藤田千章

藤田千章

【藤田千章 インタビュー】
“多次元的”な音楽の
愉しみを味わえる
ソロ第2作を味わい尽くせ!

一昨年リリースされた1stソロアルバム『un-categorized[Default]』に続く、ソロ第2作『multidimensional』が到着。“多次元”を意味するタイトルのとおり、いろんな解釈、いろんな楽しみ方ができる奥行きのある仕上がりだ。ここでは全5曲というコンパクトなボリュームに凝縮された、音楽的なチャレンジと現代社会に対する洞察を、藤田千章自身に解説してもらった。

今回の楽曲は歌ものもインストも全部、
基本的には4小節から8小節の繰り返し

2枚目のソロアルバムなのですが、いつ頃からどんなふうに構想して、今回のリリースに至ったんですか?

前作終わってから“次、いつ作ろうか?”って、もうすぐに考えていたんですよね。

そうなんですか!?

今回、何をどうしようかっていう詳細は全部が全部見えていたわけではないんですけど、少なくともローファイ的、チルビート的な楽曲は入れたいと思っていて、それをもう少し突き詰めてみようっていう気持ちがありながら、独自性も出したいとも思っていて…。ローファイ、チルビートというか音響系の音楽の多くは、残響を上手に膨らませて構築するのですが、ネオ・クラシックも大好きな僕はプラス、ハーモニーもしっかり見えたいっていうのは思っていて、そのちょっとした矛盾みたいなところをどういうふうにやろうかなと考えてはいたんです。そこがわりとチャレンジのところかなって。

今回のアルバムは全5曲で、3曲インストルメンタル、2曲が歌モノという内容になりましたが、そういうボリュームや構成はあらかじめ考えていたことなのですか?

まず“アルバム”というのはおこがましいんで、“EP”ぐらいだと思うんです。収録曲も5曲なので。せいぜいミニアルバムっていう解釈くらいで、とは思いますけど、3曲インストにして2曲は歌モノにしようっていうのは最初から決めてました。インストに関しては、さっき言ったような要素で考えたりしてましたけど、歌モノに関しては、今、自分がよく耳にするようなものから着想を得た要素で構築しています。ただ、前作からそうなんですけど、曲の尺は極力短くするということと、それからミニマル的な、最小限の変化で構成したいっていう今現在の気分があって。クラシックの世界で言われるミニマルミュージックという概念は、例えば最小限の同じ音階を複数の演奏家で同時に弾いてるうちに、それがやがてずれていくことで出来上がる世界観とか、そういったものですけど、その要素も鑑みながら、最小限っていう意味では今回の楽曲群の全ては、基本的に4小節から8小節の繰り返しなんです。歌モノはちょっと展開があったりしますけど、ほとんどそれがメインで出来上がっています。その上で、ハーモニーの音の積み方だったり、量だったり、音圧だったり、音像のずれだったり、メロディーの変化だったり、そういうもので抑揚をつけてくっていうことに挑戦しているつもりです。リピート感で醸し出される雰囲気、つまり淡々と流れていくような世界観で、今までに自分が採用しなかったような音色の配置をしてみたり、基本的には最小限な感じで動かして…ということで、さっき言った、曲の抑揚の部分、ダイナミクス的な要素を、さらにメロディーの変化だったり、アンサンブルの量だったり、ハーモニーの厚みだったり、そういうものでどれだけ変化をつけられるかっていう。そんなところを考えていましたね。

今のお話にも出た音の厚みということとかかわりがあるんじゃないのかと思ってお訊きするんですが、今回の音源を聴いてる最中にちょっとした事件があったんです。

事件!? …ですか。

いつも聴いているアンプに今回の作品のデータの入ったiPadをつないで、普通にアンプで…他のアルバムを聴くのと同じ条件でアンプで鳴らして、スピーカーから聴くということをやってたら、1曲目から聴き始めて2曲目のところで、スピーカーの上に積んでた物が落ちたんです。要するに、スピーカーがすごく鳴っちゃって揺れたから、上に積んでたものが落ちてしまったということだったんですが、それはどういうことによるものだと思われますか?

なるほど。実はこの音源、マスタリングの段階で通常のマスタリングよりレンジがかなり広く取ってあるんですよね。それはひょっとしたら実験と言っていいかもしれないんですけど。

通常よりもレンジが広い?

下のほうに広いです。で、人間の耳には聴こえづらい20〜30Hzからバスドラムのボトムを挟んで、ベースの下の帯域、100Hzぐらいの、音の帯域としてはかなり低域の部分が出しすぎなくらい出ています。それで、たぶんスピーカーが箱鳴りを起こして振動して、物が落ちたってことだと思うんですけれど。

やっぱり、低いところがたくさん鳴っているということですかね。

たくさん鳴っています。しかも、レベル的にはほぼほぼ目いっぱい。高域はまだちょっと余裕はあるかもしれませんけど、下のほうはもうレベル的には目いっぱいに入れてあるんで。だから、例えばラジオ局のコンプレッサーがどう反応するのか、どう聴こえるのかが問題だという…すごく凹んで聴こえちゃうのかもしれないですね。局によっては、そういうふうになるかもしれないし、逆にすごくワイドに聴こえるかもしれないし。それは本当、ラジオ局によってだと思うんですけど。
藤田千章
アルバム『multidimensional』

OKMusic編集部

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