けいちゃん

けいちゃん

【けいちゃん インタビュー】
作品を作るということが
自分の生きる意味だと改めて感じた

今回は映像を頭に浮かべながら
作った楽曲がほとんど

「夜行 feat. majiko」は楽曲の良さに加えて、majikoさんの歌唱が本当に素晴らしいです。

めちゃくちゃいいですよね。ズシン!とくる。

きます。それに、“泣かせてやるぜ!”というような仰々しさはなくて、適度にエモい楽曲に仕上げたセンスの良さも光っています。

この曲はちょっと生々しく作りたかったけど、極端にウェットなものにはしたくなかったんです。なので、泣き叫んではいるけど、それを俯瞰で見守る情景も思い浮かべて中和させていった感じです。

ちょっと映画やアニメなどに近い感覚で音楽を作られているとも言えますね。

そうですね。特に今回は映像を頭に浮かべながら作った楽曲がほとんどでした。

その結果、インストも含めて伝わりやすいものが並んでいます。個人的にはけいちゃんさんが歌われている「Life Game」は、すごく映像感のある楽曲だと思いました。

ストーリーとしては「夜行 feat. majiko」に出てくる男性が成仏できずに彷徨っているところに、ちょっとおっちょこちょいの和尚さんが現れて“私が成仏させてあげよう”みたいな感じで語りかけているという歌です。

それで、般若心経が出てくるんですね。「Life Game」もイントロはレトロかつ妖艶な雰囲気でいながら全体としてはEDM感があって、サビはダンサブルで、さらに般若心経が出てくるというすごいことになっています。

般若心経にコードをつけたいと、ずっと思っていたんです(笑)。今回がいいタイミングだったのでコードをつけて、なおかつそこにちょっとEDMのビート感を加えつつ、他のシーンはサンプリングを切り貼りした管楽器の音を入れたりして。それに、過去の自分のアルバムからリフを引っ張ってきたり、「夜行 feat. majiko」に入っている歌詞を持ってきたり…というふうに、いろんなことをやりました。

アルバムを聴かせていただいた時点ではひとつのストーリーに沿った作品だということを知らなかったので、「Life Game」に「夜行 feat. majiko」の歌詞が入っていて、とてもいいなと思いました。

それで言うと、「愛葬 feat. majiko」と「夜行 feat. majiko」の歌詞はめちゃくちゃリンクしています。例えば「愛葬 feat. majiko」のサビには《そっと君に触れたいの/目が合えばいいの/私を感じて》という歌詞があって、「夜行 feat. majiko」は《目が合えばいいの/僕を感じて》という歌詞がある。同じ言葉で一人称を変えているんです。あと、「愛葬 feat. majiko」の《ほら見て、ここにいるよ》というのは「夜行 feat. majiko」にも入っていて、しかも同じメロディーを使っています。そういう仕掛けをいっぱい入れました。

もうひとつ、「Life Game」のヴォーカルはトークワウを使ったエフェクティブなものになっていて、初めて聴かれたリスナーの方は“けいちゃんは歌うことにはあまり重きを置いていないのかな?”と感じると思うんですね。ですが、「シンフォニア」を聴くと、秀でた歌唱力を持たれていることが分かるという。

歌声は僕の中ではトラックの1個というか、楽器の1部というふうにとらえているので、楽曲に合わせてどういうサウンドにするかということには結構こだわっていますね。だから、「Life Game」のヴォーカルはこういうものになっているんです。とはいえ、歌うことは結構好きなので、「シンフォニア」みたいな曲であれば普通に歌う。そういうスタンスです。

「シンフォニア」が入っていることで、けいちゃんさんはすごく歌える上でmajikoさんを招いたり、エフェクティブな歌にしたりしていることが伝わりますよね。

そう言われると、そうかもしれない。楽曲重視で歌も作っていったので、それは気づいていなかったです。世界観を重視して、それぞれの作品がよりいいかたちになるように歌を配置していった結果ですね。

自然な結果だったわけですが、それも伏線回収のような流れになっていて面白いです。続いて、インストゥルメンタルのお話に。今作のインスト曲はどんな意識で書かれましたか?

インストも映像がはっきり見えた上で取り組んでいきました。頭の中に映像を浮かべながらじっと耐えて、頭の中で全体像を作っていく作業をしてから、鍵盤に手を乗せることが多かったですね。ピアノを弾きながら手癖を活かして広げていくというよりは。頭の中で完全に作って、それを具現化するやり方でした。

インストも多彩さと完成度の高さを兼ね備えたものが揃っていますが、そういう中でも特に印象の強いものを挙げるとしたら?

「MAIHIME」かな? 「MAIHIME」は「夜行 feat. majiko」に出てくる亡くなった男性に対するレクイエムみたいなものをイメージして作った曲です。

「MAIHIME」は森鴎外の「舞姫」がモチーフになっているのかなと思ったんですよね。

違うんですよ。森鴎外の「舞姫」も男女の別れを表現した物語なので、そのタイトルだけを題材にさせてもらいました。

なぜ、森鷗外の「舞姫」を連想したのかと言いますと、「MAIHIME」の構成はすごくストーリー性がありますよね。なので、「舞姫」の物語に沿った流れになっているのかなと。

確かに、自分の中に映像だけではなくてストーリーもありました。先に全体的な起承転結みたいなものを浮かべていたというか。だから、タイアップや劇伴の作り方に近いですね。そういう感覚で、今回はアルバムを作っていったかもしれない。

「MAIHIME」の途中でワルツに移行する展開などは頭の中にしっかりとした物語があるからこそという気がしますし、出だしは暗い世界観でいながら後半は光が射すような雰囲気になっていることなども絶妙です。

ありがとうございます。レクイエムというのは決して悲しみだけを表現するものではないと思っているんです。なので、前半と後半で同じメロディーだけど、後ろのコード進行と展開の仕方を変えたりしていて。そうすることで色合いが変わってくるというか、光の強さが変わってくるので、そういう手法を活かしました。

OKMusic編集部

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