シベリア少女鉄道、1年2カ月ぶりの完
全新作『いつかそのアレをキメるタイ
ム』を上演!作・演出の土屋亮一に直
撃インタビュー

壮大な前フリからの大どんでん返しで、毎回観客の意表を突いた舞台を作り出すシベリア少女鉄道。緻密な構成で観客を大いに唸らせ、くだらなさ満載の面白さに客席は爆笑の坩堝。小劇場界でも唯一無二の存在であるシベリア少女鉄道が、この2月に1年2カ月ぶりとなる新作『いつかそのアレをキメるタイム』を上演する。キーワードは「熱い芝居」。なにしろネタバレ厳禁のシベ少なので、次回作の内容の詳細を伺うことは叶わなかったが、作・演出の土屋亮一にシベ少の創作秘話についてたっぷり語ってもらった。どうやら次回作は今までにはなかったものになりそうで……。
シベリア少女鉄道は「くだらない」から超絶面白い!
──シベリア少女鉄道は毎回、前フリがあってどんでん返しがあって……という緻密な構成ですが、どうやってネタを考えておられるのですか?
ネタを決めるときは、比較的初期から出てくれている吉田(友則)と藤原(幹雄)の3人で集まって、最近面白かったものの話をダラダラとします。ゲームとかテレビとか映画とか、各自いろんなネタを出し合いますね。皆、同い年で面白いなと思うもののセンスが近いんです。でもあまり自分たちの趣味に偏りすぎないように、若い役者さんの意見も聞いたりしています。ネタ出しして大まかな方向性が決まったら、稽古に入る前に来れる役者さんに来てもらってエチュードをやってもらうこともあります。実際に役者さんに動いてもらうことでどんな感じになるのかを見て、そこから拾って台本に入れることもありますね。
──内容が決まってから台本にするのが大変そうですよね。細かいところまで伏線をすべて回収したりとか。
そこは努力ですね(笑)。台本を書き出す前の準備に時間をかけています。細かく決めないとなかなか書き出せないですね。でも、その前段階が一番楽しいんです。自分の性分として、細かい伏線だったり緻密な構成というのが好きなんですよ。構想を詰めている段階のほうが、あれもやろうこれもやろう、みたいな感じで楽しい。でも、実際にセリフとして落とし込んでいくと、「ああ、これそんなに面白い感じにはならないな」ということも出てきたりして。そのときは大焦りしますが、努力でなんとかします(笑)。
──シベ少のお芝居は、構成がピタリとハマって面白いという場合と、どんどんズレていくのが面白いという場合がありますね。
最近は結構後者のパターンが多いです。細かく構成を決めていても、いざ書き始めると勢いでズレていくこともあって。作品によっては勢いに任せてズレていったほうが面白い場合もあるんですよね。でも、緻密に構成されているものもズレていくものも、最終的にくだらない感じになるのが一番いいなと思っています。
──観ている側にとっては「くだらなすぎて最高に面白い!」という感じですけど、作る側は真剣勝負ですよね。くだらないものを真剣に作るモチベーションは一体どこから来るのですか?
結局好きなんでしょうね。僕は結構自分の公演を何度も観ちゃう人で。昔の公演のビデオも繰り返し観ますし、もちろん本番も全ステージ観ます。自分が観たいものを自分で作っているという感じですね。
シベ少の次回作は「なにも語れないけど……とにかく熱い芝居!」
──次回作『いつかそのアレをキメるタイム』は、「とにかく熱い芝居」とのことですが。
はい。熱い芝居になると思います、たぶん。ネタはもう決まっていて、今は構成を詰めつつ台本を用意しているところです。昔からずっとやってみたかったけどできなかったネタにチャレンジしようと。今までにない感じにはなると思います。テーマとか言えたらいいんですけど、言うとネタバレになっちゃうので……すみません(笑)。
──なにか特定のネタ元があるとか?
ないですね。なにかを知らないと楽しめないという感じではないと思います。最近は特定のネタ元があるというパターンはなるべく避けるようにしています。みんなが共通で知っているものって昔ほどはなくなってきたので。
──役者さんとの顔合わせはされたのですか?
はい。台本はまだですけど、エチュードをやっていただきました。でも、役者さんにもまだ断片的にしかネタを伝えていないので、あまりうまくいきませんでしたね(笑)。「とにかく熱く!」みたいな指示を出したんですけど、役者さんも「そう言われても……」とちょっと困ったような反応で(笑)。
──(笑)。役者さんは初めての方もいらっしゃいますね。
そうですね。美鈴(あおい)さんがオーディションで決まった方です。川合(檸檬)君は2回目。石松(太一)君も2回目で10年ぶりくらいに出演します。男芝居になりそうだったので、当初より男性陣を追加しました。なにしろ熱い芝居なので(笑)。それ以外の方は皆、何度も出てくださっている役者さんたちなので、ツーカーでいけるというか、あまり心配はしていないですね。
シベリア少女鉄道、何気に劇団20周年!
──劇団結成が1999年ということは、今年で20周年ですよね。特に銘打ったりはされていないようですが?
そうですね。銘打つとなにか良いことあるんですかね?(笑)。ちょっと照れ臭いです(笑)。去年、2001年に初演した『今、僕たちに出来る事。あと、出来ない事。』という作品を再演したんです。当時の台本を読み返したらちょっとエッジが立ちすぎていて(笑)。よくこんな面倒くさいことやってたな、と。逆に、今は変に丸くなってしまった部分があるのかな? と思ったりもして。
──いやいや、そんなことないですよ!(笑)
そうですか?(笑)。相当わかりづらい本だったので、再演のときにわかりやすくなるよう改稿したんです。その結果いいところに落ち着いた感じがして。ここ数年は、わかりやすさとわかりづらさの塩梅を探っている感じですね。長くやっている分、そのバランスをうまくとって臨みたいなと思っています。
──外部のお仕事もたくさんされていますが、劇団を20年続けられて、変わらない作風を維持できているのはすごいなと思います。
ありがとうございます。変わらなきゃと思う部分と、変わっちゃダメだなと思う部分がありますね。やっぱり変に丸くなっちゃダメだなと。外のお仕事をやらせていただくようになってから、劇団ではよりいっそう尖りたくなりました。
──土屋さんはテレビのお仕事もされていますが、劇団とは仕事の仕方が全然違いますか?
そうですね。テレビだと単純に関わる人の数が多いので、すべての人に言語化して伝えられるようなものじゃないと回っていかないんですよ。劇団の場合は、役者さんやスタッフさんも長い方が多いので、ぼんやりしたことを言っても汲んでもらえるというか(笑)。
シベリア少女鉄道は90分一本勝負のコントだ!
──「シベリア少女鉄道ってどんな芝居?」と聞かれたときに答えるのが難しいなと。お笑いとかコメディともちょっと違う気がして。
僕は「90分もののコント」だと思っています。広い意味ではコメディになるんでしょうけど。僕らが始めたころは、猫ニャーとか拙者ムニエルとか、笑いがメインの劇団が多かったのですが、最近は少ない気がしますね。
──土屋さんが最近よくご覧になっている劇団は?
ナカゴーは好きでよく観ています。1回出演もしましたよ、大変でしたけど(笑)。あとはブルー&スカイさんのジョンソン&ジャクソンも面白いです。
──やはり笑える感じのものがお好きなのですか?
なにを観ても結局覚えているのは笑えたところだったりします。ポツドールとかもすごく好きでした。いい笑わせ方をしてくれると思って。
──お芝居以外で影響を受けているものは?
映画やお笑いも見ますが、一番多いのはマンガです。マンガから得るものはすごく多いですね。ネタのストックのために意識して読んでいるというよりは、自分が好きで読んでいるという感じです。そうやって無意識に読んでいるものが、なんらかの形で自分の作品づくりに影響を与えていることもあるかもしれないですね。
──なるほど。それでは最後に、改めて次回作の意気込みを聞かせてください。
やろうとしていることがちゃんとハマればものすごくくだらなくて面白くなると思います。今はまだ机上の空論に近いですけど、きちんと具現化してみせます。自分が面白がったものの瞬間を、そのままの純度で伝えたいです。楽しみにしていてください。
取材・文=渡辺敏恵
撮影=岩田えり

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