城田優「世界に飛び出す、日本を代表
するショーに」 オリジナルショー『
TOKYO〜the city of music and love
〜』、エンタメへの想いとは

城田優が実力派クリエイター、キャストと共に「東京」をイメージして創り出す歌とダンスのオリジナル・エンターテインメントショー『TOKYO〜the city of music and love〜』が、2024年5月・6月に東京とシンガポールにて開催される。
東京は渋谷・シアターオーブでの上演。「海外招聘作品を数多く行うシアターオーブが、城田プロデュースのオリジナルショーを上演させてくれること自体がとても光栄」と、その地にふさわしいショーにしたいと熱を込める城田に、ショーへの意気込みや現在の構想、キャスト・スタッフ、そしてエンタメへの想いを聞いた。
すべてにおけるハイクオリティを目指したい
――タイトル『TOKYO〜the city of music and love〜』も城田さんが付けられたとのことですが、まずはタイトルに込めた意味を教えてください。
「世界に飛び出す、日本を代表するショーを作りたい」という想いを軸に、僕らが住む日本・東京という場所を題材に、ブロードウェイやラスベガスのような海外クオリティでショーを創ったら面白いんじゃないかというのが出発点です。今回は海外公演はシンガポールのみですが、今後世界中での上演を前提に、あえて捻らず『TOKYO』、そして「愛と音楽のまち」という副題をつけました。
――そのシンガポール公演については、今どのようなお気持ちですか?
シンガポールはプライベートでも仕事でも何度も訪れているとても親しみのある場所です。今回公演をするEsplanade は、外観からすごく美しく、劇場設計も全座席から観やすかったりと上質なイメージを受けました。裏方目線でも様々な機構が使いやすく制限が少ないので、アイディアが生まれやすい場所だなとワクワクしています。
僕たちのシンガポールでの知名度は低いと思いますが、やはりキャストには満席の状態でパフォーマンスを楽しんでもらいたいですし、共に現地にも来てくださる日本のスタッフの皆さんとも「最高の景色が見れたね」と言えるものを創りたいですね。
写真:2023年11月 シンガポールの劇場 Esplanade Theatres on the Bay にて (c)Moonrise Studio
――現状でのショーの構想は?
僕個人の東京のイメージを表すのではなく、日本や世界にあてはまる過去・現在・未来を混ぜ合わせて創り上げるつもりです。目指しているのは、すべてにおけるハイクオリティ。わかりやすく言えば、美術賞、歌唱賞、演出賞など軒並み受賞!みたいな(笑)。勝負をしたいわけではないですが、イメージとしてはそこを目指したいです。
日本のポップスに加え、世界中のミュージカル曲やディズニーソングなども織り交ぜます。僕らの中でストーリー性は持つつもりですが、表には出さない予定です。現在の想定では芝居はいれず、セットの中で歌、ダンス、音楽、そこに、映像や照明をはじめとしたクリエイションを混ぜ合わせ、ひとつのショーとして創り上げます。各セクションのスタッフが1週間という短い公演日数の何倍もの時間を費やし、アイディアを形にしてくださっています。
キャスト・クリエイターみんなユニークで、妥協しないこだわりの強い人たちが集まっているので、おのずと、これまでとひと味違う、見たことがないものができあがると思います。劇場を出たときに、東京や渋谷の街を歩くのが少し楽しくなるような、「日本/東京っていいな」と誇りに思ってもらえるものにしたいです。
■個性的なキャスト陣は全員が主役 掛け合いの面白さを
――今回は、キャストも城田さんご自身がオファーされたと伺っています。
僕は常々、実力があって素晴らしいのに、幅広く知られず埋もれてしまっている人がいることが、なんてもったいないんだろう!と思うんです。エンタメには例えばスポーツのような明確な勝敗基準がないことも一因かもしれませんが、誤解を恐れず言えば、日本のエンタメ界は実力だけが評価されるわけではない一面があると思っています。だからこそ僕は今の環境を選んだわけですが、その背景から、日本のエンタメ界にももっと変わってほしいと思っているんです。「本物は評価される」というシンプルな理論ですね。
とはいえ、完璧に完成されたものがいいと思っているわけではなくて、情熱やセンス、ユニークさ……いろいろなポイントがありますが、ひとつ思うのは、やっぱりエンターテイナーであるならば、個性を持って、ずば抜けている方いい。そんな考えから、今回も色々なジャンルから、僕自身が面白いと思う人をキャスティングしました。
音楽監督もお任せしているSWEEPさんは森崎ウィンくんの紹介で会い、とにかく歌がうまくて、スキルやセンスを含めてすごく尊敬しています。RIOSKEくんは、実は今結構SNSでバズっているんですが、僕が先に見つけたのに、と少しくやしい(笑)。彼がグループ活動(COLOR CREATION)をしていた頃から注目していて、いつかご一緒したいと思っていたんです。吉田広大くんも紹介で知りましたが、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で僕と同じティボルト役を演じる姿を観て、すごくポテンシャルを感じました。歌ってほしい曲もすでにいくつか浮かんでいます。十三歳のRainy。とyuzuは、将来枠。今後確実にトップになれる才能やセンス、華を持っていると思っています。特にyuzuはすでに自分のスタイルが確立されていて群を抜いています。若手の2人にも注目してほしいです。
――ダンサーにも、舞台やミュージカルでよくお見掛けする面々が並んでいます。
今回は、全員が主役というのがひとつのポイントでもあります。なので、シンガーを中心に、バックダンサー的な見せ方はしない予定です。全員の掛け合いの面白さを味わってほしいです。
何度も共演している原田薫さんは、立っているだけで形になるカリスマ性があり、センスや情熱、人間性を含めすべてが大好きで、絶対的な、信頼を寄せています。SHUNさんも、振り付けでお世話になったりしていて、信頼関係もしっかり築けています。人柄も含め物凄く個性的で、とてもパワフルかつトップの実力をお持ちの方です。碓井菜央ちゃんは、『ロミオ&ジュリエット』の初演で出会い共演を重ねていますが、会う度に驚くほどの成長ぶりを見せて頂いています。彼女のダンスは本当にキレがすごく、魅力的で、自分もあれぐらいカッコよく踊れたらなと思いながらいつも見惚れています。僕、正直ミュージカルの中でもダンスが多いものは敬遠しがちなので、彼女くらい踊れたらいいのになあと(笑)。インスタを通じてアプローチしたBOXERさんは初めましてです。その名の通り、元ボクサーの方で、独特なダンススタイルが世界中で評価されています。彼も、今でこそ80万人ほどのフォロワーがいますが、僕がアプローチした時は違ったんですよ! そして高村月くんは、友人の誕生日会でパフォーマンスを見る機会があり、「この子すごい!」と感動して。ショーが終わってからいろいろとお話させてもらって……というご縁で出演していただくことになりました。
スペシャルゲストの皆さんは、名実ともに日本を代表する方々。ショーに花を添えていただければと思っています。
■ユニークでクセツヨなクリエイター陣の化学反応に期待
――今回は映像や衣装もキーになると拝見しています。クリエイションの面はいかがですか。
クリエイター陣も、共同演出の金谷かほりさんを筆頭に、みなさんセンスに優れ、ユニークでクセツヨ、そして良いモノ創りに妥協しない方々が揃っています。
金谷さんは国内外でテーマパークのショーを手掛けており、世界中で数々の大規模なショーを創ってきた方。公演のスケールがどんどん大きくなっていく中で、自分の経験や知識だけでは手に負えない部分も見えて、世界レベルを目指すために、経験豊富な金谷さんのお力をお借りしたいとお願いしました。
衣装は、金谷さんご推薦の齋藤ヒロスミさんと、僕がお声かけした西坂拓馬さんの二名体制。齋藤さんは浜崎あゆみさんなどトップアーティストの衣装を担当しており、奇抜な衣装を作られています。一方の西坂さんは、アパレルブランド『kujaku​』のデザイナー。洋服へのこだわりが突出しており、ご自身の世界観が確立されているので、こういう方をショーに取り入れたら面白いのではと思いました。お二人の掛け合わせに期待しています。照明の澁谷賢治​さんは、清水翔太くんのライブに行った時にこの照明カッコイイと思ったのがきっかけ。映像のムーチョ村松さんはいい意味ですごく変わっていて、とにかく面白いことをやりたくて仕方がない方です。音響はみなさんのご推薦で明星隆志​さん、舞台監督の清水正道さんにはセットのアイディアだしから参加をいただいていて、すごくいい刺激をもらっています。
――城田さんは『SHOW TIME』や『ピピン』をはじめ多くの作品でシアターオーブに立たれていますが、劇場についてはいかがですか。
渋谷は若者にアクセスしやすくていいですよね。日本の特徴のひとつとして、若い人同士、たとえばデートでミュージカルを観に行ったりする習慣があまりないんじゃないかなと思うんですよ。僕がこれからやっていきたいことの一つとして、新しい客層の取り込みがあります。特にこれからの日本を担う若い世代に、いいものに触れて目を肥やしてもらい、劇場に足を運ぶ人口を増やしていけたらいいなと思っています。
■エンタメ優先の循環を。できることを力尽きるまで
――城田さんは近年多く演出やプロデュースを手掛けていますが、その中で大切にしていることとは?
一番は、高いお金と労力、時間を使って劇場に足を運んでくださるお客様に、なるべくいいものを見ていただきたいということ。そして、多くを費やすものだからこそ、今回の僕の公演も含めて、その良し悪しをしっかり皆さん自身の目で判断していただきたいと思っています。
僕は、いちエンタメを愛する身として、興行である以上は、そこに立つ人たちはその事を肝に銘じて努力すべきだと思うんです。その観点ではいつも手放しで褒めてくださるファンの応援はうれしいようで悲しい面もあるのが本音です。出来に関わらず、毎回大喝采だったらそこで成長は止まってしまうし、応援する誰かにもっともっと素敵になってもらいたいと思うなら、時に厳しい目線も必要だと考えています。ブロードウェイやウエストエンドでのショービジネスを観てきたからこそ、思う気持ちです。
特に今のミュージカル界は、既視感を感じることが多いですよね。こんなにたくさんの作り手がいるのに、どうしてこんなに同じようになってしまうんだろう?って疑問が湧くんです。シンプルに人材不足ということもあるので、やはり作り手側がどんどん新たな才能を発掘していかなければならないと思っています。だから僕は、たとえ1パーセントの人にしか理解されなかったとしても、僕が目指すクオリティを追求していきたいし、皆さんの目そのものも、もっと厳しく、肥やしていただき、エンタメに携わる全員が競い合い、実力で評価されていく。そういう循環を作れたら、日本のエンタメがもっともっと良くなるはずだと思っています。
きっとこれを読んだ方は、「そんなにいうならお前はどのくらいのものを見せてくれるんだ?」って思われるでしょう(笑)。それも覚悟のうえ。僕自身、二十数年のミュージカル人生でたくさんの悔しい思いもしてきて、「なにくそ!」「絶対輝いてやる!」のパッションや向上心を持ってやってきたという自負はあって、だからこそ、今あえて自分にハッパをかけるために意図的に大口を叩いているところはあります(笑)。日本のエンタメ界が、エンタメ優先で結果的にビジネスになっているという循環になるように、できることを力尽きるまでやっていきたいと思っています。
――城田さん流の「目の育て方」とは?
一つは、たくさんのものを観ること。それから、これはエンタメに限らずだと思いますが、「好き」「嫌い」などの感情から一歩進んで、「どうしてそう思ったんだろう?」と分解し思考することでしょうか。僕自身も最初はシンプルにエンタメが好きという入り口から入って、だんだん、何がすごいんだろう?あ、この演出か!照明か!脚本か!って、パズルのピースをはめていくように、それを構成する様々な要素に目を向けるようになりました。逆に、僕は好きじゃないけど、どういう意図があるのかな?と考えてみたり。
と、ここまでたくさん偉そうなことを話していますが、結局はそれぞれの好みだと思います。一人ひとりが自分が良いと思うものを深追いしていくことによって、次のステップに進んでいけるんだと思います。
ヘアメイク=Emiy(エミー)
スタイリスト=山中有希奈
取材・文=yuka morioka 撮影=木下雄介

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