【マリア】自分の中でのロックを大事
にして作っている
ウエットなアコースティックサウンドの「忘れたくなくて」とファンタジックな「虹に願いを」を収めた4thシングル。今までと曲調は変われど、ギターをかき鳴らし、自分を表現するスタンスは変わっておらず、そこが彼女のロックスピリッツでもある。
取材:土内 昇
「忘れたくなくて」はアコースティックなナンバーということで、今までとは違う一面を出してきましたね。
リリースが冬から春にかけてっていう時期だし、別れと出会いの季節にはこういう曲調がぴったりだと思ったのと、ライヴでバラードをやってたりするんで、バラードをリリースしたいと思っていて…聴いてみたいっていう周りからの声もあったので、いいタイミングだなって。でも、こういう曲調だからライヴとかではアコースティックでやってるんですけど、イントロのリフとかはエレキだったりして、どちらでもやれるようになっていて、自分の中でのロックっていうのを大事にして作ってるんですよ。
もともとはどんな曲を作ろうと?
最初は切ない感じのものをイメージしていて…サビのメロディーがとても切ないので、そこから組み立てていったんですね。でも、別れと出会いの季節…2月や3月って卒業シーズンなんで、今まで一緒にいた仲間と別れることになるから、すごく切ない気持ちはあるんだけど、次の新しいステージに行かないといけない。そこの差別化を図りたいと思ったので、Dメロで人格がガラッと変わって、自分の中にいるもうひとりの自分が“それでも進んで行け!”って自分の背中を押してるんです。だから、切ないだけじゃなくて、“進んで行こう”ってポジティブなイメージもありましたね。
歌詞的には卒業シーズンがイメージとしてあったとはいえ、いろいろ解釈できるものになってますよね。
“学校”とか“卒業”という言葉を入れるとイメージが限定されるのであえて外して…時期的には卒業もあるけど、みんながそれぞれの境遇の中で別れを経験して、新しい出会いに向って進んで行くと思うんです。だから、それぞれのストーリーを思い巡らせて聴いてほしいですね。私にも自分なりのストーリーがあって…学校の友達ではなかったんですけど、すごく仲の良かった友達がいて、彼女と一緒に夢を追いかけていたんですね。でも、自分たちが大人になるにつれて、やりたいこととか意見が食い違い始めて、それぞれの道がだんだん見えてきたから、“離れたくないけど、お互いに成長した姿でいつか会おうね”って言って別れたんです。その時のことを思い出しながら、この歌詞を書いたんですよ。
確かに、自分の気持ちを押さえ付けながらも前に進んで行こうとしているところが印象的でした。
心の中では“会いたい”って思っているけど、それを口に出しては言えないっていう。そういう気持ちを噛み締めながら頑張っているみたいな。
では、歌入れはどんな気持ちで? かなり感情移入されてますよね。
当時の気持ちを100パーセント思い出せるわけじゃないけど、その時の気持ちを思い出して…話し合った場所とか、その情景を思い出しながら歌いましたね。サビの最後とかは、すがるような思いなので、より切ない感じが出るようにかすれるような声で歌いました。抑えていた気持ちがあふれ出たっていうイメージで。
そんな切ない表題曲とは打って変わって、カップリングの「虹に願いを」はファンタジックな曲ですね。
はい。ファンタジックな曲を作ろうと思って作りました(笑)。ライヴでも軽い気持ちで演奏できて、お客さんも楽しく手拍子してくれるような。アレンジもおとぎの国から出てきたぐらいファンタジーなものにしたい…それぐらい振切っちゃおうって。でも、ただファンタジックっていうだけじゃなくて裏があるというか、一瞬聴いた時のイメージと歌詞にはギャップがあるものにしたかった。
実は、夢に逃避する哀しい曲ですからね。
そうなんですよ。現実逃避です。現実に対して“これは夢だ”って信じたいんだけど、もうひとりの自分が“夢ならモノクロに見えるはずだ”って言っている…どこかで“これは夢じゃない”って分かっている切ないお話なんで、曲と歌詞のギャップにも注目してほしいですね。だから、歌も明るいだけじゃないんですよ。現実逃避していた病んでいた頃の自分を思い出して…でも、Aメロは弾まないといけないんで、両方の気持ちがありましたね。無理して笑って“よし、楽しんで行こう!”っていう気持ちっていうか。
この曲はバンドではなく、シンセでサウンドを構築しているのですが、ある意味新境地ですね。
そういう曲はなかったですものね。思い切ったというか、ちょっと遊び感覚で作ったという感じです。でも、“ライヴでどうやるんだろう?”って(笑)。アコギ一本でやったらかわいいと思うけど、バンドとなると想像が付かないですね。いつかおとぎの国のセットをバックに、賑やかにやってみたいです(笑)
そういう意味では、今までロックなイメージが強かった分、今回のシングルではそれではないものを提示したという感じですか?
ロックっていろいろあると思うんですよ。みなさんが思うロックとは違うかもしれないですけど、ギターを持ってないと歌えない曲だし、私なりに自分を表現しているので、自分の中ではロックなんです。だから、そこはブレてないですね。
その気持ちが十分にロックです! そして、この後にはアルバムが控えていますが、希望的観測も含めて、どんなものになりそうですか?
“WILL”っていうタイトルなんですね。ここからさらに可能性を広げたいと思っていて、時間をかけて納得のできるものにしているし…やっぱり、自分にとって一番最初のアルバムということで、中途半端な気持ちではリリースしたくないんですよ。未来に向かって“行くぞ!”っていう気持ちも、今までの成長も詰まっているし、自分自身に対して完璧だって言えるものになるんじゃないかなって思ってます。そういうものでないと絶対に伝わらないと思うので。
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