【武蔵野系純情派 THE VOICE
インタビュー】
いつでも“これでも喰らえ!”って
気持ちで曲を書いてる
“今の俺たちはこうやって戦うんだ”
ってところを打ち出していきたい
「東京壮年茨道」と「使い古しのメロディー」が書き下ろしの新曲ということで、今やりたかったこと、真正直な気持ちをしっかりかたちにした新曲が、“記セ証”というタイトルを掲げた今作のテーマにもぴったりです。
アマヂ
「東京壮年茨道」は作詞も作曲も俺なんですけど、高校時代にやっていたパンクバンドの曲のメロディーが50歳になった今もずっと頭に残っていて。そのままやっても足りないんで、現在の自分が持ってるメロディーとかけ合わせてできた曲でした。
10代と50代の自分の発想をガッチャンコしてできた曲だったんですね!? そんな曲に壮年期を突っ走る現在だからこそ書ける歌詞を乗せたと。
アマヂ
なんでこんな歌詞にしたのかは覚えていないですけど(笑)、すごくリアルな歌詞だと思うし、これを聴いた同世代の人に少しでも勇気を与えられたら嬉しいです。
《段差も何も無い所で/躓いちゃって照れ笑い》なんて歌いながら、ただのぼやき節になっていなくて。そんな自分も受け入れた上で“まだまだやれるぞ”とメラメラ燃える闘志が伝わってくるところがすごくパンクだし、聴く人の心に火をつけてくれます。
アマヂ
現在も小さなライヴハウスで若いバンドと一緒にやることが多いですけど、若いバンドに絶対に負けたくなくて。フィジカルでは若い奴に勝てないけど、“今の俺たちはこうやって戦うんだ”ってところを打ち出していきたいし、その気持ちを「東京壮年茨道」で表せたと思います。
まさに歌詞やサウンドで“これでも喰らえ!”が表現されています。
アマヂ
そうですね。俺はいつでも“これでも喰らえ!”って気持ちで曲を書いてるし。それは東京に出てきた時から、今に至るまでずっとそう思ってやっています。
「使い古しのメロディー」はどんな曲になりましたか?
アマヂ
ベースになる部分はコビヤン作曲なんですけど、最初はサビがなくて、テンポももっとゆったりしていたんです。だから、コビヤンの歌うデモを聴いて、“これ、俺が歌うの!? 参ったなぁ”って(笑)。でも、“こんな使い古しのメロディーで大丈夫かよ?”と思った時、“使い古しのメロディー”って言葉に引っかかって。
お~、そこからアイデアが膨らんだんですね!
アマヂ
そうなんですよ。それで歌詞がバーッと降りてきて、歌い回しをちょっと変えて、俺がサビをつけて完成させたんです。コビヤンの拙い鼻歌のおかげでできた曲だったので、これが計算だったとしたら相当の策士だと思いますね(笑)。
コビヤン
俺も一生懸命作ろうとはしたんですよ! 懐かしい感じのメロディーの曲を作ろうというのは最初からあったので、なんとか作ってはみたもののまったりしてるし、“どうしようかな?”と思ったんですけど、一応渡して…
アマヂ
まぁ、“何でもいいから渡せ”って急かした俺も悪かったかもしれないね(笑)。
このバンドを続けて20年になるわけですが、ロックバンドやライヴハウスから離れられることのできない魅力ってどんなところにありますか?
アマヂ
実は10年前、フルアルバムをリリースしてツアーを回っている最中に父親が亡くなって、“バンドなんてやっている場合じゃない!”ということで、数カ月ですが音楽から離れたんです。その間、音楽を聴く余裕もなくて、“もしかしたら音楽がなくても生きていけるのかもしれない”と思った瞬間があって。でも、その数カ月後に前のバンドのセルフカバーをやるというライヴがあって、肩ひじ張らずにステージに上がったら、すごく楽しかったんですよ。その時に“俺、やっぱり音楽が好きなんだ”って純粋に思ったし、音楽がないと生きていけない感覚になって。現在もそれがずっと続いているんだと思います。
音楽から一度離れることで、自分は音楽が好きなんだと再確認したわけですね。
アマヂ
だから、音楽がなければ“何のために生きるんだろう?”と思うし、長く続けていきたいですけど、ここで全部出しきっちゃったから“どうしよう?”とも思っています(笑)。コビヤン、お前も頑張って曲書くんだぞ!
コビヤン
わ、分かりました(笑)。僕も田舎に帰らなきゃいけないピンチがあって、“あぁ、バンドを辞めちゃうのか…”と思った時に“やっぱりバンドっていいな”と思えたんです。あとは、先輩バンドのせいでもありますね。
アマヂ
そう! 先輩たちがいつまでも現役でカッコ良いまま続けているから、俺らも“辞める”なんて考えている場合じゃねぇなっていうのは思います。
では、最後に『記セ証』リリース後の野望や目標を聞かせてください。
アマヂ
当たり前にライヴをやって、残せるうちにかたちに残したいと思っているので、また頑張って曲を書いて、次の作品を作りたいです。
コビヤン
そのためにもツアーを完走して、ファイナルを迎えたいですね。
アマヂ
そうだね。今回は長いスパンで無理せず回れるスケジュールなので、楽しみながらゆっくり回りたいと思います。お互いいい年だからさ、ライヴ以外はなるべくむちゃしないようにね(笑)。
取材:フジジュン