Newspeak 変革と挑戦の真っただ中に
いるバンドの姿を見た、2年ぶりワン
マンツアー最終公演をレポート

Newspeak One Man Tour 2024

2024.03.24 WALL&WALL
この夏にメジャーファーストアルバムのリリースを控えたNewspeakが、およそ2年ぶりのワンマンライブツアーに挑んだ。コロナ禍の葛藤、日本語詞へのトライ、より新しく強力なサウンドの構築など、前向きな試行錯誤の経過はどうだ。名古屋、大阪公演を経た3月24日の東京・WALL&WALLはソールドアウト。待たされたファンの期待もMAX状態だ。
「行きましょう東京。Newspeakです!」(Rei:Vo,Gt&Key)
オープニングは「State of Mind」。日本語詞をメインにした、バンドの新たな地平を切り拓く1曲を皮切りに冒頭からアクセル全開。「Wide Bright Eyes」はReiがマイクを客席に向けて煽りまくり、「No Man’ s Empire」はYohey(Ba)がシンセサイザーベースで強烈なグルーヴをはじき出す。クラシカルなUKロック、ダンスロック、パワーポップ、グラムロックやエレポップの要素も加えたアップビートなサウンド。Steven(Dr)のプレイはホットでアグレッシヴ、サポートギターのTakeもサポートながら遠慮せずぐいぐい前に出る。ライブに飢えていた感情がもろに音に出ている。
「Newspeakのライブは自由なんで、日ごろの嫌なことを忘れて、自由に楽しんでください」(Rei)
Leviathan」から始まるセクションは、心地よく体を揺らすダンスタイム。Reiの英語のリリックは深いメッセージを込めたものが多いが、ライブではとにかく音に身をゆだねよう。「What We Wanted」の、マイナーなセツナメロディとエレポップ感満載のビート、「Firelight」の、哀愁を帯びた曲調とダンスロックの融合。Newspeakは生音重視のロックバンドだが、Reiがキーボードを弾く曲では特に、ダンサブルでポップな質感が前面に出る。揺れたり踊ったり手を上げたり、オーディエンスのノリも良い意味で勝手。右向け右のよくあるロックライブとは一味違う。
「曲作りは一生終わらないけど、こうして2年ぶりにワンマンをやると、俺たちが帰る場所はライブハウスだなと思います」(Rei)
「自分の心の帰る場所について書いた2曲を――」。そう前置きして歌った「Jerusalem」は、ふわりと温かいキーボードの音色、美しく雄大なメロディを真ん中に据えたミドルテンポ。「Ocean Wind&Violet Waves」は、クリスマスのムードを織り込んだスローなワルツ。ファルセットを駆使したReiのボーカルの、繊細なニュアンスに深い感情がこもる。一気にテンポを上げて「RaDiO sTaTiC」へ、ハンドマイクを握って猛々しく吠え、煽るRei。さっきまでじっと聴き入っていたオーディエンスが、凄い勢いで飛び跳ねる。急加速でトップスピード、このバンドの持つエンジンは強力だ。
キャッチーなキーボードのリフが導く四つ打ちチューン「Media」から、派手なロックギターがうなる「Where Is Your Mind」へ。いなせなディスコロックの衣装をまとう2曲は、ライブ後半の始まりを告げる合図にうってつけだ。Newspeakの特長はなんたって、ロック、ディスコ、メロディ、メッセージ、そして合唱。ほぼ全曲にオーディエンスが歌えるコーラスパートが用意され、♪FUUU!♪YUUU!と歌っているうちに自然に一体感が生まれる。「かっこいいでしょ、Newspeak」と、歌い終えたReiがひとこと。自分で言っちゃうその気持ち、わかる。
「日本語で作った、ただのラブソングです――」。最新リリース曲「Before It's Too Late」は、洋楽育ちで海外生活が長く、日本語で歌うことに照れがあったというReiが心の壁をぶち破って書いた1曲。日本語を生かすためのシンプルなリズム、あたたかみを感じる曲調、そっと寄り添うギター、切なさをはらんだ美しいメロディ。バンドは着実に前進している。Reiがオーディエンスに手振りをうながし、素晴らしい一体感に包まれた「Lake」から、全員クラップで盛り上がる「Maybe You're So Right, Gonna Get My Shotgun」へ。新旧織り交ぜたベスト選曲でクライマックスへ駆け上がると、残すは1曲。
「多くの人に理解されなきゃいけない仕事をしてるけど、目に見えない人じゃなくて、ここにいるみんなのように、俺の目に見える人のために曲を書きたい。何者でなくても、誰かのためにスペシャルな人であれればそれでいい。そう思って作った曲を」(Rei)
ラストチューン「Be Nothing」に込めた思いは、一点の曇りなく誠実だ。キーボードの弾き語りに、激しく歪みながらも包容力あるバンドサウンドが加わる。昨年11月にリリースされたこのエモーショナルなバラードもまた、バンドが新たな扉を開けるための鍵になる曲の一つ。ライブでも必要不可欠な1曲になるはずだ。
そしてアンコール。7月10日、待望のメジャーファーストアルバム『Newspeak』リリース。7月19日、渋谷WWWでリリースパーティー。嬉しいニュースに続いて、一足先に披露されたアルバム収録の新曲「Silver Sonic」は、シンプル、メロディアス、アップビートなロックチューンで、理屈抜きで一発で乗れる曲。日本語詞もしっかり歌われて、音源で確かめるのが楽しみだ。もう1曲「Bonfire」で明るく盛り上がってフィナーレ、と思いきや、オーディエンスの熱烈な拍手がそれを許さない。ダブルアンコールに応え、ここはスタジアムか?と思うほどの壮大な広がりを感じる「Blinding Lights」まで、18曲90分の全力疾走。すべてを出し尽くしたメンバーの清々しい表情が、ライブの手応えを物語る。ここがNewspeakの帰る場所。
変革と挑戦の真っただ中にいるバンドを見ることほど、面白いことはない。Newspeakにとって今がその時だ。メジャーファーストアルバム『Newspeak』と、7月19日の渋谷WWWでのリリースパーティー。洋楽ネイティブが作る日本のロック新境地を目指して、Newspeakは前進を続ける。

取材・文=宮本英夫 撮影=河島遼太郎

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