【風花】
取材:土内 昇
「冬花火」はインディーズ時代の曲なんですよね。
3~4年前に作った曲なんですけど、これまでに何パターンもメロディーを変えたり、十回ぐらいアレンジをやり直したりして、ずっと温めてきた曲なんですよ。冬ぐらいになるとライヴでやってたし、メンバー自身も一番思い入れがある曲ですね。で、今回は柴崎コウさんの『ラバソー~lover soul~』のアレンジも手掛けた鴇沢 直くんと一緒にやることになったんですけど、鴇沢くんが加わることによって、“あっ、ここでこういう音を入れるのか!?”って自分たちが考えてもみなかった方向に広がっていきましたね。
鴇沢さんはシンセサイザープレイヤーでもあるから、バンドとは違う観点で曲の良い部分を広げてくれたんでしょうね。
そうですね。自分たちの頭の中から外に出た感じがします。曲の輪郭がよりくっきりとしたというか…冬の冷たさを音でも表現できたと思いますね。
鴇沢さんとは最初にどんなことを話し合ったのですか?
僕らが持っている曲のイメージ、サウンドと歌詞のマッチングよりも、歌詞の世界をもっと明確に出すことができる…風景描写している歌詞なんですけど、そのシーンを音やアレンジでもっとくっきりと出すことができるっていう話をして、そのためにどういうことをやっていくかってところからスタートしました。自分たちでは何回もアレンジを繰り返してきたんで、“もうこれ以上はできない”っていう気持ちが固まりつつあったんですけど、鴇沢くんとやっていく中でひとつひとつの風景がよりはっきりと見えるものになったんで、まだまだ曲に可能性があったのに自分たちで線を引いてしまってたと考えると、ちょっと怖いものがありましたね。
確かに。もともとはKakkyくんが作った曲なのですが、その原曲を聴いて風景描写するような歌詞を書こうと?
どんなテーマで作ったのかは聞かずに曲だけを聴かせてもらった時に、すぐにこれは冬の曲だと思ったんです。で、自分が経験した失恋を思い出して…夏に失恋して、その年の冬の大掃除の時に、約束したのにできなかった線香花火と写真がクローゼットから出てきたんですよ。自分の中に閉じ込めていたものが、ふとしたきっかけで飛び出してしまった、その瞬間を一本の映画のような感じで、4分半の曲で伝えられないかなと思ったんです。その時の切ない感情、また会いたいと思っている気持ち、もう終わっているのにまだ終わってないと感じてしまう想い…そういうものを一本の映画にして、1曲の中で伝えられないかなって思って、この歌詞を書きました。
男の女々しさが出た歌詞ですよね(笑)。
男って引きずりますからね(笑)。自分の中ですっきりとしているつもりでも、時々思い出してしまうし。人間って成長するに従って、毎日をしっかりと生きていくために処理する能力って強くなっていくじゃないですか。でも、やっぱり自分に嘘は付けないから、そこを素直に書いたという感じです。
この「冬花火」ですが、どんな仕上がりになりましたか?
今一番、風花が人に聴かせたい曲ですね。それをしっかり風景描写したアレンジで、一本の映画を観るような感じで聴いてもらえるものになったかなって。シンセサイザーの音も入っているんですけど、“ああ、人間がやっているな”って思える…当たり前なんですけどね(笑)。でも、そういうものになったと思います。風花の匂いも温度も感じられるというか。
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