映画『BACK STREET GIRLS -ゴクドル
ズ-』岡本夏美×松田るか×坂ノ上茜
インタビュー 下品で可愛い“極上ア
イドル”の魅力に迫る

2月8日(金)から、映画『BACK STREET GIRLS -ゴクドルズ-』が公開される。原作となったジャスミン・ギュ氏の漫画『Back Street Girls』は、組長の理不尽な命令により性転換と全身整形手術を受けさせられた3人のヤクザが、アイドルグループ"ゴクドルズ"としてデビューさせられる物語。極道とアイドル、男性と女性という、相反する属性の間で揺れながら、生きる姿を描いたコメディだ。初の実写化となる『BACK STREET GIRLS -ゴクドルズ-』では、性転換・アイドルデビューさせられる犬金組のヤクザ・山本健太郎(ケン)を白洲迅が、立花リョウを花沢将人が、杉原和彦(カズ)を柾木玲弥が演じている。また、性転換後のケン=アイリを岡本夏美が、リョウ=マリを松田るかが、カズ=チカを坂ノ上茜がそれぞれ演じている。
原作同様のシュールなギャグと荒唐無稽な世界観を保ちつつ、実写映画で描かれるのは、3人の若者たちが急激な変化を境に、自身の過去・現在と向き合い、成長していく青春物語だ。原作とは異なるオリジナルのストーリーと、実写映画ならではの脚本・演出に、岡本夏美、松田るか、坂ノ上茜らはどう向き合ったのか? 役作りから、ライブ・アルバムリリースまで行った“極上アイドル”ゴクドルズとしてのパフォーマンスまで、インタビューで語ってもらった。

「この作品こそ実写化に賛成したい」映画ならではの表現
左から、坂ノ上茜、岡本夏美、松田るか 撮影=岩間辰徳
――原作は読まれたのでしょうか?
松田:もちろん読みました!「バカやってるなあ」っていう感じの漫画で(笑)。難しいことを考えずに、ただただ笑える。
坂ノ上:救われるよね。ちょっと嫌なことがあったときに読んだら、「なあんだ」って思える。
岡本:漫画ならではの良さがあるよね。
――実写化すると聞いたときには、どう思われたのでしょう?
坂ノ上:実写化するという話は企画書で初めて知って、オーディションを受けたんです。「わけわからない漫画もあるもんだな!」と思いながらもすごく面白くて、これはやりたいな、と。
岡本夏美 撮影=岩間辰徳
松田:私は、この作品こそ実写化に賛成したい作品だと思いました。だいたいの実写化作品は、「やるのか!」と身構えちゃうんですけど。『ゴクドルズ』は、三人とも悩みを抱えているじゃないですか。元男性というのもそうですけど、それぞれの家庭環境も含めて、表情の細かなニュアンスまで伝えられるので、実写化向きだと思いました。
坂ノ上:けど、笑っちゃうんだよね(笑)。客観的に見ちゃうと、滑稽だから。
松田:そう。だから、より葛藤と面白い部分を表現できるんじゃないかな、と思って。実写化するとどんな仕上がりになるのか、楽しみでした。すごく人間臭い、任侠っぽさのある作品になるのかな、と。
――岡本さんは、かなり実写化作品に出演されていらっしゃいますよね。そんな中でも『ゴクドルズ』は特殊な作品ですけど。
岡本:私が出演してきた実写化作品は、『賭ケグルイ』だったり、『咲-Saki-』だったり、わりとキャラクターが人気のものが多かったんです。だから、そこではキャラクターにできるだけ近づけつつ、自分の演じる意味を探りながら、そこでどう面白みを出せるか、という役作りをしました。例えば、原作漫画の表情やポーズを真似するとか。『ゴクドルズ』の場合は、キャラクターに寄せるよりも、“アイリがマリやチカに寄せる想い”みたいな、心の中身を、人間が表現するとどうなるか、と考えたので。漫画の実写化の役作りというよりは、普通のヒューマンドラマで演じるような感覚。勢いや、その場で起きる事件や物事に対して向き合っていくことが多かったですね。
――なるほど。
岡本:もちろん、原作のことは知っていましたし、読んで参考にしている部分もあるんですけど、原作とは別の世界で『ゴクドルズ』の面白さが成立すればいいな、と思っていました。
松田:おかげで、三人それぞれのキャラクターを、漫画やアニメよりもハッキリと出せたんじゃないかな、と自負しています。
――確かに、原作と映画ではかなり印象が違いました。
坂ノ上:より心に寄り添えた気がするよね。
松田:漫画とアニメは、三人とも顔が似てて、その中での“漫画的な面白さ”があるじゃん?
坂ノ上:目が消えて線が入ったりね。
松田:そう。でも、実際の人間が動画でそれを演じても、似せることは出来ないし。映画では、原作とは違う表現でそれぞれの個性が出せたよね。
松田るか 撮影=岩間辰徳
――脚本を読んだときには、どんな印象を持たれましたか?
岡本:「アイリ、マリ、チカの顔がケン、リョウ、カズに変わる」っていうト書きだけで、「どうなるの、これ?」とは思いました。
坂ノ上:現場で演じているだけの感覚だと、「どうなるんだろう?」とは思ったよね。楽しい半分、不安半分、みたいな。
岡本:あとから編集して、初めてわかる場面が多い作品なんですよね。カットを繋ぎ合わせたときのテンポ感とか、正直、出来上がってみないと想像できない部分が結構ありました。(完成したものを観たら)監督が現場で「こうなるんだよ」とおっしゃっていたことも実現されていたし、それぞれがキャラクターとしてやりたかったことも映像に出ていたから、映画の脚本を超える作品になったんじゃないかな、と思います。
――三人とも、感情の起伏がすごく激しいのが、観ていて楽しかったです。
松田:起伏、めちゃくちゃですよ!
坂ノ上:90分の間に、色んなことが起こるよね。特に映画は、オリジナルの物語がメインになっているので、新たなBSGが見られるんじゃないかな、と思います。
――三人それぞれの成長の物語にすごく感情を揺さぶられて、よかったです。どんな役作りをされたのでしょう?
岡本:ケンと言えばいいのか、アイリと言えばいいのか、難しいんですけど(笑)。アイリの場合は、ファンの子どもと、自分の過去についてのドラマが展開していきます。『ゴクドルズ』にはハチャメチャなところも沢山ありますけど、私が持っているテーマは、家族や、仲間、親分、周りの人々への愛みたいなものだと思っています。それはケンに対しても、アイリに対しても持っているもので。だからこそ「どうしたらいいんだ?」という葛藤とか、怒りが芽生えれば成立していくんじゃないか、と思いました。
坂ノ上茜 撮影=岩間辰徳
――具体的にはどういうことを?
岡本:例えば、キーになる男性時代=ケン(白洲迅)のシーンは、撮影を見させていただくようにしていました。地方で撮影があったときに、ホテル泊まりだったんですけど、香盤表(撮影の予定表)を見て、「今、白洲さんはどう演じてるんだろう?」と思いながら、橋の上でケンが彼女と別れる別れない、みたいな話をするシーンをこっそり見にいって。こっそり、スタッフさんたちにバレないようにしていたんですけど、結局バレて(笑)。監督の隣に座って見ていたことはあります。
――いい話だ。
岡本:(笑) ケンとして重要なシーンは見させていただいたりしながら、インスピレーションをいただいていました。
――アイリの物語は、三人の中で一番シリアスですよね。松田さんが演じたマリは、恋もして、さらに葛藤を抱えてしまうキャラクターです。
松田:同性愛……ではないんですが、もともと男性だったのが、急に「性転換しろ!」と言われて、女性に変えられてしまう。そこで女性に恋をしてしまう状況って、ものすごく鬱なことですよね。それに、立ちションもできなくて、トイレも座ってしなきゃいけなくなるし、女風呂にも入らなきゃいけない。
岡本:女性に触れていいのか、いけないのかもわからない、ストレスの強い状態が沸騰するように続いて、プチンと切れるような感覚って、特にはマリにはあったんじゃないかな?
松田:あったと思う。
岡本:男としてのプライドの高さ、みたいなものがあるしね。
――坂ノ上さんの演じられたチカは、姿が変わってもずっとちゃらんぽらんなキャラクターで、最も早く女性としても、アイドルとしても適応するのが興味深かったです。
坂ノ上:初ライブが終わって、愚痴りながら一升瓶でお酒を呑むんですけど、数十秒後には「キャッ」なんて言っちゃうんですよね。心のどこかで、「初ライブ、チヤホヤされて楽しい!」って思っているんです。三人の重たい空気に切り込む、いい意味で雰囲気を壊して、「バカだな、コイツ」って思われる愛嬌は、ずっと大事にしていたと思います。私も、(カズ役の)柾木くんも。
岡本:そうだね。チカの存在に救われたところがあるよね。
「面白いものを作ろう!」ゲスな台詞も、歌もダンスもノリノリで
左から、坂ノ上茜、岡本夏美、松田るか 撮影=岩間辰徳
――原作の下品なセリフをそのまま再現してしまうところには笑ってしまいました。ゲスさ加減に、抵抗はなかったですか?
松田:(抵抗は)なかったよね?
坂ノ上:むしろ、「言えば言うほど面白くなるんじゃないか?」っていうくらいの気持ちだったよね。あれ、カットされてるのかな?
松田:終盤に、ラジオで陰毛について語るシーンがあるんですけど。あのあと、ずーっと続きを撮っているんです。「あ、そういえば、水虫ってもうなりました?」とか適当なことを、カットがかかるまでずっと言い続けていました(笑)。
坂ノ上:もう、笑い堪えるのに必死だったよ!こっちは(笑)。
岡本:監督は、「面白いものを作ろう!」っていう気持ちで、ずっと(映画を)走らせてきてくださったので。そのレールに乗って、「私たちも面白いものを作りたい」と思いました。だから、ラストシーンは顔がすごいことになるんですけど(笑)。監督が、前々日ぐらいに「こういうシーンにしたい」と提案してきてくださって、私たちも「面白いじゃん!」「これで監督が笑ってくれたらいいよね」って、ノリノリでやる。
――アドリブも多かったんですか?
岡本:アドリブでやるというより、私たちから「こうやりたいです」と、段取りのときにアイデアを出して、それを使ってもらったことはありました。
坂ノ上:監督も、「いいじゃん!やろうぜ」と受け入れてくださる方だったので、色々やらせてもらえたんです。
岡本夏美 撮影=岩間辰徳
――アイドルとしてパフォーマンスするパートは、キレがありすぎてびっくりしました。かなり本気でトレーニングされたんだろうな、と。
松田:はい。本気でやらないと殺されちゃうんで、私たち。
岡本:私たちは、「作品の中でアイドルをやろう」っていうモチベーションじゃなくて、“アイドルをやらないと殺される男たち”役だったので、結果的に全力でアイドルをやることになりました。
――特に、ダンスのキレがヤバイですよね。お互いに、「この人のダンスはここが凄い」と思ったところはありますか?
岡本:いや、私はダンスは全然踊れないんですけど(笑)。(坂ノ上は)すごくクセのあるダンスをするんですよ。足の甲が柔らかい。
坂ノ上:足の甲が柔らかいって表現は、聞いたことないけどね(笑)。
松田:でも、足の甲がすごい柔らかいよね(笑)。
岡本:すごい変な動きするんです。角度が。
坂ノ上:それが、チカのぶりっこキャラに繋がればいいかな、と思っていたんですけど(笑)。マリ姉(松田)は、もともとダンスやっていたから、というのもあるんですが、普通に上手いというか、カッコよかったよね。
岡本:イメージにあったダンスだったよね。
松田るか 撮影=岩間辰徳
――それぞれのダンスに、コンセプトみたいなものがあったんですか?
坂ノ上:いえ、特にコンセプトはないです。ただ、クランクインするまでに、ダンス練習の期間を設けていただいて、振り入れだったり、歌の練習をしていたので、それが結果的に役作りのひとつになったんだと思います。
岡本:練習の中で、それぞれの個性が出てくるじゃないですか。そこで、普通のアイドル役だったら、三人の動きを統一するんでしょうけど。今回は、“男たちが頑張ってアイドルになっていく”過程を見せるんだから、クセがあってもいいんじゃないか、というところはありました。
坂ノ上:「どの段階のダンスか?」みたいなことは、考えて踊らなかった? 怒っているときだったり、まだ“男”のときとか。
松田:歌やダンスの上手さについては、ちょこちょこ話し合いはしたよね。「ここでは、まだガサツなほうがいいよね」とか。
坂ノ上:時系列的な上手さね。
――確かに、ダンスも役作りになっていますね。清竜人さんほか、様々なアーティストから楽曲提供を受けて、12曲入りのアルバムを丸ごと本当に製作しちゃうというのも、どうかしていると思いました。
岡本:それは、関係者の誰かに言ってあげてください(笑)。
松田:ほんとですよ! この作品のために、オリジナル曲を何曲追加したか。それも、有名な方々に作っていただいて。もう、こんなことは二度とないよ。
坂ノ上茜 撮影=岩間辰徳
――最後に、本作で特に見てもらいたいところがあれば、聞かせてください。
坂ノ上:アクションシーンは、性転換前後が垣間見えて面白いと思います。ケンはアイリだし、リョウはマリだし、カズはチカだし、というそれぞれのヤクザの瞬間を思い出させてくれるので。
岡本:私は、二人(マリとチカ)が喧嘩するところ。「ああ、兄弟ってこういうことなんだろうな」って、家族を感じた瞬間なんです。それを、一番上の兄として見守る。そして、謝るときは謝る。あそこが、特に兄弟愛が出ていていいな、と思います。
松田:兄弟感はずっと出ているよね。いい兄弟だよ。
――実際には、岡本さんが一番年下なんですよね。
岡本:そうなんです。でも、現場では、甘えるところは甘えさせていただきました。あざーっす!
『BACK STREET GIRLS -ゴクドルズ-』は公開中。
インタビュー・文=藤本 洋輔 撮影=岩間辰徳

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