音楽を介せば言語を超えることも出来
る――MindaRyn Acoustic Solo Live
"My place"レポート

■2024.02.04『MindaRyn Acoustic Solo Live “My place”』昼の部@ESPエンタテインメント東京12号館B2ホール
タイからやってきたアニソンシンガーMindaRyn(マイダリン)、彼女の初となるアコースティックソロライブが、2024年2月4日(日)にESPエンタテインメント東京12号館B2ホールにて開催された。今回はその昼の部をレポートする。
前回はバンドスタイルだったが、今回はMindaRyn一人だけのステージ。タイトルの通り“私の家に遊びに来た感覚のライブにしたい”とのことで、会場前からどこか柔らかな空気が会場を包み込む。
撮影:林信行
定刻、MindaRynが緊張した面持ちで登場。一曲目はTVアニメ『神達に拾われた男』EDテーマ「BLUE ROSE knows」、挨拶代わりのように自身のデビュー曲でもあるこの曲から始まったライブは、終始温かい雰囲気の中で行われた。衣装もロンTにデニムという衒(てら)いのないスタイル。まさに彼女の家に呼び込まれたような感覚。
ストロークも軽やかに歌い上げると、
「今日はすごく寒いけど、私の家のリビングルームで過ごしているという気持ちでやっていきますね!」
とMC。そこから「START」ではコール&レスポンス、叫んで会場の温度を上げる…というよりも、MindaRynと一緒に歌うといったほうがしっくり来るような声の掛け合わせ。続く「HAPPYLIFE」では英語の語り部分は流石に雰囲気がある。タイ語、英語、日本語を駆使するトライリンガルの彼女ならではの魅力だ。
撮影:林信行
「Shiny Girl」はTVアニメ『SHY』OPテーマとしてリリースされた爽快感あふれるナンバー、アコギで弾き語ることによって距離感がより近く感じられるようだ、それにしてもギターの上達ぶりが素晴らしい。しっかりと毎日弾いている人のプレイだと感じさせられる。日々SNSで弾き語り動画をアップしていた努力がステージに結実している。
一人でギターを弾き語るからこそ出来るものもある、と思わせたのは、次に披露された「Platina(English Version)」。言わずとしれた名曲「プラチナ」の英語版カバーである。原曲はアニソン界のマスターピースとなっているが、MindaRynが歌えば彼女の歌になる。それは楽曲の普遍性かもしれないが、自身の演奏だけで、英語の歌詞に乗せて「昨日よりも強くなりたい」と歌うMindaRynの本音がそこにある気がした。
撮影:林信行
「2024年は一ヶ月しか立ってないのに、色々なことが起きていると思います、みんなも色々あると思うけど、私の歌で希望を感じてもらえたらと思っています」
そう語られて歌ったのは「Shine」。MindaRynの優しい気持ちが響く。今回のコンセプトがホームパーティーということで、ファンとの交流を持ちたいというMindaRynの気持ちを受け、事前に募集したメッセージを読み上げるコーナーも。
撮影:林信行
メッセージの送り主を「会場いますか?」と声をかけ、実際に目を見ながら返答していくMindaRyn。自分の歌を通じてファンに思いを伝えたい、というのと同じかそれ以上に、エールを送りたい、という彼女の思いの強さ。そして「My Evolution」から『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』主題歌である「Make Me Feel Better」を披露する。
「何があっても私達が一緒にいれば、光の向こうに行けると信じてる」
キャリアの中でトップクラスにアットホームな空気感のこのライブだからこそ、伝わってくる思いもある。インタビューの度に彼女は日本語で思いを伝える難しさを訴えていた。
確かに母国語じゃなければ言葉のニュアンスの部分でもどかしさを感じることもあるだろう。でも曲に乗せられれば、音楽を介せば言語を超えることも出来るのを僕たちは知っている。
コーナー最後のメッセージは、なんとMindaRyn本人からのメッセージ、まだYouTubeでアニソンカバーをやっていた頃、ステージでうまく行かなかった時の話を、まるで告白するように語る。
「痛みを乗り越えて、あなたは少しづつ良くなってきてるよ、って自分に言えるようになってきた気がしています。自分に向けて歌いたいと思います、同じような傷を受けた人の力になりますように」
撮影:林信行
自分と対話するように歌われた「Sword of my soul」。いつもハッピーを振りまいてくれるMindaRynが見せた影と悩み。受け止めてくれると信じられる環境と、ファンの前だったからかもしれないが、終演後に話を聞いた時にも「Sword of my soul」が今日一番の出来だったかもしれないと語ってくれた。人間は多面的で、表現はプリズムのように乱反射して客席に降り注ぐ。それを感じられた一曲だった。
バレンタインデーを感じさせる新曲「Bitter chcolate moon」もライブ初披露。どこか切なさを感じる曲で改めて演奏の良さに気付かされる。アコギならではの空気感、音の隙間を埋めるように響く声はハイトーンからミドルまで見事に成長を感じさせるものになっていた。
「Without you」「Fireworks」のバラ―ディな空気感も、続く「Be the one」のポップ・ロックの感覚も、どこか日本人では出せない魅力がある。だからといって大陸的なだけではない、アジアの空気も感じられるグローバルな感覚がMindaRynの魅力の一つだ。
「ここから激しい曲をお届けします!いいですか?まだいけますか!?」
声援で答える客席に向けて、TVアニメ『戦国妖狐 世直し姉弟編』OPテーマ「HIBANA」を披露。テクニカルなこの楽曲もアコギの見事なアレンジによって表現されていたが、熱量や勢いは変わらず。間髪入れず印象的なリフが聴こえてきた。TVドラマ『ウルトラマンブレーザー』前期EDテーマ「BLACK STAR」だ。
パワフルでソリッドな楽曲ながら、アコースティックでかき鳴らす姿と声には少し大人っぽさも感じさせる。このキラーチューンで今日一番の盛り上がりを見せ、TVアニメ『彼女が公爵邸に行った理由』OPテーマ「SURVIVE」へと繋がる。どんな激しい楽曲でもクリアに聞こえる彼女の歌声は日々進化している。
撮影:林信行
「初めてのアコースティックなので不安も多かったですけど、みんなのおかげで楽しくできました!みんなのメッセージを見たら、みんなと繋がっていられると感じられました、ありがとうございます!」
感謝の言葉から最後に奏でられた曲はTVアニメ『転生したらスライムだった件 第2期』OPテーマ「Like Flames」。数々のタイアップに恵まれているMindaRynだが、ベースとして彼女の持つファニーな一面などが浮き彫りになってきたのは、一つ一つの音楽を大事にしているからのような気がしている。
トータル90分のライブでは、装飾も、気取りもなく、そのままのMindaRynがそこにいた、可愛さも強さも心細さも全部そのままで歌いきった彼女の2024年は、どんな音楽にあふれているのだろう?もっと近い距離で、そしてもっと広い会場で、様々なMindaRynを感じたいと思わせる時間だった。
撮影:林信行
■終演後MindaRynにミニインタビューを敢行!
――お疲れ様でした。昼の部が終わってみてどうでしたか?
とてもスッキリしたと言うか、まだ夜公演があるので、半分スッキリしたって感じですね!
――初めてのアコースティックライブ、一人だけのステージでした。
どうでしたか?最初めちゃくちゃ緊張してパニックでした(笑)。本当に倒れちゃうんじゃないかと思ったくらい。
――確かに緊張しているなとは思いましたね(笑)。
でもみんなが居てくれたからやりきれました。最初の「BLUE ROSE knows」を歌って全部悩みがなくなりましたね、楽しかった!
――2024年、ライブスタートしました。どんな一年にしましょうか?
前も言ったと思うんですけど、色々な場所でライブしたいですね。バラエティ溢れる曲を歌いたいという思いも出てきました。MindaRynの曲って高音が伸びる高い曲が多いんですけど、今年はもう少しミドルピッチの曲も歌いたいですね、感情にもっとフォーカスした楽曲をお届けしたいって気持ちがあります!アコースティックライブもすることができたので、もっともっとやりたいですね!
レポート・文=加東岳史

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