「まさか…この俺が!?」男子が同性
愛に目覚めるか実験してみた

こんにちは、歌人の鈴掛真です。5・7・5・7・7の短歌の作家です。

みなさんは『ノンケ』という言葉をご存じですか?
同性愛者のコミュニティの中で生まれた言葉で、「その気(け)が無い」=「non気」、つまり異性愛者のことを意味しています。
そんなノンケのみなさんも、これから同性愛に目覚めてしまう日が来るかもしれません!
今回はそんなお話をお届けします。

詳しく知りたいけど、なかなか知る機会のない“同性愛”の話題。
【ゲイだけど質問ある?】では、オープンリー・ゲイの鈴掛真が、みなさんの気になる疑問・質問にお答えしていきます!

質問 【ノンケと付き合ったことある?】
ゲイでありながらノンケと恋愛に発展して付き合った、という経験は今のところありませんね……。
でも、関係を持ったことなら何度かあります。

一体どんな関係かって!?
気になりますよね。フフフッ……。
ここにはとてもじゃないけど書けない刺激的な関係もありましたが……今日はある夜に体験したエピソードをご紹介しましょう。


あれは4年前の3月のこと。
中目黒にある行きつけのお店で馴染みの友人たちと飲んでいると、見知らぬ男性が一人でやって来ました。
年齢は30代前半くらい。文豪・三島由紀夫のような顔立ちに、Tシャツとジーンズにジャケットを羽織っただけの野暮ったい恰好。「昭和からタイムスリップしてきた人みたいだ」と思ったのが第一印象でした。どこかで飲んでから来たのか、もう既に酔っぱらってる様子。

彼の名前は、Tさんとしましょう。話してみると、Tさんは元自衛官で、現在は某メーカーに勤務するサラリーマンなんだとか。なんと、僕の家のすぐ近くに住んでいるご近所さんだということが発覚。
急に親近感が湧いたのか、Tさんは僕の隣りのカウンター席に腰掛けて、肩を組んできました。
そして、彼はこう言うのです。
「いや〜、それにしてもシンくんは本当にカッコいい顔してるね!」
店中に聞こえるくらい大きな声で何度も言うものだから、周りのみんながクスクス笑いながらこっちを見ています。恥ずかしい……。
「Tさん、僕ゲイなんで、そんなことしてるとゲイに間違われますよ」
僕ははっきりと忠告しましたが、Tさんは、
「そうなの!? そっか、俺はゲイじゃないけど、シンくんのことはカッコいいと思うよ!」と繰り返すばかりでした。本当にわかってんのかな……。

そうこうしている間に終電の時間。
僕が帰ろうとしても、「タクシーに乗せてあげるからまだ一緒に飲もう」とTさんが引き留めてきます。仕方なくもう1杯だけ付き合ってあげてから、Tさんを連れて店を出ました。
タクシーに乗った後も、Tさんはまだ飲み足りない様子。僕は朝から仕事があったので、これ以上飲みたくありませんでしたが、試しにこんな提案を……。
「うちで飲みますか?」
「……じゃあ、コンビニで酒買ってくか」
マジかよ。来るのかよ。
かくして、初対面の男性を我が家に泊めることになりました。

立ち寄ったコンビニでチューハイを数本買って、2人で僕の家に帰宅。
すると、やっと状況が把握できてきたのか、Tさんがそわそわし始めました。
せっかく買ったお酒は進まず、会話もなんだか弾みません。
夜も遅いことだし、順番にシャワーを浴びて寝ることにしました。
布団は1セットしかありません。まだ肌寒い季節。同じベッドで2人で眠ります。

襲っちゃおうと思えばできてしまうこの状況下……けれど僕の中にあったのは、イヤらしい気持ちというより、“ノンケの男子がゲイの家に誘われて同じベッドで寝ることになったらどんな反応をするのか”を見てみたい、という好奇心の方でした。

一緒に寝るには少し狭いシングルベッド。背中にTさんの体温を感じます……。
眠れないのか、Tさんがこんなことを話し始めました。
「……ごめんな。さっき知り合ったばっかりなのに、家まで押し掛けたりして。俺を好いてくれてるのは嬉しいけど、やっぱり俺はゲイじゃないから、気持ちには応えられない……。ごめん……」
……は?
なに僕がアンタのこと好きみたいな感じになってんの?(笑)
誰が好きだなんて言ったよコラッ!!
可笑しくて夜中に大笑いしてしまいました。
2人の間に漂っていた妙な緊張感があっという間に吹っ飛んで、急に眠気が……。

こうして、Tさんとは“同じベッドで寝ただけの関係”に留まって、夜が明けたのでした。

実は曖昧な“ノンケ”の定義
Tさんは自分のことをゲイじゃないと否定していましたが、実際は自分の中に“その気”を感じていたんだと思います。
その気が全く無ければ、自分がゲイと関係を持つなんて発想にも至らないはず。
『あ、ヤバい……このままだと俺、目覚めちゃうかも!』
その自覚があったからこそ、わざわざ僕に「俺はゲイじゃない」なんて明言したに違いない、と。

あれからTさんとは、ご近所さんとして何度か2人で飲んだことがありましたが、結局それ以上の関係になることはありませんでした。
けれど、もしもあの夜、僕が一線を越えていたら……Tさんを目覚めさせてしまっていたかもしれません。
まあ、そもそもタイプじゃなかったんですけど。

実は“ノンケ”の定義というのも、それくらい曖昧なものなんじゃないかと思います。
Tさんは行動こそ起こさなかったけれど、僕のことを少しでも性的な対象として意識してしまった時点で『その気がある』と位置づけることもできますし、仮に同性間のセックスができてしまっても、恋愛感情が向かなかったら『やっぱりその気はなかった』と考えることもできます。
何をもってして“その気”かと考えるかは、人それぞれなわけです。


みなさんがどれだけ「自分はノンケだ!」と思っていても、ある日突然、魅力的な同性に胸が熱くなって、自分のセクシュアリティに悩むことがあるかもしれません。
「自分はノンケなのか、同性愛者なのか、はたまたバイセクシャルなのか……」
そんなとき、無理にどれかに当てはめる必要はないんです。
「素敵な人だな」「仲良くなりたいな」
そう思った相手が同性だった、というだけのこと。
それは同性愛・異性愛にとらわれない“人間愛”なんだと考えれば、もっと人間同士の絆が深くなって、社会が明るくなるのではと、僕は思います。

質問、お待ちしています!
鈴掛真の【ゲイだけど質問ある?】第20回、いかがでしたか?
次回は、【生まれ変わってもゲイになりたい?】という疑問にお答えしたいと思います。

みなさんからの質問も募集しています。
疑問やお悩みなど、気になるお話をお寄せください。
メッセージお待ちしています!

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【ゲイだけど質問ある?】 バックナンバー
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●vol.18 【職場のゲイとどう接すればいいの?】
●vol.17 【ゲイの友情と恋愛の境目はどこ?】
●vol.16 【やっぱりゲイバーに行くの?】
●vol.15 【同性愛って“趣味”なんでしょ?】

鈴掛真プロフィール

鈴掛 真(すずかけ しん)歌人
愛知県春日井市出身。東京都在住。
著書に『好きと言えたらよかったのに。』(大和出版刊)がある。
雑誌『東京グラフィティ』で連載中。
Twitter・ブログでも短歌を随時発表中。

●Twitter http://twitter.com/suzukakeshin
●ブログ さえずり短歌
●オフィシャルWEBサイト http://suzukakeshin.com

Written by 鈴掛 真

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