取材:土屋恵介

最後までやりきるってスピリットはオリ
ンピックにも私生活にもリンクする

まずは、今年前半に行なった、全国ツアーの感想から聞かせてください。

藤巻
アルバムリリースのタイミングじゃなく、自分たちのベストチョイスな選曲での、今までで最長の全国40公演のツアーだったんですね。初めて行くところもあったし、僕らもレミオロメンってものが振り返れたし…それをみんなと共有できたので、すごく意味のあるツアーでした。ライヴはサポートメンバーを入れてやってるけど、曲によっては3人で演奏したんですよ。そこから感じることも大きかったですね。
神宮司
僕らを初めて観る人、何度も来てくれてる人、全ての人に楽しんでもらえたライヴができたと思うし、自分でも長いツアーでのモチベーションの保ち方や演奏の仕方とか、勉強になった部分もたくさんあって、すごく楽しかったし、やれて良かったです。
前田
初めて行った場所で、“ここにも聴いてくれてる人がいるんだ!”っていう新しい出会いが大きかった。帯広のライヴで、お客さんから“帯広まで来てくれてありがとう”って声が上がって、それだけで会場が拍手に包まれたんですよ。あれは、うれしかったなぁ。ツアーが終わった時に、これからもそうやってつながっていきたい、また早く会いに行きたいと思ったし、そんな気持ちで楽曲制作に入れたので、前に進む着火材…これからのレミオのキーになるツアーになったと思いますね。

その経験を経て、今回のシングルが発表されるわけですね。まず「もっと遠くへ」について聞きたいのですが、力強さを感じる壮大なミッドチューンに仕上がってますね。

藤巻
これはフジテレビ系北京オリンピック中継のテーマソングという話をいただいたとこから始まった曲で、今年の3月に曲を作り始めました。でも、歌詞が全然書けなくて、歌入れをしたのはつい最近でした。

では、歌詞が書けるまでの経緯というのは?

藤巻
アスリートの目線に立つのが難しかったし、それを応援するって形で書くと薄っぺらくなって、なかなか書けなかったんです。でも、始まりの2行の“もっと遠くへ行きたいと願った たった一度生まれてきた奇跡は計り知れない”が大きな言葉だったので、そこに対して思うことを書くべきだと思ったんですね。いろいろ考えていくうちに、アスリートでも自分と向き合って新記録などの新しい世界に飛び込んでいくのは怖いんじゃないかなって。それは、僕らが音楽と対面して、自分と向き合って、ライヴをやったり、曲を作っていく感覚や、日常生活の中で一歩を踏み出す時の勇気とかと、共通するものがあるんじゃないかって思えたんです。そこから、一瞬一瞬の重みや、弱さや怖さを肯定しながら、その中でもっと素晴らしいものを目指したいって思いを込めた歌を書きたいと思ったんです。

確かに、“迷いや不安も踏まえつつ願いを持って進んでいく”という思いが伝わってくるし、スポーツ、恋愛、社会で生きていくことなど、いろいろな角度から受け取ることができますよね。あと、歌からも生々しさや力強さを感じました。

藤巻
先のツアーをやって、歌に対する意識が変わったんです。喉は体の一部だし、より歌を響かせるために体を作ることも大事だってことが学べたんです。それで表現のニュアンスも変わるんだって実感したし。そういう意味で、ひとつひとつの言葉を大事にして歌いましたね。

演奏面も、躍動感がひしひしと伝わってきました。

神宮司
ニュアンス的に「粉雪」のようなスタート感でありつつ、「蛍」みたいな熱さもある。熱量を込める…1音1音に集中して届けるって思いで演奏しました。
前田
楽曲自体は真っすぐなとこが見えていたので、それに応じて演奏できました。でも、最後に亮太くんの歌詞が乗ってから、音ひとつひとつの聴こえ方が変わった感覚がしたんです。そこまでやりきれたのが、この曲の勝利だったと思えますね。最後の最後までやりきるってスピリットは、オリンピックにも私生活にもリンクすると思うし。

やりきるって、難しいけど大事なことですよね。

前田
意外とやりきるって辛いことなんですよ(笑)。疑問や不安を細かくチェックしていくこと、それが前に進むことなんですよね。実は去年の前半、レミオの中でその突破力が弱ってた時期があったんです。で、去年6月に3人でスタジオに入って、 「Wonderful & Beautiful」などの曲の練習して、僕自身やりきれてなかったことに気付けたんです。そこで、気持ちと音のズレを修正することができた。その後、僕らの音が変わりましたね。前がダメだったわけじゃなく、より一瞬の瞬発力が音に込められるようになったんです。「Wonderful & Beautiful」以降と、その前の僕らの音って全然違うんですよ。

その変化は、バンドにとって大きな出来事だったわけですね。あと、ストリングスのアレンジが、曲をよりダイナミックにしていってるなと。

藤巻
言葉との兼ね合いがすごく大きいアレンジだと思います。ストリングスアレンジは小林(武史)さんがやってくれたんですけど、今のアレンジがピタッときたのは、自分と向き合うって歌詞ができてからなんです。無敵の戦車で突き進むんじゃなく、生きてるこの瞬間を駆け抜けるその清々しさとかが、一体となったアレンジだと思いますね。

ウソじゃない感じというか心から笑って
る感じが出ている

次に「オーケストラ」ですが、こちらは高揚感のあるキラキラしたアップチューンですね。

藤巻
この曲はライヴから受けたものが大きかったですね。「もっと遠くへ」がスポーツや音楽、好きな人と出会うことで自分と向き合っていく作業だとすると、「オーケストラ」はライヴで知らない人が集まる出会いもある…そこで共有し合う喜びが、歌詞にもサウンドにも込められたと思います。実は、曲の原型は昨年からあったんだけど、ツアーの後にアレンジや演奏を改めてやり直したんです。すごく楽しくレコーディングできましたね。40本のツアーを回って9万人と出会えたわけですけど、この曲で“またみんなと同じ空気を共有したい”っていうアピールができたんじゃないかな。
神宮司
ツアーで自分たちの演奏方法が見直せたんで、僕自身、ツアー後の自分がどんなドラムを叩くのかワクワクしてレコーディングに望めたので、楽しんで演奏できましたね。疾走感もパワフルさも出たし…何より、楽しさが出たかなって。アレンジも曲が進む連れてどんどんビルドアップしていく感じで、誰が聴いても楽しんでもらえるような楽曲に仕上がった。早くライヴでやりたいですね。ノリノリで演奏できると思いますよ(笑)。
前田
久しぶりに、根っこからの元気が出た曲だなって。「スタンドバイミー」「南風」の頃のキラッとした感覚が、心の底から出せたのが良かったです。ここ何年かはストイックで固い、ソリッドな精神状態を描く歌詞が多かったので、“こういうレミオもいたよね。気持ちいいぞ!”って思えた(笑)。天気でいえば、夏の晴れって曲ですね。

聴いてても、希望を感じられますよ。

前田
そう! そこなんです!! ウソじゃない感じというか、心から笑ってる感じが出てる曲だと思います。

あと、カップリングの「夏の日」は切ないメロディーで、サイケ感のあるナンバーですね。

藤巻
これは、昔の曲を引っ張り出してきたんです。自分たちの手癖が出てたり、すごく自然でしたね。この感じが、ある意味レミオロメンの根っこにあるものだし。いいタイミングだったので入れようと思ったんです。でも、ふたりとも覚えてなくて(笑)。
神宮司
デビュー前の昔の曲なんで、忘れてました(笑)。ほんと、山梨から出てきたばかりの土っぽさが出てますね。音も歌詞の感じも、昔の風景を思い出させるようだし。山梨の川でキャンプファイヤーで遊んだことを思い出したり、久しぶりに初期の自分たちを感じつつ、レコーディングできたのは、逆に新鮮でしたよ。
前田
遠い記憶の夏の日、物悲しさや喪失感…あと、おとぎ話のようにねじれていく感覚って、誰もが持ってるんじゃないかな。僕らにしてみると、ほんとレミオロメンっぽいなって思うんですよ。こういう湿度の高いテイストの曲が結構あって、よく暗いって言われてたし、そこが山梨っぽいって言われてました(笑)。

いい手応えのシングルができたという感じですね。

藤巻
そうですね。このシングルが、頑張ろうと思ってる人の背中を少しでも押せるものになったらなと思います。
神宮司
今回、僕らのありのままが出てると思うんですよ。なんで、僕らも聴いてるみんなと同じ目線でいるんだよって。親近感を持って聴いてくれたらうれしいですね。
前田
僕も今まで曲に支えられたことが何度もあったけど、僕らの音楽で人の気持ちが少しでも豊かになってくれたら最高だなって思いますね。必ずすっきりできる、いい影響が及ぶシングルだと思うので、ぜひ聴いてほしいです!

では、話題を変えて。今年の夏フェスはどんなライヴになりそうですか?

藤巻
3曲とも各地で演奏したいし、早く届けたいって思いが強いですね。よりライヴに深みが増すんじゃないかな。もちろん、フェスはみんなで楽しめる曲もやりますし、共有できるライヴを各地でできたらと思ってます。
神宮司
北海道の次の日に東京とか、結構タイトなスケジュールなんですけど(笑)、バッチリ頑張ります。あと、今年の夏はヤバい暑さになるらしいので、それに負けない熱いライヴをしようと思ってます!

実際、暑い野外でやるのって大変ですよね。

神宮司
直射日光はヤバくて、シンバルを手でミュートできない時がありましたよ(笑)。でも、お客さんはもっと暑いわけだし、僕らも気合い入れていかないと。
前田
いろんなところで待ってくれてる人と楽しみたいですね。変に固くならず、でも丁寧なライヴをやっていきたいです。それで、いい感じに秋に向かって行きたいなと。

秋からの予定というのは?

神宮司
今年中にアルバムを出そうと思ってます。夏フェス終わりのいいテンションのままレコーディングに入れると思うので、期待しててほしいですね。
レミオロメン プロフィール

00年12月に、小・中・高と同級生だった藤巻亮太(vo&g)、前田啓介(b)、神宮司治(dr)によって結成。バンド名に特別な意味はなく、ジャンケンで勝った順に1文字、2文字、3文字出してゆき言葉をつないだものだという。03年3月にリリースした1stミニ・アルバム『フェスタ』がレコード店のインディーズ・チャートで軒並み上位を記録し、その名を広く轟かせる。8月にはシングル「電話」でメジャー・デビューを果たし、以後1stフル・アルバム『朝顔』、シングル「3月9日」、アルバム『ether [エーテル] 』などをリリースし、05年3月9日に新人バンドとしては異例の日本武道館公演を成功させた。そして、彼らの代表曲として国民的ヒットを記録した「粉雪」を05年11月にリリース。
彼らの持ち味は、日本語の感触に重きをおいた詞作と、3ピースによるシンプルでありながらダイナミックなバンド・アンサンブル、そして、ノスタルジックなメロディだろう。「粉雪」の後も「太陽の下」「蛍/RUN」「夢の蕾」などスケールの大きい楽曲を次々と生み出し、トップ・アーティストとして活躍を続けている。レミオロメン オフィシャルHP(アーティスト)
レミオロメン オフィシャルHP(レーベル)
レミオロメン オフィシャルYouTube
Wikipedia
藤巻亮太 オフィシャルTwitter

OKMusic編集部

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