえる楽曲にしたいから、サウンドプロデュースも新しい人に頼んでみたいね”という時期もあったし…どちらも同じ時期でしたね。

ちょうどタイミングよく…という感じでしたか?

そうですね。Yaffleさんのお名前自体は以前からヤイコチームのディレクターやマネージャーから挙がっていて、“Yaffleさんとやるのはどうですか?”という話はあったんです。私は即“めっちゃ嬉しい! ぜひ!”と言っていて(笑)。その願いも通じて、その3つが全部ギューってなったという。

ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』の原作は同名コミックで、そのあらすじを拝見しただけでもドロドロとした内容であることが分かります。「アイノロイ」を聴いて、個人的にはそうしたドラマ主題歌を作るに当たって新たなサウンドプロデューサーのYaffleさんはとてもハマりが良かったように感じました。

そう言われてみればそうですね。私も最初にコミックの第1巻を読んで“こんなドロドロが続くのかな?”と思ったんですけど、そのドロドロが続くストーリーだったら「アイノロイ」のサウンドはまた違うものが出てきたかもしれないんですが、ドロドロもありつつ、人生に1回あるかないかぐらいの大きな出来事…夫が倒れたり、同性愛があったり、愛人が出てきたり、隠し子がいたり、そういう大きな出来事が次々とその主人公の女性に降りかかるんですね。それらひとつひとつへの決断の下し方がカッコ良くて、爽快で、これまでにないヒロイン像だったから、起こる出来事はドロドロだけれども、それに立ち向かう姿とか取り組み方とかが観ている側としてはものすごく気持ち良くて、自然と応援しちゃう感じなんですよ。なので、ドロドロから前向きまで振り幅があって、一曲の中でいろんなとらえ方ができるようにしようと思ったし、それにはYaffleさんがぴったりでした。

はい。全て語っていただきましたけども、「アイノロイ」は愛と呪いが混在しつつも前向きであるというところがポイントですよね。愛はともかく、呪いって前向きになれない言葉なので、どう考えても単純な表現にはならないでしょうし、よくかたちになったなという印象がありますよ。

ありがとうございます。呪いって漢字で書いたりするとちょっと驚々しいというか、怖い単語なんですけど、私的には…例えばですけど、すごく愛する人にかけられた呪いだったら、自分がどれだけ苦しくてもちょっと愛おしいかもしれないし、“愛はつながっていくもので、呪いもつながっていくものだから、つながってるという意味では背中合わせな部分もあるのかなぁ”なんて思ったりもして。そこまで呪いを怖いものとしてとらえていなかったりするので、カタカナで表記することでニコイチみたいな単語にして、一曲を通して呪いという言葉も出てくるけれども、聴き終わったあとに“なんか気持ち良かった”って前向きになるような曲にしたいというのはありました。

そこですよ。普通に考えたらネガティブな言葉をよくぞポップに仕上げられましたよね。メロディーは十分にポップで、この辺は新たなチャレンジというよりも、これまでのヤイコさんらしい感じに受け取ったのですが、ご自身ではどうとらえていますか?

この曲に関してはドラマ主題歌の書き下ろしということもあったので、“どんな世界観を作ろうかな?”と言葉をピックアップするところから始めたから、言葉についてきたメロディーを忠実に表現した感じです。なので、メロディーだけを先に書いて歌詞をハメたとか、歌詞を先に作ってからそこにメロディーを当てたとかじゃなくって、その場所場所で“この言葉にはこのメロディーだな”っていうのを作っていって。サビに行くまでのAメロは自分の内心を吐露するというか、自分自身と向き合う場面にして、サビで広がるようなイメージがあったので、Aメロではボソボソとちょっと低めの音程で言葉をたくさん詰めるようなイメージはありましたね。

OKMusic編集部

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