【井上実優】
ありのままの自分をさらけ出したかっ
た
今年4月にデビューしたシンガーソングライター井上実優。ソウルフルで圧倒的な歌唱力が魅力の彼女だが、新曲「Shake up」ではエレクトロな音も入ったキラキラしたメロディーに乗って軽やかに歌い、新たな魅力を見せている。
2ndEPの表題曲の「Shake up」は明るくポップなナンバーですね。
“自分をさらけ出す”をテーマにこの楽曲を制作しました。デビュー作「Boogie Back」ではキリッとして少し背伸びをしているような自分がいたので、今回は色で言うと黒から白の自分を見せたくて。夏という季節もあり、“ありのままを見せる”というテーマがぴったりだと思いました。
井上さんの素が出ている曲?
「Shake up」という曲に関しては等身大で歌詞を書いているので、かなりリンクする部分がありますね。歌の世界観で言うと私はダークでソウルフルな感じが得意ですが、本当の姿という意味では、こちらのほうが私らしいと思います。ティーンの年代はやりたいことがたくさんある時期ですが、みんながみんなやりたいことをできる場面はなかなかないと思うので、この楽曲を2nd EPとしてリリースできて嬉しいです。楽曲のストーリーを通して、実際に聴いている人を励ますことができたらいいなと思います。
そんな歌詞の部分ではどんなところにこだわりましたか?
どちらかと言うとすぐに弱音を吐いてしまうので、励まされる側の人間かもしれないです。でも、この楽曲の主人公は強くあるべき人なので、私が励まされる側だとすると、どのように言ってほしいかをシチュエーションで考えて、その中でもあえてストレートな歌詞を選んで書きました。普段は出てこないけれど、実際に私が言ってほしいと思ったメッセージや伝え方なので、聴いてくれる人にもその思いが感じてもらえたら嬉しいですね。
その歌詞を歌うヴォーカルはさわやかですよね。
歌詞のテーマが“自分をさらけ出す”になったのもありますが、歌う本人がただカッコ付けているだけではもの足りないなと思います。例えば歌のフェイクが得意だからといってフェイクばかりを入れたりすることではない気がしていて。レコーディングの歌入れの時は心から沸き出たものを声に出すイメージでこだわりましたね。
でも、後半の部分にはソウルフルなところもあって。
はい。私の得意な部分も入れてます(笑)。いろいろな楽曲に挑戦していきたいと思っていますが、毎回変わりすぎていると“この人の芯はどこにあるんだろう?”と思われてしまうので。“やっぱりこの人だな!”と感動であったり安心させるものがないと、私である意味がないと思います。どんな楽曲にも挑戦していきたいですが、私の声の特徴が生きるものを楽曲や歌のパフォーマンスに入れていきたいと思っています。
ちなみにMVではダンスも披露していますが。
ダンスにはずっと興味がありまして。実は歌よりも先にダンスを好きになりました。地元の福岡にいた時は本格的に習ったことがなかったのですが、大好きなクリスティーナ・アギレラも踊って自分を表現しているし、あんな感じで踊れたらカッコ良いなと思いまして。ダンスは去年の12月から本格的に始めたばかりなので、まだまだ未熟ではありますが、今回は楽曲にも合うなと思いはじめてMVで挑戦しました。
2曲目の「Robin」は井上さんの得意分野ですよね。
はい。これは洋楽をとても意識したといいますか、英詞を和訳したような歌詞を付けたいなと想い、英語やカタカナは必須かなと思いまして、とことん歌詞はカッコ付けようと思いました。自分の中でかなりしっくりくる言葉がはまったので、歌っていてもとても気持ちがいいし、歌詞も絶対忘れないですね(笑)。
歌詞はどのように?
この楽曲の主人公は私の生きてきた19年間の経験値だけでは、知り得ないものを持っている大人ですね。主人公が使いそうな物や行きそうな場所は、私には未経験な部分もあるので、妖艶な女性が出る洋画をたくさん観てインスピレーションを高めて書いていきました。それこそクリスティーナ・アギレラのMVを何回も観たりしました。この楽曲を歌っている時はアギレラのパフォーマンスを強くイメージしてますね。
なるほど。そして、もう1曲の「Sweet Love」はミディアムバラードで。
この歌詞を書いたのは上京する1年前くらいで、当初は別れの曲という漠然としたテーマだったのですが、私も上京することが決まっていたので家族や友達と離れて暮らす想いから、このテーマはいいなと思いまして。よくある失恋ソングのような恋人との別れを限定するのではなくて、いろいろな別れがあるので、全部に当てはめられるように歌詞を書きました。高校を卒業して大学に行く人や就職する人、他県に行く人、転校する人、家族や友達、そして大切な人と離ればなれになる…というように、いろいろなシチュエーションでこの曲が旅立ちの曲として聴いてもらえたらいいなと思っています。
井上さんの想いが詞に滲み出てますね。
“旅立つ日の私はどういう道を通って、新しい家まで行くのだろう?”と想像しながら書いた部分もあります。特にBメロは“私はどういうところで泣くのだろう?”とか。歌以外でもその日のリアルなシチュエーションを思い描いたりするんです。“どういう時に友達のことを思い出すかな?”など妄想しながら一語一句歌詞を綴っていくので、歌詞を書く時もシミュレーションはとても役立ちますし、楽しいですね。まったく関係ないですが、その妄想のおかけで忘れ物もしにくくなりました(笑)。
でも、作詞をする上で、それはすごく重要ですよね。
そうですね。歌詞の距離感…例えば、急に近くなったり急に遠くなったりするところに、聴いている人はドキドキすると思うんです。描写がずっと続いていたり、身近なものだけでもつまらないと思うので、急に抽象的にしたり、グッと近づけたりと心がけています。
今回のEPですが、まさに井上さんのフレッシュさが生きた一枚になりましたね。
この楽曲たちの主人公はみんなそれぞれのいろいろな想いをさらけ出しています。だから、聴いてくれる人も自分のさらけ出したい想いを大切にしてくれたらいいなと思っています。
取材:桂泉晴名